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絆のトレーニングノート:始まりの春、強さの種  作者: たまに何かを書く人
【第4章】仲間とつくった絆

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第一節 支え合ってきた証

「次、ラスト50メートル全力! ……よし、スタート!」


夏の日差しがまだ残る夕方。

スイミングスクールの屋内プールには、バシャッという水音がリズムのように響いていた。


全国大会を目前に控えたハルとユキ、そして先日の市大会で自己ベストを更新したばかりのさち。

三人は練習を終えると、タオルを肩にかけながら並んで歩いていた。


「今日のスイム、しんどかったぁ……」


「うん。でも内容は前よりハードだったのに、ちゃんと泳ぎきれてた」


「みんな、本当に強くなったよね」


そう言い合いながら、三人はハルとユキの家へと向かう。

夕暮れの空気の中に、遠くでセミの声が響いていた。


 


玄関を開けると、ふわっとやさしい匂いが漂ってきた。

リビングには見慣れないシルエット――


「……あっ、お母さん!?」


ソファに座っていたのは、さちの母・真由美だった。

その隣に、ハルとユキの両親であるたくみとあかねが並び、湯のみを手に和やかに話している。


「おかえり。お邪魔してます」


「こんにちは、さちちゃん!」


少し照れくさそうにしながらも、さちは母の隣に座った。


「今日はちょっと時間ができたので、ご挨拶にと思って……。さちから、いつもお世話になってるって聞いていたから」


あかねが微笑みながらうなずいた。


「いえいえ、こちらこそ。さちちゃんが一緒にがんばってくれるから、うちの子たちもすごく刺激を受けてるんですよ」


「そうそう。市大会のタイム、見ましたよ。“勝負できる体になってきた”って、コーチも褒めてました」


真由美は、驚いたようにさちのほうを見つめた。


「……さちが、“最後までやりきる子”になるなんて、正直、想像してなかったんです」


「小さい頃は、何をやってもすぐに飽きちゃう子で。でも、ハルちゃんとユキちゃんと出会って、本当に変わりました」


目にうっすらと涙を浮かべながら、真由美は言葉をつないだ。


「ありがとうございます。さちに……“きっかけ”をくれて。これからも、どうかよろしくお願いします」


たくみとあかねは、静かに、しかし力強くうなずいた。


「もちろんですとも。三人は、もう家族みたいなものですから!」


部屋には、あたたかな笑いが広がった。


 


やがて、さちは立ち上がり、ハルとユキに視線を送った。


「……じゃあ、行こっか。トレーニング」


「うん、メニュー更新したし」


「今日のは気合い入るよ!」


三人は自分たちの部屋に移動し、トレーニングウェアに着替えた。

すると――ハルがふと、さちの姿に目をとめる。


「さち、ほんとに変わったね。腕も引き締まってきたし……お腹まわりも、ちゃんと仕上がってる感じ」


ユキもそばに寄って笑った。


「背中、すごくきれいなラインになってきてるよ。きっとキックにすごく効いてくる」


「ふたりこそ、肩まわりの厚み……ほんと、全国の選手っぽいよね」


積み重ねてきた日々の証が、今ではしっかりと体に刻まれていた。


「じゃあ、記録と一緒に、“今の私たち”も記録しよう」


ホワイトボードの隅に、今日のメニューが書き加えられる。



・スクワット 60回

・プランク 45秒×2セット

・チューブを使ったインナー強化

・バランスボールで体幹固定

・腹筋ローラー×15

・スタートジャンプ練習(3セット)



「さあ、行こう! 全国の舞台に向かって!」


「そして、その先の私たちの未来に向かって!」


「うん、ここからが本番だよね!」


三人の声は、夏の夜風の中へ、まっすぐに響いていった。


挿絵(By みてみん)

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