絶対に邪魔しない!
それから数週間後。
以前のように私はユーリ様からお茶に誘われなくなった。
学園の噂ではアマリアを助けたユーリ様は彼女と友人になり、常にユーリ様と行動を共にしているとのことだった。
元々アマリアは学園の庶民の生徒だったらしい。
(でも、まぁ…それって『設定』なんだけどね…)
小説の中での彼女はユーリ様と結ばれたい為、魔法で人間になって、努力して学園に入っていた。
自分の想いを叶える為に。
周りではユーリ様が私からアマリアに乗換えして彼女を婚約者にするかもしれないって言われているけど、そんなこと望むところよ!
むしろそれで良い。
私は満足だから。
「あとは…はやく婚約破棄してもらった方が、こっちとしても嬉しいのだけど…」
一人廊下を歩いている時、突然声を掛けられた。
「ゴーダニ嬢」
「あら、レオン様」
振り向くとそこにはユーリ様の従者であるレオ様がいた。
黒髪に黒い瞳、眼鏡を掛けた絵に書いたような真面目で冗談が通じない。
特に同じ伯爵家で兄弟である遊び人の彼に対しては馬が合わないのか、嫌いなのか人一倍厳しく、ユーリ様を遊びに誘うと容赦なく、兄に向かって塩を掛けまくっている。
それ以外は比較的に仕事も出来て、常に王子であるユーリ様のサポートに徹している。
「これ、先生から頼まれた書類です」
「ありがとうございます」
レオ様から差し出された書類を受け取った。
(ああ…今度行われる音楽祭の書類ね。私も受けるように言われていたんだっけ…)
「ハルカ様。このままで良いのですか?」
「えっ…?」
「いま学園で噂になっているアマリア様のことですよ。ここ最近、王子はアマリア様のことばかり優先されて、ハルカ様とは会おうとしない。ハルカ様が王子の正式な婚約者だというのに…」
レオ様は私に対していたたまれなさを感じて言ってくれている。
私が悲しんでいるのだと思って心配しているのだろう。
「大丈夫ですよ。王子の気持ちは王子が決めるもの。私には口を挟む権利はありません。それにあの方に愛した人がいれば私はいつでも身を引きたいと思っていますので…」
「しかし、今まであなたは王子の婚約者として立ち振る振る舞い、王子のサポートをしていたではありませんか。俺はあなた以上王妃に相応しい女性はいないと思っています」
「大丈夫。私以外にちゃんと相応しい人が現れますよ」
レオ様に私はふわっと優しく微笑む。
ユーリ様の隣はアマリアが相応しい。
これは揺るがない事実だから。
レオ様はお堅いけど、いつかは分かってくれるはずだ。
「そんな…」
「では、失礼しますね」
そう言って私はその場を後にした。




