表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/24

迫害された村

 俺たちがこちらの世界に来てから既に二日が経過した。日本人にとって死活問題ともいえる風呂の問題は、結構水場が多くあったため意外と簡単に解決した。ちなみに木内が水浴びしている間、紳士の俺は一切覗く素振りすら見せずじっとその場に座っていたのだが、水浴びを終えた木内に自分にはそんなに魅力が無いのかとキレられた。理不尽極まりない。


 が、他は特に問題らしい問題は一切起こらず、相変わらず俺たちは道中のモンスターを軽くあしらいながら旅を楽しんでいた。


 しばらく歩いていると木内が何かに気づいたらしく、


「あれって村じゃない!?」


 そう言って指をさす。見てみると確かに家のようなものがいくつか点在しているのが見える。


「地図には書いてねぇけど……。行ってみるか」


 プラン通りに動かないのも旅の醍醐味と考えた俺たちは、とりあえず村に立ち寄ってみることにした。





 あれから三十分くらい歩いてようやく村に着いたが、いざ入ってみるとそこに住む人からは生気がまるで感じられなかった。


「なんかあったのかな。ちょっと私聞いてくるね!」


 そう言い残すと一目散に村人に突進していく木内。取り残された俺はため息を一つつき、仕方なくそのあとに続いた。


「村の外から来た子たちかい? 悪いことは言わない、早くここから立ち去りなさい」


 事情を聞いただけなのに、聞いた先の男からいきなりそんな答えが返ってきた。この時点で明らかに面倒なことになりそうな匂いが漂っていたので、俺としてはさっさと頷いてこの場から去りたかったのだが、当然木内の性格からしてそんなことを許容できるはずもなく、


「何かあったんですか? 私達でよければ力になりたいのですが」


 彼女は真っ直ぐ背筋を伸ばしそう答えた。おっさんは一瞬正気を疑ったのか目を見開いたが、木内がいたって真面目に言っていることが分かったようだ。こうなってしまうともう俺に逃げ場はない。諦めて腹をくくった俺は話を先に進めることにした。


「あの、俺のレベルは33、コイツのレベルは16ですし、ひょっとしたら何かお役に立てるかもしれません。もしよろしければ何が起こっているのかお話ししていただけないでしょうか?」


 俺がそう言うと男は目を見開いた。予想通りこのあたりのモンスターをソロで簡単に狩れるほどの実力はないようだ。俺たちが転移の加護を持っている時点で当たり前と言えばそれまでだが。


「わかりました。あなた方のお力を見込んで頼みがあります」


 男はそう前置きし、事の次第を話し始めた。


 事の発端はここを支配している国の税徴収が苛烈を極めたことにあるらしい。まぁ要するに無能な王様が税金吊り上げて民の負担を重くしたということだ。ありがちな話である。で、ここからもまたありがちな話が続くが、その国の王は税を納めなければこの村を迫害すると言い出したらしい。まさにテンプレ愚王、ここまで来るといっそ清々しい。当然村にそんな余裕はないが、納めなければ明日にはこの村への迫害が始まるそうだ。


 それなら逃げればいいじゃないかとも思ったが、村には病気の人もいれば女子供もいる。全員引き連れて大移動は出来ないと、彼はそう言っていた。実際ある程度の衛生は保たれているとはいえ、医者がいるわけでもなさそうだし一度病気になってしまうと治すのは簡単ではなさそうだ。それに仮に木内の持つヒーラーの能力で完治させたとしても女子供を連れた移動という点をクリアできない以上、どうにかして襲撃者たちを撃墜するしかない。


 と、そこまで考えて一つだけ気になることが出てきた。


「あの、一つお聞きしたいのですが襲撃者は今どこに? 明日から迫害が始まるってことは結構近いところにいますよね?」


 いくらなんでもこれから迫害するという連中がまだ国を発ってないなんてはずがない。それにここの村人たちが逃げないようにと多少なりとも監視をしているはずだ。


「あ、はい。奴らは今あそこにいます。500名ほどの兵が交代交代で、あそこから我々が逃げないように常に見張っていると……」


 言いながら指したのは前方にある山のど真ん中辺り。俺の予想通り襲撃者たちは比較的隠れやすく、かつ見張りをしやすい位置にいてくれた。後はやるべきことは簡単だ。


「今日って新月ですよね?」


 男は一瞬質問の意味を理解できなかったのか少し間があったが、


「え? あ、ハイ。確かに今日は新月ですよ?」


 ならやれる。襲撃者とこちらの練度、人数の差など簡単にひっくり返せる。


「ありがとうございます。それではこの村で戦えそうな方を全員、集会所のような場所があればそちらに呼んでくださいませんか? 出来るだけ早く」


 俺の態度に男は怪訝そうな顔をし、


「あなたまさか戦おうっていうんじゃないでしょうね? こちらの戦力と向こうのそれでは大きく差があるんですよ?」


 そんなことは最初から分かっている。だから俺は自信たっぷりに言って見せた。


「ええ、そのまさかですよ。ですがご安心ください。俺に任せていただければ100%奴らを退けることが出来ます」


 そして俺は驚いたような表情をする男に対し、不敵に笑って見せるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ