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1 出会い

俺は一樹。


オレがなぜこの世界に来たかというと、簡単に説明するとだな。

異世界に召還された友人と、この世界にやってきた。

いわゆる『巻き込まれ』ってやつだ。



友人の優華が、異世界に召還された時、オレも他の友人3人も巻き込まれてしまった。で、一度は無理やり元の世界に戻されたが、再びこの世界に召還された。

無理やりってのは、オレがこの世界に留まりたいと懇願したが、聞き入れてもらえなかったのさ。

まあ、どーして聞き入れてくれなかったかは、色々やらかした・・・いや・・・。

それについてはだな。その内語る事にする。

とにかく、2度目にこの世界に来たときは、この世界の頂点に立つ人物である王に懇願し、なんとか魔法を会得し、以前知り合った冒険者の剣士と旅をすることとなった。

この世界は、『国』という概念がないから、ひとりの『王』がこの世界すべてを統治していることになっている。世界をひとりの王にまかしといて、だいじょぶか?と素人から見ても、心配になる。

だいたいこんな感じだけど、また詳しくは、追々説明することにする。




この世界は、天国だ。

なんせ、ゲームオタにとったら、魔法使い、剣士、エルフ、ドワーフ、神官、精霊、ドラゴンなんてさ!

ああ、もう~~夢のような世界が目の前に広がっている!!



でも、まあ・・・夢見て、ワクワクしていたのは・・・最初の頃だけどなあ・・・


「いいクエがないな・・・」


オレは、クエの掲示板を見て、ポツリとつぶやいた。

魔法使いがよく着るフードつきのローブを着用し、うなだれていた。黒髪で無造作に耳までのばして、ナチュアルスタイル。メガネをかけ、一見すると、真面目でとつきにくそうな雰囲気に見えるらしい。


相棒のせいで、いつもの通り、寝坊して出遅れてしまった。

報奨金の良い、または条件のいいクエは先に取られて、残っていない。報酬の超高額なものは、難解なクエで上級冒険者向きのもの。オレはまだ初心者の中レベル程度で、受ける事のできるクエは限られている。

城から持ち出した金銭は、もうとっくに防具やら生活費に消えて、わずかしかなく、楽しいはずの異世界ライフは思っていたものとは違っていた。


現実は、そんなに甘くないってことさ。ゲームみたいに、リセットボタンはないからな。

ああ~~~~金かねがほしい~~~!!

金かねさえあれば、魔物の軽度の攻撃ぐらいなら防げる憧れのフードが手に入るんだよ!



ここは、ステップニーの町。召還された城から、転移魔方陣を使って、7日はかかる場所。

町のあたりには、ダンジョンがいくつかあり、珍しい鉱物がでるとかで、冒険者で賑わっている。宿屋、道具屋、武器屋、鍛冶屋、などがあり、城下町ではないが、一通り揃っているため、不自由することはない。


オレの隣にいる男は、屈強な身体つきで、腰には剣を差し、髪は乱雑に肩までのばした茶色、優しげな目はブラウンで、穏やか人柄。

こいつは、相棒の剣士のグリシン。剣の腕はバツグンだが、頭でっかちで、行き当たりばったり、作戦を練るなんて事に向いていない。向こう見ずな行動から、今まで、パーティーを組んでは分かれて、その繰り返しだったようだ。それに、こいつは酒ぐせが超悪いときている。昨日も、例のごとく、くだを巻いて、なかなか宿屋に戻れなかった。ほんと、毎回やれやれだー。

普段は、真面目ないい奴なんだが、酒が入ると、手がつけられなくなる。


「クエの前に『神官』を探さないと、ダメだろう?」

「だよなー」



この世界は、神殿に行けばすぐに『癒し』の術が使えるが、使用できるレベルは軽症程度であって、神に仕える神官ほどのレベルを上げようとするのは至難の業。パーティー全体への癒しや魔物の毒治癒、麻痺治療などとなると、神官ではないと不可能。ダンジョンに行くには、「神官」を伴っていかないと自殺行為だ。

どうして、ダンジョンに行きたいのか?

ダンジョンに行くと、鉱物が運よく取れれば、金に困る事はない。だから、ダンジョンに行きたいのさ。



「はあ・・・いやさあ。金なし、名声なし、男前でもなし、この3なしペアの俺たちと組んでくれるかあ?」


実際、幾人か声を掛けたが、無下に断られてばかりだった。ようやくパーティーに入ることを承諾したとしても、あまりの奇想天外でハードな行動に途中で逃げ出したりされるのがオチだった。


いつものように良いクエにありつけず、これから森へ素材集めでもして、小金稼ぎをしようと、町のはずれにさしかかった時、何やらもめているグループがあった。

見たところ、パーティーメンバーのようだ。


「アンタが色目使うから、私の彼氏が別れたいと言ったのよ!」

「そんな・・・」

「なんとか言いなさいよ!この泥棒猫」


突き飛ばされ、地面に尻餅をついているのは神官の衣装を着用している女性。

叫んで怒っているのは、風貌からして女剣士だろうな。


こうゆう面倒事には巻き込まれたくない。

スルー&スルーだな。


その場を、見て見ぬふりで通り過ぎようとしたが、隣にいたはずのグリシンが忽然と姿を消していた。


まさか・・・悪い予感が。


「女性同士のケンカはみっともないぞ」


神官の女性と突き飛ばした女剣士の間に、グリシンは入りこんだ。


いつの間に!!わちゃーーー悪い予感的中! かんべんしてくれよ~!剣の腕はいいのにさー。その後先考えない性格どーにかしてくれ!!


「なんなの!邪魔しないでくれる?この女が私の彼氏をとったのよ!」


「そ、そんな・・・私は何もしていません。」


よく見ると、神官の女性は豊満な胸の持ち主だった。

ん?待てよ?神官!


「はあ?よく言うわ!私の彼氏に色目を使っていたくせに!」


「色目だなんて・・・わたしもっと男前で、背が高くて、歯がきれいで、白馬に乗った人が好きなんです!」


その場にいた全員の目が一瞬で点になり、しばらくすると、大きな笑い声が周りに響き渡っていた。


笑われて、当然だろう。ひょーこの女、かなり痛いなあ。

そんな男、いねーよ。いたら、いたらで、おかしくねえか?

物語の読みすぎで、頭の中、お花が咲いてるな。

この手の女とは、関わり合いになりたくないな。



「たしかにー私の彼氏は、男前でもないし、歯は白くないし、背は普通だし、白馬にはまったく似合わないね!アンタがいると、パーティーの和が乱れるの!出て行ってくれる?」








「ありがとうございます。助けて頂いて。」


神官の女性は、髪は金色、ブラウンの眼はクリクリしていて、愛くるしい容姿、一番印象的なのは、神官の服からはちきれんばかりの胸が特徴的だ。

でかすぎだろ、その胸は・・・。


「いやいや、困ったときはお互い様さ。」


「はあ、でもこれでまたパーティーから追い出されました。」


ふう~とため息をついて、気落ちしているのか、表情がさえなかった。


「また?」


「はい。私はどのパーティーでも長続きすることがなくて、特にパーティーの中にカップルが元々いると、必ず私が揉め事の原因になってしまって・・・」


なるほど、おそらくこんな胸を昼夜見ていたら、男としたらもんもんとするだろうなあ。豊満な胸なら、目が自然といってしまうのもうなずける。もんもんとするのは、普通の男だけだろうけど・・・

そうだ!調度いい!神官だ!

『癒し手』が目の前にころがってるじゃないか!


「よかったら、オレ達のパーティーに入らないか?男2人しかいないんだけどさあ」


「だ、だめです!」


「男の方2人きりの中に入ると、私を取り合って、争いごとになりますから」


はあ?いったい今までどんな目にあってたのやら、男がみんな巨乳好きだって?

それこそ偏見の塊じゃないか!!


女の子の胸は、オレにとったら手のひらサイズがジャストフィツトなんだよ!

この手におさまるか、おさまらないか、それがいいんだ!

大きさより、女の子の感度のよさだろ?って変な方向に考えが・・・



「あ、ごめん。オレきみの胸になんも興味がないわ~」


「え?興味がないんですか?」


「まったく!これっぽっちも!」


力強くオレに言われ、そんな事など、今まで言われなかったのか、不振な顔をしていた。

しばらくすると、はっと何かに気づいて、表情を変えて。


「まさか・・・まさかおふたりは・・・そうゆうやんごとなきご関係なのですね!」


「「はあ??そうゆう??」」


「言わなくても大丈夫です。他の方に言いふらしたりしませんから、それなら、安心してこちらのパーティーに入らせて頂きます。」


顔を赤らめて、キラキラした目で大きな誤解を、まるで喜んでいるようだ。

そこ、喜ぶところか?


「おい!ちょっとま」


一樹は、グリシンの誤解を解く言葉を途中で止めた。

このまま誤解したまま、参加してもらう方がいいのではないかと。

オレたち『3なし』ペアが恋人同士だと勘違いされていた方が、やりやすいのはないかと。

彼女はどうやら今まで、トラブルに巻き込まれていたようだし、不安要素はなるべくとりのぞいておいた方がいいだろうと、少々お花が頭に咲いているぐらい、この際大目にみてだな。

ふたりの話し合いに終止符が打たれた。


「もう、やだー仲良いんですね!」


なぜかすごく嬉しそうにニヤニヤして、二人のコソコソ話をしている様子をちらちら見ている。



『3なし』のオレ達がカップルと思われるのは、非常に、非常に・・・屈辱であるが・・・

しかし、『癒し手』がいない中、目の前の「神官」を逃すなんて贅沢は言ってられない!

プライドよりーーー冒険だ!!ダンジョンだ!!ダンジョン=金かねだ!!!



「「じゃあ、これからよろしく。」」

「こちらこそ!」


「私は、神官のフィージリアと申します。」


「オレは、剣士のグリシン。」


「オレは、魔法使いの一樹。」


3人でパーティーを組むことになり、大きな誤解?は置いておいて、

よっしゃーー!!これでまたダンジョンに行ける!

テンションが上がった一樹だったが・・・フィージリアの言葉で我に返った。


「そうそう、先ほど旅の行商人から聞いたのですが、お城の城下町で、精霊姫様のお披露目があるとか。やっと旅から戻られて、お城に帰還したようです。お披露目に行って、精霊姫様にお会いしてみたいです!!」

「まじで?そりゃあいかないとなあ!」


2人ともうきうき顔で、子どものようにはしゃいでいる。この世界では、『精霊姫』という存在は、子どもたちが読む絵本の中にでるぐらい、有名な存在で、以前この異世界を救った人物とされている。そのため、英雄のような扱いになっている。


「一樹さんも、精霊姫様にお会いになりたいですね?」


「あ、ああ。」


フィージリアから『精霊姫』と聞かれて、気のない返事をしてしまう。

オレは、魔法を習得すること、城を出ることの条件として、城での出来事、友人優華=精霊姫の事は何があっても、口を閉ざすよう王から、固く約束させられていた。

そのため、精霊姫と友人だとか、城にお世話になっていたとか、『守り人』のシェルフトと仲良いとか、一切秘密にしなければならない。


「きっと精霊姫様はおきれいな方なんでしょうね~」


フィージリアは、うっとりとして、まだあった事のない精霊姫に思いをはせているようだ。


いやー水さすようで悪いけど、優華はそのへんのふつーな平均的な女子だ。

きれいというより、「かわいい」という方がしっくりくる。

知らないってのは、罪だな・・・。


「そして、頭がよくて」


いやいや、どちか言えば、大学ではギリギリの成績だったけど


「とてもしっかりされていて」


いやいや、何にもないとこでよく転倒していたぞ。


「はあー。早くお会いしたいです」


思い込みが強すぎて、すごい人物になってるなあ。事実を伝えたいが。

ああ~~我慢、我慢!!


声にだして言いたい事を我慢するのは、忍耐が必要だと悟った出来事だった。

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