7話 ケモノミミの少女がいる町
この町はちょっとだけ変わっています。
いえ、物凄く変わっています。
この町にいる人がほとんどケモノミミや尻尾を生やしているのです。
本物ではないですよね?
通りすがりの狐っぽい耳と尻尾が生えている女性に訪ねました。
「あの、すいません」
「私に?何か用かしら?」
「そのケモノミミと尻尾は本物なんですか?」
彼女はくすくすと笑ってました。
「本物じゃないわ、偽物よ」
「どうしてこの町の人は、ケモノミミと尻尾を付けているのですか?」
彼女が言うにはこの町の流行みたいです。
切っ掛けは、この町で可愛いフェンリルの女の子が住み着いてからが理由で、
余りにもその姿が可愛くて真似をすると。
次々と真似をする女性が現れて、この町の全体に広まったとか。
凄く変な話ですが、平和な話でもありますね。
その可愛いフェンリルの女の子に会ってみたいですね、
これほど人気が出るということは相当可愛いはずです。
今回は私の好奇心とわがままで、フェンリルの女の子をみんなで探す事にしました。
聞いた話によると、特徴は長くて綺麗な白髪に耳と尻尾も純白で、
身長は低めの女の子だと言ってました。
見付けるのは大変そうですが、一目でもいいから見たいです。
観光をしながら探すとスフィアが何かに気が付いて、
私の肩を軽く叩いて教えてくれました。
「リリー!あの子がフェンリルじゃないか?」
指をさした方向を見ると、果物が置いてある露店の前に、
先程の特徴と一致している女の子がいました。
何かを探している様子です。
「この林檎1つ頂戴!」
「今日も可愛いねエリルちゃん、1つおまけにするよ!」
「やったー!・・・あれ?お金がポケットに無い・・・」
「落としたのかい?お金が無かったらすまないけど、売ることが出来ないなー」
「そんなー!」
凄く焦っていたので、本当に落としてしまったのでしょう。
ここは仲良くなる為にも私が奢ってあげよう!
私は果物が置いてある露店に向かいました。
「すいません、林檎を1つ下さい」
「銅貨1枚ね、毎度あり」
そして私は、女の子に林檎をあげました。
「これ、あげるわ」
「えっ、いいの?ありがとう!」
女の子は私が天使の様に見えたのかは分かりませんが、
凄く目を輝かせて、キラキラとしていました。
女の子はその場で、もぐもぐと林檎を食べていました。
あー小動物みたいで可愛いですね・・・。
おっと、重要な事を聴かないといけません。
「あなたがこの町で有名な、フェンリルちゃん?」
食べるのを辞めて、
口の中に入れてある林檎を呑み込んでから、答えてくれました。
「うん!フェンリルだよ!」
「やっぱり、そうだったんだ!私、あなたに逢いたくて探していたのよ!」
「えっ、私に?」
不思議そうに首を傾げていました。
「うん!この町でケモノミミや尻尾が流行してるのは、フェンリルちゃんが可愛くて真似してると聴いたから、どんな女の子なのか直接会ってみたくてね!」
「そうなんだ!そうでしょう、可愛いでしょ!」
「うん、凄く可愛い!!」
今自分で可愛いと言っていましたが、確かに可愛いので許します!
「あのー、林檎のお礼と言ってはなんだけど・・・お願いがあるの、良いかな?」
「私に出来る事ならなんでもするよ!」
私は少しだけ照れながら、言いました。
「尻尾を触ってみたいんだけど、良いかしら?」
「それだけで良いの?」
「うん、ダメかな?」
「良いよ!」
女の子が了承を得てくれて、触れる事が出来ました。
あーもふもふして気持ちが良い・・・幸せです。
「はい!そろそろおしまいね!」
尻尾を動かして、後ろに隠しました。
「ありがとうね、フェンリルちゃん」
女の子は私に指をさして、お別れをしました。
「私の名前はフェンリルじゃないよ、エリル!憶えておいてね。林檎ありがとう、じゃあね!」
耳と尻尾を揺らしながら、走って行きました。
「あーエリルちゃん、可愛かったなー・・・」
「さてと、それじゃあ次は、宿屋を探すか!」
「そうね、そうしましょう」
私ももふもふがほしいなーと考えながら宿屋を探しました。
とりあえず見つかってよかったです。
それぞれの泊まる部屋に入ろうとしましたが、いいアイデアが思い浮かびました。
「ケモノミミと尻尾を作って、私達も付けましょう!」
突然閃いて声を出したので、スーアがびっくりしてました。
凄い嫌がってましたが無理やり連れてくことにしました。
いやー楽しみですね。
宿屋の店主にケモノミミが買える場所を教えて貰い、そちらに向かいました。
「スーアはどんなケモノミミがいい?」
「ケモノミミを頭に付けるのは少し恥ずかしいなー・・・しかも、尻尾も付けるなんて」
スーアの頬がほんのりと赤く染まっていた。
私は町に溶け込むためと言い聞かせると、納得してくれました。
付けるならなるべく可愛い感じじゃない方がいいという事で、狼の耳と尻尾を選んでつけてました。
いつもはかっこいいのにケモノミミと尻尾を付けた姿を見た私はギャップが面白く笑いました。
「さて、明日はこれを付けて町に出かけるよー!」
「外は恥ずかしくて嫌だからな!?」
明日はケモノミミを付けて、お出掛けをする予定を立てました。
○
翌日になりました。
ケモノミミと尻尾を付けて町へお出掛けしました。
私は猫耳をつけ、スーアは狼さんです。
「スーア!凄く似合っているよ!」
「嬉しくない・・・」
スーアは恥ずかしながらも、狼の耳と尻尾を付けてくれました。歩いていると、やっぱり今日もケモノミミを付けてる人が多いですね。町に溶け込んでる感じがして昨日よりも楽しいかも。
二人でゆっくり観光を楽しんでいると、昨日出逢った女の子に会いました。そう、フェンリルのエリルちゃんです。
エリルちゃんも気がつき、私達を見て驚いていました。
「あれ、耳と尻尾が生えている!昨日なかったのに!」
「昨日の夜買ったんだ!どうかな、似合うかしら?」
凄く似合ってると言ってくれました。
その後に、私ほどではないけどねーと足していました、本物には敵わないですからね。
「じゃあ、急いでるから、またね!」
エリルちゃんは耳と尻尾を揺らしながら走って行きました。本当に可愛いですね。
この町に暫く滞在したい気持ちもありますが、
明日には次の町を目指す為に再び旅をしますので、
ゆっくりするのは今日で最後になりますね。
次の町はどんな所かな?とても楽しみです。
あと、旅をする時にはケモノミミを外さないと行けないですね。
とても残念です。