俺、毟られる。
爽やかな風に吹かれ俺は揺れる。
周りには雑草が生えており、その色鮮やかさは俺の顔の周りについている青い花びらにも勝らずとも劣らない。
うん? 向こうでものすごいふわっとしたドレスを着てる5歳くらいの金髪ポニテロリと重そうな鎧に身を包んだ20代くらいの銀髪の男性がお花摘みをしてるぞぅ。
あっはっはっはっは
ここどこやねん?
なんで俺雑草と色鮮やかさ比べしてんの?
こんなかわいそうなこと隣の席の山田くんでもしないよ?
なんで俺の顔の周りに青い花びらついてんの?
宇宙の権利巡ってロボットを戦わせる人たちもこんなダサいのつけないよ?風車つけてるのはいたけど。
あと幼女誘拐は犯罪なんだけどちょっと署まで同行願おうか。
というかなんで俺の顔に花びらついてんの!?
待て、よく考えろ!まだ慌てるような時間じゃない。俺は今まで何してた?
……思い出せない!
学校に通ってたのは覚えてる。
しかしそれは知識としてだ。
ここにくる直前何をしていたのか全く思い出せない。
家にいたのか、学校にいたのか、駅にいたのか。
全く思い出せない。
思い出せないならもういい。
なぜ花びらがついているのか。
手を動かそうとする。
感覚がない
足を動かそうとする。
同じく感覚がない。
これ俺の顔に花びらがついてるんじゃなくて「花」そのものになってない?
「見て!ランスあの花青色だわ!」
ん?なんかこっちきたぞ。
どうしようすごい嫌な予感がするんだけど。
そうそうお花畑で幼女がお花の王冠作るのって定番だよね。
「珍しい花ですね、メアリお嬢様。どうです。お父様に見せてあげては?」
「いい考えね!きっとお父様も喜ぶわ!」
あ、やっぱり? いや。やめてください。ほんとやめてください。あ、やめてやめてやめて! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
ごめんなさい!これから道端に生えてる雑草も避けて歩くようにするんで!
いやまじやめっ……あ 白パン
ああなんかぼんやりと黒髪のダンディーな短い髭のおじさんが見える。
本がいっぱい……書斎なのかな?
もうなんか自分が花になったとかどうでもよくなってきた。
「見て!お父様!今日はランスと珍しい花を採ったのよ!」
俺が幼女の手からおっさんの手に渡るのを感じた。
最後はせめて巨乳の姉ちゃんの胸に抱かれて死にたかったな。
「ほう、メリーすごいじゃないか。そうだこの花瓶に飾って置くといい。」
「ええ!ありがとうお父様。さっそく水を入れてくるわ!」
彼は優しく幼女の頭を撫でると彼女が走り去るのを見送る。
実にいい笑顔だ。
それにしてもなんかクラクラする。気持ち悪い……。
お父様は俺を珍しいものを観賞するかのようにジロジロ見る。
ちょっと恥ずかしいな。
顔が赤くなる。
あるのかわからないけど、顔。
「ふむ、そろそろメリーにも魔法を教えるとするか。」
え、魔法あんの?じゃあこの気持ち悪さを治しグエッ。
強い衝撃を受け、喉から空気が絞り出される。
どうやらお嬢様が戻って来たのを感じ俺を机に置いたらしい。
お嬢様、扉開けたはずなのに全然気づかなかった。
「やぁメリー。さっきぶりだね。」
「ええお父様、お水入れてきたの。これで自分の部屋に飾れるわ。」
「そうかい、でもそろそろ夕飯の時間だ。部屋に持ってくのは後にしなさい。」
「わかったわ。お父様。」
そう言い、お嬢様は俺を水につける。
幼女が無造作に捻り切った茎が水に染みる。
アレ? 気持ち悪さが消えた。
どうやら水が足りないと気持ち悪くなるらしい。ごめんよ、子供の頃なんの用もなくむしった植物達。
安定を取り戻すと視界が暗くなってるのに気づいた。
あれ?なんか花びらが閉じていく……。もしかしてアサガオとかそこら辺の花だったのかな?
あっ完全に閉まった。
「お父様!大変よ!お花が閉じこもっちゃった!」
いやそんな、引きこもりみたいに。
「メリー。この花はね、夜になったから寝ちゃったんだよ。メリーも夜になったら眠たくなるだろう?」
なるほど、夜になると花びらが閉じるのか。
「うん。じゃあうるさくしたらお花起きちゃうね。しーってしないと。」
「うん、そうだね。しーっとしないと。」
閉まっても音はめっちゃ聞こえるなぁ。
ん?なんか文字が出てきた。
残り水分 100%
養分 56%
魔力 0
スキル・魔法なし
残りスキルポイント150
なんだこれ?
読んでいただきありがとうございます