あんない
カンペ棒読みの案内はその後も続いた。定期的にこの屋敷のある空間に迷いこむ人がいること、数日たてばみんな元の世界に戻れること、特に危険は起きないこと、屋敷に泊まるにあたっての注意点など。
「これであんないは終わりです。……ふー、つかれた」
少女は満足そうにニコッと笑った。少し赤みのあるほっぺたが可愛らしい。
お疲れ様でした。
「すごいねー。あんなに字よめるんだ」
「海くんもすぐできるようになるよ」
将来有望だもの。
少女――かなえちゃんと名乗った子に連れられて館に入る前にざっと周囲を観察する。館は大きさとしては一応端から端まで視界には捉えられるけどやっぱり大きい。
普通の一軒家の数倍、8LDKとか10LDKとかあるのかな? 貧相な発想で我ながら恥ずかしくなってきた。というかリビングもキッチンも複数あるよね? こういうとこだと。
よく見ると柵や窓枠などのの塗装は所々はげ、外壁はうっすら灰色かがっていてやや古びた印象を受ける。少なくとも活気のある感じではない。
「あっ、忘れてた。うちにはお兄ちゃんがいます」
「そうなんだ」
実はそれはラビから情報提供があったので知っている。まだ幼い少女に案内を任せて表に出てこない理由も。
「うん。私とお兄ちゃんの2人」
「あれ? 2人?」
「うん、そうだよ」
おかしいな。もう一人いると聞いていたけど。




