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第二百五十七話 六日目夜そんなロマンチックな事、ボクにはできません!


「あのバカ、やっと到着したか、全く……」


 バラバラバラと風穴が空いた天井の残骸が降り注ぎ、大穴を見上げるように腰に手を当ててイーダ。

 

 この瞬間まで激しく殴り合いを続けてきたマーティーとベルチェ、そして獣人のルフィとドピュッ。


  戦闘を中断して見上げるように天井。


 降り注ぐ残骸と水滴の隙間を赤く光る煌めき。


 宙を旋回するように巨体。


 ヒヒーンと館内に響く聞き覚えのある嘶き。


 ゆっくりと、金色の鬣をなびかせて白い胴体。


 白馬だ!


 ボクの想像していたものとは違う真っ白な全身。 


 だけどその白馬に乗るのは赤いドレスに白い髪をフワリと揺らす見覚えのあるシルエット。


…………。


 と、もう一人。


馬上の上、両手をおおきくあげて、「ダダダ! ダーン!」 と決め台詞。


 ベルチェの愛娘、金色の髪を揺らしてカミラ!


 眼下を観察するようにゆっくりと旋回を続け、遠目からでもわかるエリスがひょいっと顔を出す。

 

 大きな赤い瞳と目が合う。


「リュウ~!」 エリスが叫ぶ!

 

 つい昨日エリスと別れて以来だけど、久しぶりに会うような懐かしさ。


 ボクは思わず両手をあげてエリスの呼び掛けに答えてしまった。

 

 それが間違いだったと次の瞬間に気付く。

 

 エリスはもう一度ボクの名前を叫ぶと、「やぁっ!」 と勢いよく叫び白馬から飛び降りる!


 真っ直ぐにボクの胸に飛び込んできたことに、気付いた時には遅かった。

 

 カバッと飛びつくようにボクに抱き付くエリスだけど……。

 

 いわなくてもわかるよね?


 映画やアニメのワンシーンのように飛び込んできた彼女を受け止めてそのまま一回転……。

 

 そんなロマンチックなこと、ヒョロヒョロのボクにできるはずがないっ!


 イーダから借りたレジェンダリーの赤いコートが衝撃を吸収。


 だけど女の子の体重と物理法則には叶わず、そのままおしりをついて押し倒される。


 そして、螺旋階段を降りるように着地する白馬。


 床をカツカツと鳴らし、本来は茶色い毛並みに金色のたてがみ。


 白馬の正体は防寒用の白い馬着を来たほーちゃんだ。


 ブヒィ~っと鼻を鳴らして大きな顔をボクに擦りよせる。

 

 ほーちゃんが空を飛んだりするのを見たことは一度もないし、馬が空を飛ぶなんて話は聞いたことがない。

 

 多分だけど、ほーちゃんの蹄に嵌められた馬蹄の影響。


 それと、バーダックから始まりの街ウェーンの途中で立ち止まり、母娘を引き離すことに抗議のストライキ……。


 返せていない仁義を返すために頑張ったのだろうと……。

 

 そんなことを考えながらボクのお腹に馬乗りしていたエリスがボクの手を引っ張り、起こしてくれた時だ!


 ボクの背中から耳元に囁くように声がかかる。


「時間だ……」、と、一言メアリーだ。




 

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