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エルフの依頼.6

のんびり街道を進んでオイルトテスに帰りつくと、門番を押し退けるように出てきたのは、エメラルドとガーネット。どうしたの?私に会いたかったの?違うよね。

「おいおい、許可なく外に出ては駄目だろう?」

「うるさい。でくの坊はたっていればそれでいい」

きっつー。エメラルド、きっつー。門番は、へこんでへたりこんじゃったよ。ちょっと、咎めただけなのにね。

「兄さん、言いすぎよ!門番だって、立派なお仕事です!」

ガーネットさんは、エメラルドを嗜めながら私達の元へ来るよ。

「ふん。遅いではないか。配送人はどこだ?」

「わ、私ですが……」

あ~あ。ツンツンしてるから、完全にビビっているよ。

私が庇うように前に立ちふさがり話しをすることにしよう。サーナちゃんも私の背中に隠れているし。あんずは威嚇してるし。どんどんやって。

「なんだ、制服生娘。遅れたことへの言い訳か?」

裏拳が出そうになったけどこらえる。うん、私は大人です。

「お二人してお迎えですか?」

「荷物が心配なだけだ、小娘」

ふん。別にいいもん。あなたに好かれなくても。んべー!

「あかんべえなんてしちゃ駄目だよ?」

ごめんね、サーナちゃん。なぜかこの世界では、相性悪い男の人が多いの。でも、猫たちは帰りを待っていてくれたのか門からぞろぞろ出てきては、すりすりしたりあんずとじゃれあうのを見てほっこりする。

「……なんだ、この猫は?」

「マキさんになついてますね?」

門番とガーネットが目を丸くしている。そうでしょ、そうでしょうとも。見たことないでしょ。

「マキちゃん、猫使いなんだよ」

「なんだと!?」

荷をチェックしていたエメラルドが、血相を変えてサーナちゃんに近づく。めっちゃ顔が近くてサーナちゃんびくっとしている。

「おい!みんなのサーナちゃんを怯えさせるんじゃない!」

いいぞ。門番捕まえちゃえ。なんて、不謹慎でごめんね。

「この人間が、あの猫使いだと言うのか!あの!」

「……ちょっと、キス出来る距離でなに話してるのよ」

私が指摘すると慌てたように離れるエメラルド。サーナちゃんとキスしていいのは、爽やかイケメンだけだからね。いや、こいつもイケメンなのかな。

「……相変わらずだな、エメラルド」

それは、兵士に連れていかれようとしている盗賊たちの中から聞こえた。


「……トパーズ?トパーズじゃないか?なにをしてる?」

「うそ、トパーズ!元気だった?」

二人は、同郷に出会えて慌てて駆け寄るも睨みつけるトパーズは、言い放つ。

「来るなよ、森を捨てた奴等が!」

「……なにを!?」

「どうしたの、トパーズ?」

戸惑う二人に刺々しい言葉をぶつける。それは、悲しみの宿る言葉で、人間どもが森を焼いて、エルフの故郷を奪い、その森を捨てたエルフを許さないトパーズ。


「………私達を恨んで、荷物を奪ったの?」

悲しげな表情。トパーズは、苦しそうに顔を歪める。どこの世界も悲しいことが多いよ。ああ、もっと呑気に散歩とかアウトドアを楽しみたかったのにな。


「俺たちは、あの森を見捨ててないぞ」

「なにを!?」

「洋菓子店で稼いだお金で、植物の苗を買って、植えているのよ」

「な……んだと!?しかし、そんなことしても、何百年かかるかわからない」

エルフたちの話し合いを聞きながら、アイテム袋を開く。前に調べた時に超高級傷薬の他にもステータス異常を回復するアイテム。そして、その中でこんなのもある。それを取り出すと、ガーネットに渡す。

「……あの、良かったらこれ使って」

「……これは?」

「いや、まさか」

エルフたちがなにやらびっくりして、まじまじと見ている。うん、やっぱり貴重なアイテムだったんだ。


成長促進剤―様々な生命の成長を促す貴重なアイテム。使えばレベルが多く上がる。


説明文を見るとそう書いてあるよ。でも私は、こんな方法でレベル上げたくないし。別に、無理に強くなる必要はないからね。エメラルドはムカつくけど、森のためならやむなしかな。


「え?これ、譲ってくれるの?」

「はい。まあ、植物にどれだけ効くか分からないけれど使ってください」

「あ……ありがとう、マキさん」

大げさだな。抱きついてまで泣いて。そしたらなんか、トパーズも膝をついて泣いていて。盗賊たちだけが連れて行かれる。

「私は、お前たちだけを憎むだけ憎んで……森を再生しようと思わなかった……」

「泣いてる暇あったら、立って出来ることをしよう。男の子でしょ?」

「マキちゃん、鬼?」

「そう?」

もしかしたら、冷たい家族の中で育てばそうなるのかもしれない。

だからだろうか。仲の良い友達とかがいるのに、甘えてるのを見るとイラッと来てしまうのは。でも、サーナちゃんには甘い。だって、かわいいんだもん。



その後分かったのは、トパーズはエルフの兄妹を憎んで、売り上げ低迷な和菓子店にそそのかされて、洋菓子店を困らせようと画策したんだって。味で勝負してよね。


「ホントにありがとう」

「ふん。薄汚い人間に礼を言ってやる。ありがとうよ」

ここは、エルフの洋菓子店です。甘い匂いがするよ。意識を向けると食べたくなっちゃうから我慢しよ。

「はいはい。んで、なんであなたの森は焼かれたの?」

報酬の銀貨より嬉しいお菓子の詰め合わせで機嫌がいいから受け流す。その言葉にピリッと空気が変わるよ。あ、まずかったかな。

「……それは、知らん」

一瞬、サーナちゃんをチラリと見たあとそっぽを向く。ん?なにか隠してます?

「とにかくありがとう!これは、お礼だから」

ガーネットが差し出したのは、お菓子詰め合わせの箱。

サーナちゃんが、嬉しそうににこにこしてるよ。いいけど、食べ過ぎないようにしなきゃ。後は、報酬のお金の方はギルドで受け取れるとのこと。帰りに寄ればいっか。

「それで、あのエルフのことはどうなるの?」

「トパーズのこと?あの人は、牢屋で裁きを待ってる途中よ」

「まあ、何度かうちの荷物がやられているが、奴が罪を償って出てきたらうちの店でこきつかってやる」

「ふ~ん」

「……なんだ、小娘?」

「同族には、面倒見がいいと?」

「うるさい奴だ。仕事が忙しいから帰れ!」

ホントだ。さっきまでいなかったのにね。もしかして、サーナちゃんの看板娘の効果で、客足が増えたのかな?まあ、いいや。

「それじゃあ、また」

何度も礼を言うガーネットとは違いエメラルドは、そっぽを向いたまま。

「おい、お前」

今度は、お前かー。なんだよ。私が振り返るとそっぽ向いたまま呟く。

「……貴様のことは少し見直したぞ、マキ」

………やっと名前で呼んだね。ちょっと、嬉しいかも。



つづく


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