けんか.8
私が街中を駆けていると、呼び止められる。あ!クインさん?
「マキさん、どうしたんです?そんなに慌てて」
カフェテラスの席で、お茶とケーキのセットがテーブルに置かれている。うう。美味しそうじゃなくて。
「あ、あの。サーナちゃん見ませんでした?」
「いえ、今日は……もしかして」
なにか思い当たるのか顎に手を当てて考えている。
そして、心配そうに顔を上げる。
「あの、ギルドでの依頼なんですけど……」
「うん?なにかな?」
この流れは、嫌な予感がするんだけど。
「……!ごめん、私行くね!」
駆け出しながら、念じる。猫たちに。スキル、猫たちとの意志疎通。オートスキル。猫使いである限り、自動で発動する。
人混みが少なくなると、私は更に加速する。長距離ランナーのスキルがあってよかった。ヘルメスブーツとのWで疲れない。
「あ、おい、マキ!?」
ドロンに呼び止められた気がするも止まらない。
「にゃん」
屋根の上で呼び掛けて来たのは、くさもち?うん。案内お願い。
アイコンタクトで合図して駆ける。
サーナの視点
「ホウ」
「ここに、なにかあるの?」
フクちゃんに案内されて来たのは、街の路地の先にある一軒のお店。酒場?躊躇いながら開けようとすると、いきなり声をかけられたよ。
「てめー、なにこそこそしてんだ?」
「わわ!こ、これは、その!」
「ホウ」
あれ?よく見たらこの人マスオさんです。マキちゃんが言っていました。
金髪のムキムキの中身スカスカとも、行っていました。
「あ、あなたマスオさん?」
「マスオじゃねぇ!おめぇ、あの親父受けする女の知り合いだな?あの宿屋のガキじゃねぇか。丁度良い!」
手をつかまれて中に押し込まれました!
「きゃっ!」
中は、酒場だったけどあまり使われていないのか、埃をかぶっているよ。そして、怖いと感じたのは、ガラの悪い人が何人かいたよ。
「ヒヒヒ!マスィータ、なんだそのガキ?上玉じゃねーの?」
ナイフに舌を這わせてこちらを嫌な目で見てくる変態さんです。
「ろ、ロリコンですか?」
「ちげーよ!けど、そう言ったイカれた貴族様に売り払ってやろうかなヒヒヒ!」
この人は、この人でおかしな人なんですね。
他にもムキムキな人がいます。カツラがずれてるけど教えて上げたほうがいいかな?
それと、モヒカンみたいな人がいる……手、あれ?あの人!
声を上げようとして目で合図されて、慌ててお口にチャックだよ。
「どうした、モヒータ。そのガキが可愛いのか?変態め」
「いや、なんでもない。妹に似ていたのでな」
モヒータ。ぷ。噴き出しそうになって慌てて堪えるよ。
だって、偽名が変な名前なんだもん。コッセルさん。
マキの視点
「……おかしい。こっちでいいの?」
「にゃん?」
くさもちもなにか、くんくん匂いを嗅いでいる。
この辺にサーナちゃんの匂いが途切れているのかな?
きょろきょろして見ても、行き止まりみたいだよ。
もう少し探してみようか……ん?あんず。
あんずが、とてとてと細い路地に入って行くと振り返る。
「にゃん」
かわいい。じゃなくてついて来いってことかな?
塀をとてとてと歩くくさもちと前を歩くあんず。その後に続く私は、すぐに行き止まりに突き当たる。
「薄い。私のことをナンパしてきた人くらい薄い壁よ」
コツコツと叩いて見るとそう感じる。すると、向こうからもコツコツコツと返事がある。
もう一回叩いて見ると、また、コツコツ。
コツコツコツコツ。
ココンコンコココココン!
「なによ、それ!」
「ふべべっ!」
あ。思わず扉を蹴ったら、変な呻き声が聴こえたよ。
そのまま薄い壁が、向こう側が倒れる。なんだろ?
「そ……そんな……壁が熱い抱擁を求めてくるとは……な」
「ドロン!?どうしたのこんなとこで!?」
地面にペタンと寝ていたのは、ドロンだった。どうしてそんなとこで寝ているのか。
頭をふりふり、薄い壁を退かして立ち上がる。
「お前が、スカートをヒラヒラさせて行くから、注意してやろうと思ったんだ」
「ええ!?」
まあ、普段着のスカートの丈が短かったかな。
もっと、気を付けないと行けないな。チラチラ見られてたかと思うと恥ずかしいな。恥ずかしい。
いや、そんなことよりも今は、サーナちゃんを、助けに行かないと。
私が、駆け出すとドロンたちもついてくる。
「待て待て、どこ行くんだ!?」
「この先に、サーナちゃんがいるかもしれないの!」
「ええ?こんなスラムっぽい場所にか?」
確かに、駆けながら見わたせば、家が古かったり、外にいる人たちの服装がみすぼらしかったりしている。
「いひひ」
「えへへ。待ちな、じょーちゃん」
「なによ、あんたら?」
柄の悪そうな奴等に取り囲まれる。めんどくさそう。
「綺麗なおべべ着てるじゃねーの?」
「高く売れそうだな~?この場で脱ぐか、俺っちたちにひんむかれるかどっちか好きな方を選びな!」
ドスを効かせたようだけど、今までの相対した敵に比べれば、役不足だよ。
しかし、この制服は上等な生地で作られているから、こういう場所に来れば、狙われるのは仕方ない。
「今は、忙しいので失礼します」
「待ちなよ、ひひひ!」
ひひひって笑う人初めて見たー。スケベな目で私の足を眺めてる。
「ひゃ~、こいつは上物だ!貴族様に売れば、しばらくは飯もまともに食えるぞ~!」
どうしてこんなのばかり、からんでくるのだろうか?
ステータスウインドウを見ても、エロい奴を惹き付けるスキルはない。なおのことたち悪いな。
「はは。マキマキ、モテモテで羨ましいな」
「ドロン、怒るよ?」
「おっと、冗談さ!冗談!」
「フウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
猫たちも、毛を逆立ててならず者たちを威嚇している。
「おお、怖い怖い!俺っちたちは、モノホンのごろつきさ!」
「猫が怒ったくらいで、かわいいと思っても、怖いとは思わないぜ!」
そりゃ、そうでしょ。なに言ってるのこの人たち?
つづく
スラムの猫たちも、あんずとくさもちに威嚇してたけど、猫使いがいることが分かって、猫同士仲直りしたんだよ。
その後で、猫たちでごろつきを引っ掻いたんだよ。




