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六日目夜/約束を守ることができなかった……



…………。 


 複雑に絡み合う幾つもの音が重なり耳朶を揺らし、幻想即興曲の最後。


 余韻を残しながらゆっくりと最後の一音が儚く響き、終止符。

 

 ボクは思い出す。


 そう絶賛冬休みの真っ最中。


 クリスマスを直前に控えていた。


 この数日間は連日朝から学校の音楽室に籠り、補習や部活動で騒がしい校内の喧騒。


 そんな喧騒が修まったのは日が沈み赤く染まった空が急速に淀み暗くなっていく黄昏時。


 一番集中できるタイミングで、校内を巡回する用務員のおじさん。


集中していたいいところで演奏を中断。


 「もぅ、こんな時間だぞ! そろそろ鍵締めるから帰れよ~」 と、声をかけられる。


 だけどその続きがあり……。



「それとも今夜は泊まってくか? 親御さんが帰ってくるのはどうせ翌日だろ?」


 と、ボクの父さんの帰宅が遅い事を知っている。


 一人親の父子家庭であることを知っていて家庭環境に理解のあるおじさんだ……。

 

 いや、それでも一応先生だ。


 ボクは集中を切らされた事に思わずムッ! となったけど、先生の甘い誘惑に「お願いします」

 

 っと思わず顔をニヤケさせる。


 「オレからも連絡しとくけど、おまえからも一言いれとけよ~!」 と、音楽室の扉をバスッと閉めて踵を返した。


 実は自主合宿と称して、学校に泊まり混む常習者だったりする。


…………。


 そして、これで心置きなく課題曲に集中できるぞ!


 と、幻想即興曲に集中して今に至っている事を思い出す。


 …………。



■『わたしは例え運命が私達を引き離そうとも命をかけてそれに抗う事を誓う!』


 お嫁さんごっことはいえ真に迫ったエリスの宣誓。


そして……。



「ボクが例え元の世界に帰ることになったとしても、その運命に抗いこの世界に残ることを誓い約束する!」


 エリスの本気の宣誓に気圧されながらも、それに応えるようにボクの宣誓!




 

 結局、その宣誓は言葉だけのウソとなってしまう。


 ごっこ遊びだったとはいえ、ボクは真剣だった。


 ボクが、この指輪を嵌めている資格はあるのか……。


 頭上に掲げ見上げるように見詰める。

 

 

「リュウぅぅ!」


 エリスとの別れで叫ぶ彼女の声が鼓膜に焼き付いている!

 

 その直前、どこまで僕達を翻弄し思い描いてていたのかはわからない。



 

そんなフィクサーであるマーティーに憎しみを抱き、憎悪を燃やし、エリスは刃を手に殺意……。


 ぼくが知る限り、ここまでエリスが殺意を抱いたのは二回。

 そのうちの一回目はボクの思いに応えてくれたメアリーが止めてくれた。

 

 だけど……二回目。

 

 メアリーはボクを元の世界に返すためにその両手をふさいでいて阻止する事は不可能。


 ボクは指輪に向かって心の中で叫ぶしかできず、その結末を知る術もなく遠ざかる意識……。


鼓膜に焼き付いている声は一つだけではない!

 もう一つっ!

 

「リュウの嘘つきぃぃぃっ!」


 ボクは

頭上に掲げていた指輪をおろし鍵盤の上。


込み上げてくる気持ちに応えるようにポタリ一滴……。



 聴こえるハズもないリーンという音とともに、赤く輝くシンプルなデザインのダブルリングを濡らした。







 

 


 

 


 


 

 

 

 





 

 


 

 

 




 

 

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