2個目の世界①
いつからだろう。友人がいなくなったのは。
いつからだろう。人間でなくなったのは。
いつからだろう。
―――自分が自分じゃなくなったのは。
この世界には元々、魔法と呼ばれるものはなかった。その代わりに、科学が発達し、自ら考える機械も作り出したと言う。だが、今から三百年ほど前、突然魔法が発現し、その力を持つものは「魔術師」と呼ばれた。それは世界総人口の約3割だったが、戦争の火種になるには十分だった。現代では、「魔術戦争」と呼ばれている。7年続いた戦争は、各国の魔術師たちが協定を結び、約二百カ国もあった国々は今や、五十四カ国までに減った。そして世界中に魔術師を育成する学校が出来て、世界のほぼ全人類が魔法を使えるようになり、今に至る。
国立王廷魔術学園。それは、日本の魔術学園の最高峰にして、魔術に関する法や裁判が行われる場所。そこに、僕―――上谷白城は入学する。
大抵の学校や他の魔術学校は、筆記と実技によって入学の基準が決められる。だがこの学校は完全実力主義。強き者が上に行き、弱き者は落ちぶれる。そんな学校だ。そのため、クラスもABCで分かれており、Aの方が高く、Cの方が低い、という感じだ。
周りには、僕と同じ新入生が百人程いる。全員、自分のクラスの発表を待っているのだ。
そうこうしているうちに、眼の前に魔法陣が浮き上がり、たった一文字の英単語が映し出される。
「A」。ただそれだけの、無機質な魔法陣。だが、それの意味するものは大きい。
喜びを噛み締めていると、足元に魔法陣が浮き上がり、視界が真っ白に染まる。一瞬の浮遊感の後、周りの景色は一変し、講堂のような場所にいた。転移魔法だ。
「諸君、Aクラスへの入学おめでとう」
講堂に声が響き渡ると、教卓に一人の老人が魔法陣の上に現れた。恐らく、この老人が僕達をこの講堂に転移させたのだろう。
「私の名は朧憲。この学園の理事長にして、君たちの担任だ。以後、よろしく頼む」
そういうと、老人―――朧憲は、生徒たちに着席するよう促す。席は特段決められていないようで、全員、前の方によって座った。
「では、まずは自己紹介からいこう。今後の我が国の未来を担うかもしれない人材だ、今のうちに交友を深めておけ」
そういうと、前の人から順に自己紹介が始まった。この場にいるのは15人。僕は真ん中ぐらいの場所にいるから、ちょうど良いだろう。
そうして自己紹介も順調に進み、自分の番になった。
「名前は上谷白城。得意な魔法は光。スキルは持っていません。これからよろしく」
少なく感じるが、他の人もこのくらいだったので、ちょうど良いだろう。最初から目立つのはあんまり良くない。僕は静かに過ごしたいのだ。
そうして自己紹介も終わり、初日ということもあって、その日はすぐに寮に行くことになった。
Aのクラスの寮は二人で一部屋あてがわれ、全部屋1LDK、家電なども全部揃っているという至れり尽くせりの状態だ。
渡された鍵の部屋に着くと、すでにもう一人の住人がくつろいでいた。
「お、あんたが俺の相方かい?」
「そういうことになるな」
「そうか。改めて自己紹介をしよう。俺の名前は紅業双哉。家系魔法は火、適性は風だ」
「なら僕からも。上谷白城。突然変異的な感じで魔法が使えるようになったから、家系魔法とか、適正とかは分からない」
「へえ。面白い人生送ってんな、お前」
「そっちこそ、有名な家系の生まれだなんて、よほど親から期待されてそうだな」
「お、分かっちゃう?」
「まあ、話はこのくらいにしておいて、いろんな事、決めておこうぜ。後から面倒になっても嫌だし」
「おお、まっじめ〜」
そうして色々と話し合いをして、寝る場所や家事、彼女が出来た時など、ありとあらゆることへのルールが決まった。
「ま、どうせ明日も早いんだろうし、そろそろ寝ようぜ?俺はもうクタクタだぜ〜」
「そうだな、先に寝ててくれ。僕は少し、用事があるから。おやすみ」
「おう、気をつけろよ〜」
双哉に見送られた後、僕は理事長の執務室へ向かう。どうやらまだ仕事をしているらしく、明かりはついたままだ。
ノックをし、返事が来る。
「失礼します」
「約束通り、来てくれたな。上谷くん。すまないね、突然この学校に入学することになってしまって、ご両親も大慌てだったろう」
「そうですね、かな驚いていました」
「それにしても、一般人の間から魔術師が生まれ、しかもAクラスに足るほどの実力を持っている君という存在は、非常に稀有だ。これから大変なこともあるだろうが、努力してくれたまえ。ここは、そのためにあるのだからな」
「……一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「うむ、言ってみなさい」
「…僕は、貴方のことを信用してもよろしいでしょうか?」
「……安心しなさい、ここに君の敵は来ないし、いたとしても、私が手を打とう」
「助かります。では僕はこれで」
そうして何事もなかったかのように寮に戻り、その日はそのまま寝ることにした。
……学園生活は、いつまで持つかな。




