オイルトテス.7サーナ視点
私は、生まれた時から周りからちやほやされていたんだって。
ママもそうだったとパパが教えてくれたの。
確かに、お店に行けばおじさんやおばさんがお菓子やあめ玉をくれるし、私に告白してくる男の子もいる。なるほど。かわいく振る舞えばちやほやされるのね。
それは、時が立つほどに分かってきた。
まるで物語のヒロインみたいにみんなに優しくされてそこに笑顔の花が咲く。
そんな幸せで充実した毎日が続くものだと思っていた。
でも、調子に乗ってた。教会では、経済的に弱い人のために毎日ではないけれど、文字の読み書きを教えていて、子供たちが通っているんだけど、そこで男の子や神父様にちやほやされると、他の女の子たちにいじめられるの。だから、謙虚に相手を立てることにしたの。
いいんだ。私は一番になりたいとは思わない。でも、女のスキルは磨いといて損はないから、薬師さんに知識を学んだり、家のお手伝いをしたり。料理炊事洗濯も頑張る!宿屋を大きくしたいなって思うんだ。
そして、貴族の素敵な人に見初められて玉の輿……て、考えてもいたんだけど、ある日その人は現れた。
マキさんだ。宿屋に入って来た時からのあのクールさ。かおちっさ!背はそこまで高いわけでもないけど、出るとこ出てるし、私のかわいさとは違う。綺麗って言うのかな?
珍しい制服着てるから、王都の学生なのかな?近所のおじさんが制服はいい。制服はいいとよく呟いているから。確かに可愛い。憧れちゃう。でも、マキさんは学生さんではなくて、旅人なんだって。凄いな、女性の旅人なんてかっこいい。
朝起こしに行った時のマキさんは、猫に満面の笑みでじゃれているから可愛い!猫も可愛い!マキさんも可愛い!いつものクールな感じとのギャップ!
マキさんには、冒険者に興味があるみたいでギルドを紹介して上げたよ。凄いな。あのムキムキで怖そうなな人達の中を恐れないで入って行けるんだもん!素敵過ぎる。
私も物怖じしないで行動出来るかな?
冒険者登録する時にマキちゃんにお願いしちゃった。薬草を取りに行くの。それを、薬師さんに渡せばお金になるし、薬の知識も教えてくれるんだ。優しい薬師さんなんだよ。
出掛ける前に宿屋に戻って私は準備を整えてから、門の出入り口へ。
パパに反対されるかと思ったけど、パパは私に甘いからね。上目遣いが効果的だよ。
いつも、ビスケットをくれる門番のライルさんに挨拶して街道へ。
その甘いバターの味は心を明るくしてくれる。
でもお子さんに上げるものじゃないのかな?大丈夫?
「下がってて」
マキさんは、私を守るように前に出るといつの間にか出てきたのか、スライムを一蹴り。
「わぁ!すごーい!」
あんなねばねばしてるのを蹴っ飛ばしちゃうなんて。遠くまで飛んでちゃった。うん、凄いんだね。でも、マキさん。下着が見えてるよ。白。きれいな白。
街道を外れて薬草のある場所で、夢中で薬草を採取。手慣れてるでしょ。他にも毒消し草や麻痺消し草の原料など。
マキさんはその間にも、嬉々として襲いかかってくるスライムやウェアウルフたちを無駄のない動き?それで倒していく。後、足細くて綺麗!
その後は、休憩してご飯。焚き火してとウェアウルフのお肉のステーキと持って来た野菜を炒めるだけ。
こんなことなのにマキさんは、褒めてくれるから優しくて好き。
初めて会った時はクールだったけど、それだけじゃなくて優しく微笑むの。こんなお姉ちゃんが欲しかったなー。
「うん。美味しいよ」
シンプルな感想だけど、私の作った料理もちゃんと褒めてくれるんだもん。作った甲斐があるよ。
あんずも美味しそうに食べてくれますね~。その後称号や仕事について聞かれたので、私はよく森に来るからモリガールにしたんだみたいなことを話した。
モリガールはモリモリしてる人のことじゃなくてエルフみたいに植物の力を借りて魔物を倒したり自分の身を守ったりするんだよ。
目的も果たしたので帰ろうとすると大きな地鳴りがしたので、これはと思って駆け出したの。
マキさんに呼び止められるけど、わくわくが止まらない。
そこにあったのは、ダンジョンの入り口。地震や雷と同じく自然発生するそのダンジョンは、お宝と危険がいっぱい。
これは、チャンスだよ!玉の輿もいいけど、一攫千金の冒険者になってお宝発見すれば、パパを楽にさせて上げられるもん。
それに、ほとんどないことだけど、私が生まれて間もなくダンジョンが、冒険者たちが攻略で潜ってる時を狙って中から魔物が出てきて暴れたことがあるの。
街の真ん中に発生したことがあるんだ。街に詰めている兵士たちだけではどうにもならなくて。その時にママは……。
だから私は、ダンジョンを攻略したい。お金もそうだけど。敵討ちみたいなものもあるから。
だから私は、マキさんにお願いしたの。護衛の依頼を。
マキさんは、驚いていたけれど快く引き受けてくれた。
後は、ギルドで依頼してダンジョンのこと話したら、びっくりされて。近所のおじさんに制服はいい。制服はいいと言われたよ。なんで私を見るかなー?そんなに似合う?
次の日は、準備を整え武器防具店でマキさんが装備を買ってくれるなんて。いいのかな?私は依頼者なのに。可愛いデザインのエプロンを手に取ったら、マキさんが頬を赤くしながら棚に戻したけど、変なの?
赤くなったマキさんは可愛いけど。
「これなんか、どうかな?」
「え?それ、可愛すぎませんか?」
普段は、朝から晩まで動いてばかりだから、動きやすい服装ばかりなんだけどこれは、フリフリ?ビラビラみたいなのがついてて、お出掛け用だよねー。
「ほう。よくぞその服を見つけた」
店主が、うんうんと頷きながら涙している。どうしたの?
「サーナちゃん、離れて。この人ロリ……」
「違うわ、綺麗なお嬢さん!これは、俺がサーナちゃんをイメージして作った服だ!ただ、これを誕生日にサーナちゃんにプレゼントしたら、変に思われるから、そこにかけておいたのだ!」
「わ~い!おじさんありがとう!」
私は、おじさんの気持ちが嬉しくて抱き着いた。
「喜んでくれて良かった、良かった」
「……私が言い過ぎたわ、ごめんなさいおじさん」
「いいんだ。サーナちゃんを見ると、実の娘の小さい頃を思い出してな~」
あのゴツいお姉さんのことかな~?優しいお姉さんだったのはなんとなく覚えてる。ともかく試着して見よ~。
サーナちゃんの装備
ブエラの杖STR+3 SP+10
かわいい服DFF+8魅力アップ
皮のくつDFF+5
ハートのペンダントDFF+3 魅力アップ
マキさんの前で、くるりと回ってみる。
「えへへ。どうですか?似合ってます?」
「うん、素敵。どっかの魔法少女みたい」
「魔法少女?」
分からなくて、小首をかしげる。あ、魔女さんのことかな~?女性の魔法使いがクラスチェンジしたら、魔女になるって話しだよね。
「うんうん。おじさんよだれ出そうだよ」
「それ、やばいよね」
マキさんが、引きながら私をかばう。おかしくてクスリと笑ってしまった。働いてばかりだったから久々に楽しい気分だよ。
「そんな可愛いかっこして盗賊にに狙われないか?」
「大丈夫だよ。私が守るから」
「にゃう」
門のとこでライルさんに心配されながらも外へ。マキさんとあんずに守ってもらえるなら心強いよね。
いつもの薬草摘みとは違うから。ドキドキするな。
街道の遥か彼方には、この国を治める王様たちが住んでいる王都があるんだって。
生まれたばかりの頃はそこに住んでいたんだって。記憶にないけどね。
パパに反対されるかと思ったんだけどマキちゃんと一緒ならOKだって!
あ、街道の向こうに馬車かな?隣街に向かうのだろう。
さ、気を引き締めて行かないとね。
つづく
サーナちゃんはみんなに好かれているけど、街の代表の娘には嫌われてるらしいよ