旅立ちに向けて.4
「それにしても、ロッカーさんは、あの領主代理とも知り合いなの?」
「ああ、まあな。この街に住む時に挨拶に行ったし、依頼も頼まれたこともあるしな」
「……そっか。ずいぶんと気さくな人だね」
「ああ。領主代理と言っても元は、平民だしな」
「そうなんだ。街の投票で決まるとか言ってたね」
「まあな。豪華な屋敷とかに住めるから、競争率はそれなりに高いみたいだな」
「そっか」
「あの、みなさん。外でお客様が待っているんですけど」
「はいよ。俺は、宿の方へ戻るぜ」
ソナタの言葉に、手をひらひらさせつつ出ていく。
「じゃあ、掃除をパッとして次の人には……」
「俺が、小躍りして楽しんでもらうか?」
「おー、出来るもんならやってみなさい」
私が、なに言ってるんだかと挑戦的に言い放つ。
すると、ドロンはにやりと笑うと、等身大の私たちのフィギュアを召喚してダンスをし出したので、絶句する。慌てて猫たちが壁際に逃げる。
「止めなさーい!」
私とサーナちゃんの雷が落ちたことは、言うまでもない。
次の日の朝。私たちは朝早くギルドの前にいた。寒くてベッドに潜っていたいものの、約束したのだから起きないとね。あんずが不満そうだった。
まだ、早い時間帯なので人通りも少ないけど、冒険者たちは集まって来ている。
「おう。朝から悪いな」
ギルドに入るとゲインが挨拶してくる。
「いいってことよ。あなたが立ち直って、この街の依頼をこなせるようになれば、私は安心して旅立てるってね」
「そうそう。俺よりも強くなれよ」
「どっか行くのか?」
ドロンの言葉は、スルーしてと。
「ま、その話しは後で。依頼を受けましょ?」
「ああ。サーナちゃんは、どれがいい?」
「……どれでもいいです」
サーナは、朝から不機嫌です。うつむいてブスッとしている。
なにかあったのかと私を見てくるけど、肩をすくめることしか出来ない。
「駄目だ!そんな危険な依頼にお前を行かせる訳には行かん!」
「どうしてよ、お父さん!私は、冒険者としてもやって行けてるでしょ!」
昨日のあの後。夕食の席でギルドの依頼のことを伝えたら、思いっきり反対されたのだ。サーナは、怒鳴らて。昭和の親父かよ。
でも、普通の親だったら反対するよね。闇ギルドだよ。私だって関わりたくないんだけど。
でも、よくよく考えたら、ああ言うとこって仕返し怖そうなので、依頼を受けた方が良さそうかなと思った。
私は、一人ならばどうとでもなると思う強さだと思う。天狗になってないよ。
「うう。マキちゃん~!」
あう。そんなうるうるした瞳で見られたら断りにくいけど。
私は、しゃがんでサーナを見る。
「今回は、ここにいた方がいいと思う」
「!マキちゃんまで……」
「にゃん」
「あんずも?」
傷ついたような表情なサーナ。しかし、相手が相手だしね。
連れていくのはいいとしても、危険だしね。そんな危ない仕事はさせられないよ。
「必ず帰って来るから、ね?」
「………うん。必ず帰って来てよね?」
抱きついて来たので、ギュッとして上げる。サーナと別れるのは寂しいなと思うなんて。
無関心から、関心事が増えて来たってことかな。
依頼の提示版を見てると、マナが胸を弾ませてやって来る。
「ご、ごめんなさい!お寝坊しましたの!」
マナの見事な胸の揺れに、冒険者たちは提示版よりもそっちの方に釘づけみたいだ。全く、男って奴は。
「凄いなマナ。お前が一番だ!」
「?はぁ……。ありがとうございますの?」
首をかしげた後にゲインに挨拶するマナ。
「ドロンさん、失礼だよ」
かりんが、たしなめるがこいつはもう注意しても駄目だろう。
「はいはい」
ほらね。マナも苦笑してる。
「よろしくな、マナ」
「はい。でも、あのふざけた格好は止めたのですか?」
「……………」
マナ、言い過ぎ。ゲインは、ヘコんでるよ。
「あれは、ぬいぐるみ使いとしての正装なんだよ」
ゲインは、苦虫を噛み潰したように提示版の方を見直す。
今回のゲインのリハビリのことを、みんなには、話している。
あの地下での戦いで仲間を失って、傷ついたのだからもう少し休めばいいのに。
しかし、依頼をこなさないと生活が出来ないから仕方ないのかもしれない。
「これなんか、手頃じゃないか?」
ドロンが一枚の提示版を指差す。なんかめんどそう。
依頼 ピーナ村の村長
スイスイバードの退治もしくは、追っ払う
報酬 銀貨5枚
スイスイバード?なんだろう?泳ぐのかな?
「かりん、知ってる?」
「水色の鳥型の魔物ですね。スイスイと空を泳ぐように飛ぶことからそう呼ばれていますよ」
「倒すのは、かえってめんどそうね」
「ですね。動きが素早いですが、人を襲うほど凶暴ではないはずなんですが……おかしいですね」
かりんは、小首をかしげる。ハリィもかりんの肩で一緒に首をかしげている。かわいい。
「まあ、ともかく行ってみようぜ?ランクAとかSの依頼じゃあるまいし、なんとかなるって」
「こいつは、気楽な奴だな」
ゲインは、呆れるように言うよ。そうだよ。ドロンは気楽なんだよ。
クインさんのとこに行って、依頼を受理する。
「ゲインさん、気をつけて下さいね。もちろん、皆さんも」
「おう。気をつけるわ」
「あ、クインさん。エアハルトさんいます?」
「はい。奥にいますけどちょっとお待ち下さい」
奥に行って暫くしたら、戻って来るよ。
「どうぞ。お会いになるそうです」
「はい。私、ちょっと行ってくるね」
奥の部屋に行くと、エアハルトが事務仕事をしていた。
「……サボって迷いの森で、日光浴したいなあ……あ、マキ」
少し、慌ててる。今のぼやき聴こえてたけどスルーしよう。
立ち上がりソファを進められる。
座ると向かい側に座りにこやかに話し出す。
「どうだい?ギルドからの指名依頼を受けてもらえるかな?」
「はい。このままほっといたら、私たち、狙われそうだしね」
「そうだ。あんな奴らは殲滅すればいい」
静かそうに見えて、激しそうな人だね。そして、机から一枚の手紙を持ってくる。
「これは?」
「僕からの紹介状だ。向こうのギルドに見せるといい」
「はい。分かりました」
それを、制服の内側のポッケにしまうと立ち上がる。
「………後は、任せたまえ」
「はい。お願いします」
エアハルトの言葉に察する。部屋を出てみんなのとこへ戻ると依頼へと出掛ける。
「…サーナ。仕事だからシャキッとして。依頼を受けて報酬をもらう以上は真剣にね」
「……うん。分かった」
サーナは、自分の頬をぺちぺち叩くと気持ちを切りかえる。
「ピーナ村って誰か、知ってる?」
「俺が知ってるから大丈夫だ」
ゲインは、軽く応える。取り敢えず馬車を借りないとね。
つづく




