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偶然 2

カイン 主人公30歳 異世界転移済み。

 頭に輪っか付 顔面包帯。

イナホ 天狐 日課:太陽礼拝 転移使い

ギース 銛 ランクブロンズ

シルビア ギースの婚約者 病み上がり

マスター 酒場のマスター

聖ニノ 高位治療術師



週間というのは素晴らしい。

このとてつもない大怪我にも関わらず、いつもと同じような日の出時刻に目が覚める。ただ単に寝すぎてただけかもしれないが。



麻酔みたいなこの顔面の感覚もまだ続いており、案外普通にしていられる。ただ流石に喉が乾いたので水だけもらいに1階へと向かう。


まだ朝も早いのでマスターだけだった。

「おぉ!転移のぉ。大丈夫か?もう立てるんかぁ。」


「マスター、おはようございます。

ええ。少し水をもらいたくて来ました。」


「そうか。いくらでももってけや。」


「ありがとうございます。ところでギースは知りませんか?」


「あぁ、あいつはぁ、シルビアちゃんのとこだぁ。昨日から泊り込みでそっちに行っとるよぉ。」


「そうでしたか。ありがとうございます。また自分も行ってみます。あと、今回この村にきた治癒師はどちらに?」


「そっちは村長の家だわなぁ。」


「そうでしたか。あとでお礼もしたいので挨拶に行ってきます。」


「うん?お礼?ええよ、ええよ。わしゃ当然のことをしたまでじゃ」


あれ?ボケちゃったのかな?

そんなこと聞いてないけど。

まぁ、聞こえなかったふりしてスルーしとこっと。


部屋に戻るとイナホが例のごとく太陽礼拝中だ。今日は天気がいいみたいだ。


「カイン。その水どうしたの?」


「へ?下でもらってきた。」


「そう。残さず飲むといいよ。その水から波動を感じるし、あの治癒師がなにかしたのかもね」


イナホは昨日からその治癒師の評価が高すぎる。よっぽどすごいのかなぁ?

早めに会いに行ってみよう。


俺は水をゆっくりと飲み干してから、身支度を整えてギースに会いにシルビアの家へ行くことにした。


−−−−−−−−−−


マスターに聞いた道を頭で反芻しながらなんとかシルビアの家に辿り着いた。


ただここまで来たものの、どう言って入ろうかものすごく迷って玄関の前でウロウロしている。


『カインどうしたの?早く入らないの?』


「いや、でも、俺あったこともない人の家にいきなり押しかけるわけだしさぁ。ちょっと抵抗が……」


ガチャッ


扉が開いた……



目の前にいるのは真っ白なローブを着た栗色の髪にボブカットの美少女。瞳は黒くこっちの世界に来てからなんだか久しぶりに見る日本人らしい顔立ち。

それとは真逆で日本人離れした出るとこは出るボディーラインがより一層引き込まれるような魅力を放っている。


そして、なぜかわからないが顔を見た瞬間、言葉が出なくなった。


「どうしました聖ニノ?誰か……。おぉ、カインか!よくここがわかったな。気がついてよかった。倒れてからの話は誰かに聞いたのか」


俺は言葉が出ずに、無言で首を立てに振る。


「なら良かった。まぁ入れ。紹介するわ」


俺は何も言えなかった。


この聖ニノって高位治療術師からは張りつめた空気が出ている。この娘の周りの空気がおかしいような気もする。


言葉は話せないものの身体はぎこちなく動くのでギースに案内されるまま室内に入り、用意されたイスに腰をおろし、病み上がりだからということで言葉が出なくともこの場が取りもっていた。


そして聖ニノが話しだした。


「私はもう聖教国ロウへ戻らないといけません。お二人とも意識が戻ってくれて良かった。では出立前に、古来より伝わる日本ひのもと)の秘術を使います。


"ヒフミヨイ マワリテメクル ムナヤコト 

 アウノスヘシレ カタチサキ

 ソラニモロケセ ユヱヌオヲ 

 ハエツヰネホン カタカムナ

 マカタマノ アマノミナカヌシ 

 タカミムスヒ カムミムスヒ ミスマルノタマ" 」


聖ニノが呪文のようなものを言いおえると何かが自分の全身にスッと吸着してそのまま身体に溶け込んでいくような感覚を受けた。

包帯の下の右目がほんのり暖かい。


「これは、"カタカムナ"と言いこの言葉を発することで言霊のチカラを実体化させます。

今、貴方達の身体は不十分な状態だけれども、身体を作る小さな塊が少しずつもとの身体へと紡いでくれるでしょう。

今回の私のお役目はここまでです。

また何かあれば聖ニノをお訪ねください。」


そう言って彼女は深々とお辞儀をして、

家から出ていった。

ギースとシルビアの両親が慌てて彼女の後を追い、俺とシルビアさんとイナホは部屋に取り残された。


俺は終始何も言えなかった。

いや、金縛りのような状態になっている。

レム睡眠時に脳だけ起きてしまったようだ。


『カイン?大丈夫?あの娘、やっぱりすごいよね。ボクら高次の存在に近いような独特の空気を纏ってる。……普通じゃないよ』


俺はリアクションもままならず、心の中で肯定した。


ただ、普通じゃないあの娘は俺にとってはとてつもなく大切な存在だと認識した。


俺は、あの娘を知っている……。


頭の中で亡くなっていたパズルのピースが1つだけ見つかった気がした。


とても大切なパズルの中心部分。


あの娘は聖ニノなんかじゃない。


あの娘は……ニイナだ。


10年近くの成長を見れていないことになるが、どことなくアスナにも顔が似ていた。

間違いない。ニイナだ。


こんなところで出会うなんて夢にも思わなかった。残念ながら俺の顔はアウルベアに噛まれて見分けがつかない状態だったのだろう。


なんとか……追いかけなくては。


想いはあるものの、身体が全く言うことを聞かない。

何が起こっているのか全くわからないが、

今はそんなことよりもう一目でも娘を見たい。


俺のことを俺だと伝えたい!


10年以上も助けてやれず悪かったと謝りたい!


今更、親に会ったところで何も変わらないかもしれないが、俺は、ニイナと別れてまだ10日ほどしか時間が経過していない。

子離れできてないダメな親で申し訳ないが、それでも、俺はニイナと話して何かできる事を聞いてあげたい。



動かない身体の感覚を必死に取り戻し、まずは首が動いて目が開くようにはなった。

シルビアさんも俺と同じ状況なのか、ぐったりとしている。


俺は、今が一生で1番大切な時かもしれない。意地でも……何がなんでも起きないといけない。


首がある程度動くようになってくると次第に他の部位も動くようになってきた。


よし、立てる。

一歩一歩扉へと近づいていく。

どうも外が騒がしい。


扉を開けるとちょうど聖ニノが帰るということで村を上げて見送りをしている。


当然だ。

6年間毎月来ていた治癒師の誰も治せなかったシルビアを治せたことと、顔面半壊していた緊急患者だった俺を救ったこと。

村中の人がその奇跡の所業を成し遂げた人物を一目見ようと人だかりができている。


聖ニノを載せた馬車がその真ん中を行くが俺はなんとか馬車から手を降る聖ニノを見つめた。


このままでは、わからないだろうと想い、顔の包帯を外し、こっちを見てくれ!と万感の思いで視線を送った。


その時彼女は俺と目があった。

そして口が自然とあいて、目が見開いたように感じた!


やはり、あの娘はニイナだ!

俺の想いが通じた!


ただ、感慨に浸る時間もなく馬車はあっけなく過ぎ去ってしまった。


俺は心がいっぱいになった。

どうなったかわからない娘の安否がわかったこと。


娘が肉体労働者としてボロボロになっているわけではなく、神仏の何かに恩恵をうけて選ばれた職責についていること。


俺が俺であるメッセージが届いたことで得たあのリアクション。




しばらく立ちすくんだがイナホが急に声をかけてきた。


『カイン!その顔、包帯取るとまだ化け物みたいだからあんまり外で包帯外さないほうがいいよ』


え?


あ、え?


そ、そうか、俺はまだ顔が元に戻ってないんだ。じゃあ今、ニイナに俺の存在が、伝わったかは……。


やめておこう。悲しくなる。

いいんだっ!とにかく彼女がニイナなら安全は確認できたっ!


まずは身体を整えてからまた会いに行こう。

さっきも何かあったら聖ニノを訪ねてって言ってたし。


身体の動きはまだもとのようには戻ってないが俺は一旦シルビアさんの家へ向かうことにした。

顔を気にして一応フードだけはかぶって……。


−−−−−−−−−−


シルビアさんの家の前に帰ってきた時、ちょうどギース達ともタイミングがあったので、すんなりと家に入れてもらった。


そこで俺は改めて自己紹介することにした。シルビアさんの両親がどんな風に受け取るか不安だったがギースがしっかりと伝えてくれていたので変な偏見とかは生まれなかった。


シルビアさんは流石に6年も寝たきりだったことでそのショックも大きく、今はそっとしておこうと両親だけ残してギースと俺とイナホは外に出た。


一旦ギルドに戻ることにしたのだ。


「ギースさん、シルビアさんがもとに戻ってよかったですね」


「あぁ。そうだな。だが大切なのはこれからだ。今のショックの受け方だと立ち直るのにも時間がかかる。ゆっくりと少しずつ介抱していくさ」


「お人好し属性のギースさんならきっと大丈夫ですよ」


「ふ、ありがとよ。で、おめぇはどうすんだ?その目だとギルドの仕事は何日かできねぇだろ?」


「そうですね。どこか農家の手伝いでもして少し食い扶持を繋ぎたい思いですが、ちょっとメイリンさんにでも相談してみますね」


「まぁー今の時期なら収穫の手伝いがあるからなんとかなるだろう」


「あ、それはそうと今回の僕の治療費ってどうなったんですか?」


「おめぇが金持ってるのはこの前指輪換金したギルドが1番知ってる。だからギルドで立替してくれたみたいだぞ。あそこに転移させたその狐に礼でも言っとくんだな」


「あ?そ、そうなんですか。わかりました。あとでその話しておきますね。あとイナホにはいつもの酒の奉納しておきます」


俺はそういいながらイナホのアタマを撫でた。


そしてその手を噛まれた……。


噛まなくてもいいのに。


『気安く撫でるな。』


そこですか……まぁ、感謝はしてますので、以後気をつけます。



カタカムナ。

知らない人はこの期に名前だけでも覚えてください。


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