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3億円
「うーん…風邪を治すことはできないのか」
真依子が大きなため息を吐く。
「すまんのう。ただ,不思議な力で氷枕を作ったり,おかゆを作ったりということはできるぞ」
「それって不思議な力を使う必要あるかな? それくらいの看病,普通にやってくれないかな?」
一瞬,場が凍った。
「それもそうじゃな。お嬢ちゃん,不思議な力で何かして欲しいことはないかのう?」
「えーっと…そうだ! 3億円欲しい!」
「風邪と全然関係なくないか!?」
「病める時も健やかなる時もお金が大事なの!」
「そうかのう? でも,お嬢ちゃん,わしは3億円を作ることはできん」
「なんで?」
「この国には通貨偽造罪があってのう…」
「え? 法律気にするの!? 不思議な力なのに!?」
「遵法意識が高くてすまんのう」
真依子が再び大きなため息を吐く。
「しょうがないな。じゃあ,拳銃作って。私が現代の3億円事件を引き起してやるわ」
「お嬢ちゃんはもう少し遵法意識を持ったらどうじゃ?」