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第1話「食欲の魔女をストロングなチューハイでマーヴェラスさせた話」1/3

「ひぇひぇ……宮國ぃ……キミィ……やる気はあるのか?」鷲鼻で、頬に大きなできものがある男が私に話しかけてきた。


「やる気……ありますよ? 多分」私はパソコンに向かったまま気だるげな声で返事をした。


 ――ちっ……いつもうっせーんだよ。何だよひぇひぇって普通にしゃべれよ……粘着質でキモいんだよ……


「ひぇひぇ!? 多分じゃ困るんだよぉ!」男は大きな声を上げた。


 私は無視してパソコンで作業を続けた。


 ――ああ……紹介が遅れたね。私は、宮國通子(みやくにとおるこ)。「皆の力で世界の映像業界に光を掲げよう!」というスローガンで動画配信事業や、制作したコンテンツ等を販売する事業を展開するアットホームなブラック企業エクリプスに勤めるしがないOLだ。年は24歳。大学を卒業してすぐに就職して今年で三年目になる。


「ひぇひぇ! 宮國ィ! 聞いているのかぁッ!?」鷲鼻の男が顔を近づけてきた。


 ――さっきからいやらしい顔を向けてくるこいつは、私の所属するダンジョン配信部門の責任者ロクディモント・能井だ。日系二世らしい。知らんけど。


 社長の弟らしく、ろくでもないセクハラ&パワハラ野郎なのにクビにならない。


「すいません。顔近いです。息臭いです」私はモニターを見ながら答えた。


 ――ぶっちゃけ才能はないと思ってる。動画を作っても視聴者はつかない。ダンジョンに入ってもモンスターはスライムくらいしか倒せない。何をやってもいいかわからない。正直疲れてきた。


「ひぇひぇ!? 何て言い草だ! 部門内でキミだけが収益が赤字! 下から二番目の柳井ですらぎりぎり黒字だっていうのに! キミが稼がないとボクが兄者に怒られちゃうんだからな!?」ロクディモントはバインダーを机に打ち付けた。


「すいませーん。反省してまーす。がんばりまーす」私は小さく頭を下げた。首を曲げただけだった。


 ――知らんがな。兄者に怒られるってなんだよ。お前が誰に怒られようとそんなこと私には関係ないだろ……ああ……帰ったら何食べよう……


「ひぇひぇ……宮國ィ……キミは来週末までに赤字から脱却しなければクビだからな!? あとは今までの赤字分、損害賠償として稼ぐまでセクシー部門で無休無給でこき使ってやるからなぁ……」ロクディモントが粘着質な目を向けてきた。


「は……? そんな急に首にできるわけなんかないですよね!?」私は机に手を突いて立ち上がった。


 ――早々首になるもんかよ。労基署の力なめんなよ。


「ひぇひぇ!! そんなものどうとでもなるよぉ……ダンジョンができてモンスターが世の中にあふれるようになってから労基署は機能していないからね……せいぜい頑張りたまえ」ロクディモントが、その場を離れた。


「ちょ……ちょっと待ってください!」私はロクディモントの方に向かって手を伸ばしたが届かなかった。


 ――え……本気なの!? セクシー部門ってあれだよね……体使ってご奉仕的な……嘘だ!? 今まで何とか頑張ってきたけど、どうしよう……


「ツッコ……今の聞こえたけど……」スーツ姿の男が近寄ってきた。


「げ……柳井……別になんでもないわよ」私は椅子に座りモニターに向かった。


 こいつは柳井八郎(やないやつお)。大学からの腐れ縁で何かと絡んでくる面倒な奴だ。正直嫌いだ。


 柳井は神妙な面持ちで近づいてきたと思ったら、目の前に来たとたん満面の笑みを浮かべた。


「いやー、いつもありがとうな! ツッコがいなけりゃ俺が目を付けられるところだけどさ! ツッコのおかげでマジ助かってる! ツッコ様様だね」柳井は手をすり合わせた。


「何言ってんだか……嬉しくないよそんなの」私は頬杖をついてモニター画面をにらんだ。


 ――前回のスライム討伐配信『ぶりっこツッコがスライム倒してみた』の累計視聴数は50、最大同時接続は2、この2も柳井とロクディモントだ。しかも文句や、冷やかしでコメントを残して来るから全部削除してやった。ああ……マジでどうすればいいんだろ……赤字分は今まで経理のヨウシャールさんが給与天引き処理してたはずなんだけどな……いくらなんだろ……50万? 10万くらい?


「まあせいぜいがんばれよ! 俺みたいに必殺技覚えるといいんじゃないか!?」柳井が手を振りながらどこかに行った。


「……」私は返事をしなかった。


 ――必殺技ねえ……確かに柳井がいきなり動画で高火力の技を使うようになってから派手な演出で人気が出た。モンスターを倒して魔石も売れて黒字になったけど。でもそんなのどうすれば使えるかもわからないし……


 私は背伸びをした。上を向いた。時計が目に入った。22時だった。


「あ! やばい! 終電なくなっちゃう!」


 私はパソコンをカバンに突っ込んで、オフィスの中を走った

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