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偶然 1

カイン 主人公30歳 元サラリーマン

 異世界転移済み。頭に輪っか付 月牙鏟

イナホ 天狐 日課:太陽礼拝

ギース ベテランハンター 銛 銅ランク

ソルデ メイリンの同僚

シルビア ギースの婚約者 眠り姫

マスター 酒場のマスター

聖ニノ 高位治療術師



俺とギースは西の森の奥に来ていた。

今回の依頼はアウルベア狩猟。依頼人は村のキョウ遺跡までの馬車を運行してる御者からだった。

だいたいの場所しかわからないとのことだが、最近何度か見ているそうだ。


アイツらは基本夜行性だから昼はあんまり彷徨かないそうだが、何かあったんだろうか?


考えてても始まらないので、俺とギースは森の比較的暗がりを散策していた。


夜まで寝ていることも想定すると、昼間のうちに寝床を見つけて対処したいところだった。


「アウルベアは力が強い。普通に戦うと危ないときもあるからな。なるべく昼間に叩くんだ。」


「アウルベア側の立場だと卑怯って言われそうですけど、間引くことも大事なんですもんね」


「そうだ。人間のエゴって感覚は俺もある。元漁師だからその辺りは考えて、殺めた分は感謝して、その恵みに敬意を示すのが必要なんだ。」


ご最もな発言。もとの世界は食べないで捨てられる食料廃棄とかがあった。良くないとは思うものの、産業としてはそうせざる得なかった。


この世界はその辺りのどうなっているのかまた、酒場で話聞いてみようかな。

なんか信心深い人多そうな世界だし。


『多そうじゃなくて多いよ。』


うん?イナホ?


『この世界は、想いの力の影響が強い。だから元々は思念体で高次の存在の僕らも実体化することができる』


へぇーそうなんだ。奥が深い世界だなぁ。


「カイン。見てみろ。この落ち葉が裏返ってるのあるだろ?何かが通ったあとだ。

近いかもしれねぇ。」


俺はあたりを警戒しながら見回した。

アウルベアは夜に狩りをするが、視力ではなく、聴覚が優れている。この落ち葉が多いこの場所では相手にこちらの場所を常に伝えてるようなもんだ。


不意打ちは覚悟しないといけないかもしれない。


「カイン。いたぜ。」

予想外に、ギースから発見したとの報告。

指示された方を見ると、向こうは完全にこちらを見てる。


四つん這いで立ち尽くす2m近くの黒い物体

立ったら4m超えるかな?今は少し傾斜がついた森の中で、こちらが山側、あちらが谷側だ。


フクロウと熊の合わさった魔物というものの口は熊だから黒いのレッサーパンダが巨大化したみたいな容姿だ。


警戒して見合ってるとイナホからよくわからない忠告がきた。


『カイン。ここは良くない。何か忌むべき空気がある。』



とりあえず今は忠告を受けても対峙せざるおえない。俺は月牙鏟を構え、ギースも銛のゴムを引いた。


……


……


……


熊と対峙したときは後ろを見せるな。

挑発するな。というが沈黙が長すぎる。


こっちから行くべきか?


『カイン。まて!俺がいく。まずは石を投げるその後やつをなんとか立たせる。立ち上がったら銛を脚に打ち込む。おめぇは援護と立たせるように牽制だ。』


おぉ!明快な指示が頭に響いてくる。

能力すごっ。

よしっ、なら俺はゆっくりとギースさんから距離をとって挟み撃ちできるよう配置を調整していく。


ガサッ。ドッドッドッドッ。


移動しているといきなりアウルベアが突っ込んできた!

向こうからきたか!?しかも俺に!


ギースはすかさず石をアウルベアに投げるが当たらず、そのままギースから接近しあと一歩差し込まれたら噛みつかれるあたりで銛を打った。


ドスッ!銛で脚を打ったが、アウルベアは1秒しか止まらなかった……。


だが、

その1秒の間に俺は助走して月牙鏟のコテ側、刃の塊の方で上段から殴りにいく。


運が良ければバッサリ切れる!

そう思いながら、大振りするがアウルベアは立ち上がり手で横に払われるっ。


だが、払われた勢いを利用して回転してコテを横っ腹に叩き込むっ!


流石にアウルベアも怯んで後退る。

そこに後ろ側に回り込んでいたギースが、ハンドアックスで脚を切りつける!


アウルベアは振り向きながらギースに噛みつこうとするがちょうど傾斜があったため低い位置にいたギースには顎が届かず見事に回避。


アウルベアが後ろを向いている間に俺は刺股を首めがけてつきこむっ!

ちょうどアウルベアがこちらを向いた時首に刺股が刺さり込みこのままイケる!と思ったが急にアウルベアが硬くなって、刺股が刺さらない?!


アウルベアが殴ってこようとしたので流石に武器を手放して避ける。


月牙鏟は地面に落ち、アウルベアはフゥーフゥーと荒い息をしている。


ヤバい。武器がない。丸腰だ。俺は後退りしながら距離を取ろうとした。


ガサガサッ!その時ギースが走り込んで背後から攻撃を仕掛ける。

音でバレバレの攻撃のためアウルベアもギースの方を振り向き地面の傾斜を使って、のしかかりに入る。


ハァー…ふんっ!


ギースは以前見せた気功術で爪と牙の攻撃を身体で受け止めた!

だがこのままだとマズい!ギースも念和してる余裕もなさそうだ。

俺は敢えて音が鳴るようにガザガサ走り出して木の陰に走り込む。


「な、なにかないか?!なにか?使えるモノ!」

俺は辺りを探し始めた……


ゴリッ。


音の方に目を向けるとアウルベアの首だけ俺の方を向いていた。


へ?

首をへし折った?

ま、魔物ですよ……。


「カイン!よくやった!いい動きだったぞ。おめぇ案外やるな!」


こ、この人は……余裕ですか。

呆れてものも言えなくなった。


「じゃあ後始末すっか。」

ザスッ


アウルベアの首を落した。身体が大きいから首から先を持って帰るのだろうか?


「こういう獲物の場合どうするんです?」


「こんだけデカいと流石に持って帰れねぇ。それに、肉を置いておけばこのあたりの他のケモノの餌にもなる。だから持って帰るのは証明のための頭と脚一本を頂く」


そういうもんか。俺はギースを手伝おうと肉塊になったアウルベアに近づこうとする。


が、イナホに服を引っ張られた。


ん?


『カイン。なんかおかしいよ』


何が?と思いながら、イナホの方からアウルベアへ視線を戻した。


アウルベアだった肉体と……切り落としたアウルベアの頭……。


ん?!

今アウルベアの口が動いた?


ヒュンッ!ングッ!!

突然アウルベアの頭が宙を舞い俺の顔面に食いついてきたっ!!


グワッ!!


い、いてぇええぇぇっ!!

み、右目がっ!


俺は思わず仰け反りながら顔を振って必死に痛みを散らそうとしたが、痛みのせいで平衡感覚もままならずそのまま地面に倒された……。


「お、おいっ!カイン!大丈夫か!!……」

『カインっ!カインっ!カインっ!!……』


ギースとイナホが必死に呼び止めるも途中で意識が完全に途絶えた……。



−−−−−−−−−−


俺は……何をしてるんだ。


本来ならすぐ様ニイナを探しに行かないといけないのに。

なりふり構ってられないはずなのに。


何をしてるんだ?


ただ、なぜかわからないがニイナはそんな辛い状況にない気がしていた。


なぜこんな気持ちになるのか?

なぜ安心しているのか?

ただの楽観視のような気もするが、焦る必要がないと、俺の心が叫んでいる。


でも、ここは俺の知っている世界じゃない。早く、早く探しに行くべきだ。


いま、俺は何をしてるんだ。



……自問自答を繰り返しながらいつの間にか俺は目をあけながら天井を眺めていた。


夜か?


「目がさめたんだね。」


イナホ……か?


「そうだよ。目は見えるのかい?」


「あ、あぁ。まだ霞んでるがな。ここは?」


「ここはウゴの村の治療院だよ」


「何があったんだ?」


「昨日、狩りに行って、アウルベアを倒した後に首だけになったアウルベアに噛みつかれたんだよ」


「なんでそんなことが起こったんだ?」


「ボクも詳しくはわからない。ただ、イヤな空気はあの場にずっとあった。怨念が集まってるような空気感だったね。

ここからは推測だけど、何かしらの怨念があの首に宿って攻撃されたんじゃないかな?」


「そんなことあるのか?」


「うーん……まぁ、霊的存在が、実体化できるこの世界で、アウルベアの怨念と何かしらの怨念が重なれば可能性はあるんじゃないかなぁ?僕もよくわかんないや。」


「そ、そっか。あと、俺はあの後どうなったんだ?狩りに行ったのが昨日?だったらまる1日以上寝てたのか?」


「そうだね。ボクがいるのに申し訳ない限りだ。悪かった。次からはもう少しチカラになるようにするから。

でも、気功術学んどいた方が良かったでしょ?」


「あ。うん、そ、そだな。だがこの結果わかってたのか?」


「まさか。ただ、カインが言ってた堪みたいなのが働いてて学ぶべきと思ってたんだよ。目が無くなるなんて事前にわかってるわけ無いじゃん。」


「は?え?今なんて言った?」


「あ、そうだよね。まだ自分の様子わかんないよね。今ね、頭の骨の周りが食いちぎられた後なんだよ」


「え?俺、生きてるよね?」


「ハハッ。それだけ冗談言えたら大丈夫だよ。」


「え?あ、いや、痛みもないぞ。」


「そこは高位治療術師様のチカラなんじゃない?ボクですら引くくらいのチカラだったからね」


「あ、え、そろそろその辺詳しく教えて下さい。」


イナホに頼み込んで詳細を聞いたが正直信じられない。


あのあと俺は顔面を食いちぎられ、その後魔物の生首は沈静化してその後は普通の生首に戻ったらしい。


ただ、俺の状況は相当悪く、イナホが空間転移を使って村のギルドまで一瞬で戻って大騒ぎだったようだ。


酒場の準備で出勤したメイリンは俺を見るなり絶叫をあげ、マスターはギルドにおいてある物資を片っ端から試してくれて、慌て過ぎて、途中でぎっくり腰になったらしい。


不幸中の幸いはシルビアのためにきた高位治療術師の聖ニノがちょうど村に着いて村長との面談を終えたところだった。

村長宅を出てすぐにメイリンの叫びを聞いて顔を出してくれたため、俺の状況を見てに即座に対処してくれたらしい。


聖ニノのヒーリングはどんな理屈かよくわからない。

痛みを抑えたい部分に麻酔のようなチカラと自己修復能力の大幅な向上を促してくれてるんだと思う。

通常、欠損した部位が大きいと人間の身体は元には戻らない。ただ、それをしっかり目やその周囲も治しつつあるようだ。

まだ頭の半分包帯で覆われているのと麻痺の影響で状態はよくわからないが、とてつもないチカラであることに違いない。


今日は俺の治療と、シルビアさんの対応をしてくれてチカラを使いすぎたとまだ村にいるらしい。


明日発つらしいからお礼だけでも伝えたい。どうも聞いたところシルビアさんも意識を取り戻したそうだ。

本当に神がかっている。


「なぁ、イナホ?

1個人がそんなに莫大なチカラを持って弊害とかないのかなぁ?」


「どうだろう?修行してチカラをつけたのならわかるけど、彼女は若すぎる。きっと天性なんじゃないかな?」


「天の思し召しか……。俺の神様にももっと信頼頂けるように頑張りますね」


「ふ。そうだね。前を向くのはいいコトだ。さっきも言ったけど、キミの頑張りにボクも少しは協力するね」


俺はイナホとの会話を終え、再び眠りにつくことにした。


それにしても、イナホが空間転移みたいな高等な芸当ができるならもっと早くそれ使って欲しかったな。

そしたらこんなムダな負傷もなかった気もするし。シルビアさんへの治療も見たかったし。まぁもういいか。



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