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魔族に育てられた聖女と呪われし召喚勇者【完結済】  作者: 一色孝太郎


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第37話 ヒューバート町長

 衛兵さんの詰め所で簡単な事情聴取を受けた私たちは馬車に乗り、とても豪華なホテルの二部屋を提供してもらった。


 なんでもこのホテルは町一番の高級ホテルだそうで、私たちの格好は場違いなのではないかと心配になってしまうほどだ。


 もちろん宿泊費も相応で、この部屋に宿泊するとお店のひと月分の売上が飛んでいくことになる。


 そんなホテルに泊まれた幸運に感謝しながらゆっくりしていると、なんとこの町の町長が尋ねてきた。


「ホリー様とニール様、本日は住民の救助にご尽力いただきありがとうございました。私はシュワインベルグの町長をしておりますヒューバートと申します」


 ヒューバート町長はピッタリと体にフィットした濃い色の燕尾服に淡い色のズボンとウェストコート、白いシャツとクラヴァット、そして背の高いブーツという典型的な紳士の服装をしている。


 対する私たちは質素な普段着なのでちょっと恥ずかしいが、失礼な対応をする訳にはいかない。


「ホワイトホルンから来ましたニールです。衛兵をしています」

「薬師のホリーです」

「どうぞお見知りおき」


 ヒューバート町長は流れるように私の手を取り、手の甲にキスを落とす仕草をした。


「本日はお二人にお礼を申し上げに参りました。どうぞ、楽になさってください」


 ヒューバート町長はとても紳士的にそう言ってくれるが、私としてはそれどころではない。


「ではヒューバート町長閣下、どうぞおかけください」

「ありがとうございます」


 ニール兄さんがなんとか着席を促してくれ、私たちもようやく座ることができた。


「ところでホリー様」

「はい」

「ホリー様のことはですね。実はエルドレッド殿下よりお伺いしていました」

「え? そうなんですか?」

「はい。人を癒す奇跡の力をお持ちで、大変な勇気と人を救う決意をお持ちの類まれなる女性であると」

「え、そ、そんな……」


 突然そんな風に褒められ、私は恥ずかしさで顔から火が出たかと錯覚しそうになる。


「私は今回のことで確信いたしました。エルドレッド殿下の仰っていたことは誇張でもなんでもなく、事実だったのだと」

「あ、あの……?」


 ヒューバート町長は何を言いたいんだろうか?


「おっと、失礼いたしました。ところで衛兵たちよりお二人はキエルナへ向かわれるご予定で、馬車のチケットが入手できずに困っていると伺いました」

「はい、そうですね」

「それでしたら、ぜひ我々にその旅のお手伝いをさせていただけませんでしょうか?」

「……どういうことでしょうか?」


 ニール兄さんがやや疑っているような表情で聞き返す。


「はい。今の状況ですと馬車の予約は相当難しいかと存じます。そこで、もしよろしければ今回のお礼も兼ねてキエルナまで魔動車でお送りいたしたいと思っておる次第です」

「えっ? 本当ですか?」


 私はつい聞き返してしまった。


「もちろんでございます」


 ヒューバート町長は紳士的な微笑みを浮かべたままそう答えた。


「あ、でもわざわざ私たちのためにそんな貴重な魔動車を……」

「いえいえ、実はそうでもないのです。と申しますのも、我々はキエルナの造幣局に用事がございまして。それでちょうど明日、出発する予定だったのです」

「でも……」

「造幣局へは職員が二人で向かう予定なのですが、魔動車は四人乗りなのです。つまり、二人分の空席があり、人を乗せても乗せなくても変わりません。いかがでしょうか? 我々としてもついでですので大した負担はございません」


 なるほど。それならお言葉に甘えるのもいいかもしれない。


 私がニール兄さんのほうを見て頷くと、ニール兄さんも小さく頷き返す。


「わかりました。じゃあ、お願いしてもよろしいですか?」

「もちろんでございます。私としても恩返しができて何よりでございます」


 こうして私たちは魔動車に乗せてもらい、キエルナへと向かうこととなったのだった。

更新は毎日 21:00 となります。

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