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私の目的地は
31.お人形
彼のことが好きだった。
喜んでもらえるならば、と彼の望みに出来る限り答えた。すると彼は笑ってくれて、私も自然と笑顔になれた。
いつからか、私は彼のお人形のように、彼の望み全てに応えるようになった。彼は笑ってくれた。
その笑顔が好きだった筈なのに、私はやがて上手く笑えなくなっていった。
32.目線の先
特定の場所には、彼との記憶が染みついている。
ふとそこを通ったときに蘇って、その幸せが今この手にないことを痛感し胸が苦しくなる。
彼の面影が視界にちらついて、しかし目を凝らすと実際に彼がいるわけはなく。
「おーい!」
友に呼ばれて走り出した。
彼が同じく、私の面影を追っているとは知らずに。