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絆のトレーニングノート:始まりの春、強さの種  作者: たまに何かを書く人
【第9章】走り出した挑戦の記録

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第五節 冬の約束とひとりじゃないクリスマス

12月、冷たい風が頬を刺す季節――。


放課後のトレーニングにも、吐く息が白く白く浮かぶようになった。

チームトレノの4人は、間近に迫った「大記録会」に向けて、いつにも増して気合を入れていた。


「今日は50回を3セットね!」


ハルの号令に合わせて、4人の体がリズムよく上下する。

肩、腕、脚──鍛えられた筋肉がシャツ越しにもはっきりとわかる。春の頃と比べ、彼女たちの身体はずっと力強く、しなやかに変化していた。


「リン、また柔軟性上がったよね。開脚角度がすごい!」


「ありがとう、ユキ。でもユキたちも、フォームがすごく安定してきた。記録会、楽しみだね」


それぞれが目標を持ち、工夫しながら練習に取り組む日々。

確実に、4人の絆と実力は高まっていた。


──


その日も汗を流したあと、ハル、ユキ、さちの3人は帰路についた。


「じゃあ、また明日ね!」「風邪ひかないでね~!」


玄関先で手を振るリン。

静かな家に戻ると、シャワーを浴び、自分の部屋へ向かった。


ベッドに腰を下ろし、クローゼットの鏡に目をやる。


立ち上がって鏡の前に進み、タンクトップ姿の自分を見つめた。


春までは「細く引き締まっている」程度だった体は、今や明らかに変わっていた。

肩には張りが出て、動くたびに筋肉のラインがわかるようになった。

腕も少しずつ厚みを増し、力を入れると上腕に丸みが浮かぶ。

腹筋は、うっすらと線が入り、左右に整った割れ目が見える。


「……ここまで変われるなんて、思わなかったな」


リンはそうつぶやき、鏡の中の自分にそっと微笑みかけた。


トレーニングの成果と、仲間たちとの時間。今の彼女は、そのすべてを誇りに思えていた。


視線を移すと、壁のホワイトボードには記録会の予定と、各自の目標が書かれている。


(絶対に成功させたい……3人に出会えて、本当に良かった)


そう思ったとき、タブレットが着信音を鳴らした。

画面には、キャサリン──リンの母の姿。


「Hi, リン!今日もがんばってた?」


「うん!今日はね、スクワット300回やったよ!それから、記録会、クリスマスにやることになったの!」


キャサリンの目が見開かれ、次の瞬間、嬉しそうに笑った。


「Oh wow!クリスマスに!? それは素敵なプレゼントね。……リン、がんばってるの、ちゃんと伝わってるわよ。えらいね」


「でも……ちょっとさみしいよ。なかなかママ、帰ってこれないから。でも、みんながいてくれるから大丈夫」


キャサリンの表情が優しく和らいだ。


「……ありがとう、リン。ごめんね。でも、今年のクリスマスは帰るわ。パパも一緒よ。記録会のあと、みんなでパーティーしない?」


リンの目がぱっと輝いた。


「えっ!? 本当!? 3人の家族も来る?ずっとやりたいって思ってたの、みんなでのパーティー!」


「もちろん。お正月も一緒に過ごせるように、スケジュールも調整したから」


「ありがとう……ありがとうママ!」


目が潤むのをこらえながら、リンは大きく頷いた。


「絶対、記録会、成功させるよ。みんなで最高の時間にする!」


「楽しみにしてるわ。リン、大好きよ」


「私も。大好き!」


──


通話を終えたあと、ベッドに潜り込んだリン。

カーテンの向こうには、冬の星が静かに瞬いていた。


(私、ここに来てよかった)


そんな思いと、クリスマスへの期待に包まれながら、リンは眠りへと落ちていった。


──


記録会まで、残り2日。


リンのトレーニングルームは、冬の寒さもどこへやら、熱気に満ちていた。


「今日が本番前の最終調整だね!」


ハルの声に、3人がうなずく。


「うん、いよいよ“トレノ大記録会”!」


「トレーニングも、今年ラストスパートだね」


フォーム確認、リズム体幹、腹筋、スクワット、柔軟チェック。

すべてが仕上げに向けた最終メニューだ。


1時間後、額には汗が光り、体はぽかぽかと火照っていた。


「ふぅ~、やりきった~!」


ユキがマットに倒れ込みながら言うと、さちも笑いながら水を飲んだ。


「みんな、おつかれ~!」


自然と話題は、その後の冬休みへと移っていく。


「ねえ、冬休みってどうする?」


ハルがふと問いかける。


「毎日トレーニングだけじゃ、ちょっともったいないし」


「宿題もちゃんとやっておかないとね」


さちの現実的な言葉に、みんながうなずく。


「初詣、4人で行こうよ」


「それ、いいね!」


「親戚の家に行く予定もあるけど、2日くらいなら空いてるよ」


「私はたぶんずっといるけど、妹が風邪ひかないかだけ心配かな……」


リンがタブレットを取り出し、カレンダーアプリを開いた。


「じゃあ、スケジュール組んじゃおうか」


4人で相談しながら、宿題の日・トレーニングの日・遊びに行く日・初詣の日などを一つずつ埋めていく。


すると、リンが思い出したように声を上げた。


「あ、そうだ! クリスマスの日、大記録会のあと──うちでパーティーしようって、ママが!」


「えっ、本当!?」


「うん!パパも帰ってくるし、“さちちゃんたちのパパとママも、みーんな呼んじゃおう!”って。すごく張り切ってた!」


「うわぁ……キャシー先生らしい!」


「めちゃくちゃ楽しみ!」


「手伝うことがあったら、言ってね」


「それまでに、記録会、がんばらないと!」


──


その日の夜、それぞれの家に帰って──


さちの家では、湯気の立つおでんを囲んでいた。


「リンの家で、クリスマスパーティーするんだって!」


「そうなの? 楽しそうね」


「うん。リンのママが言ってくれて……。お母さんも来てよ」


真由美は優しく微笑んだ。


「じゃあ、おかずかデザートでも何か作って持っていこうかな。張り切っちゃってもいい?」


「うん、絶対うれしいよ!」


ハルとユキの家。


夕食後、リビングで報告を聞いたあかねとたくみ。


「パーティー? いいじゃない!」


「リンちゃんの家って、あのトレーニングルームのあるとこだよね?」


「そうそう。みんな呼んでくれるんだって」


「せっかくだし、料理、何か作って持っていこうか」


「うちの煮込みハンバーグがいい~!」


「私はサラダつくる~!」


その夜、リンの部屋に届いたキャサリンからのメール。


【From: Mom】

トレノ全員+ご家族分の椅子と食器は準備完了。

メニューの一部はこちらで用意するけど、持ち寄りも大歓迎よ。

それから、プレゼント交換とか……どうかしら?


リンは微笑みながら、すぐに返信を打った。


ありがとうママ。みんなすごく喜んでた!

パーティー、楽しみにしてるね!


──


冬の夜は冷たいけれど。

心の中には、ぬくもりが広がっていた。


この冬は、きっと忘れられない季節になる。

誰かと過ごせる、その幸せを胸に。


挿絵(By みてみん)

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