005-18
わずかな口の開閉さえもなかったため、超巨大赤鬼が発した言葉ではないはず。
けれども、その声音の印象からして、若いと言うより、幼さの残る少女から問い
かかられたように感じる魁には、これまた限外なギャップの大きさにすぎず、混乱
がただただ深まっていくばかり‥‥。
そんな魁に、背後から「何~、腰ぬかしちゃっているわけぇ? 自分で鬼をマジ
怒りさせたんでしょ」と、図らずもdooがツッコんで、魁の震驚に追い撃ちをか
けた。
当然魁は弾かれたようにふり返りこそすれど、「‥‥‥‥」
泡を喰いまくって一言も出せない。
「理解を超えたら、そんなにビビりまくっちゃうものなのねぇ」
「‥‥当然だろ‥‥それより何で来ちゃってるんだよ、離れろスグッ」
そんな魁に微笑むとdooは、見上げた空には真顔を向ける――。
「あなたは誰? 海の異変を戻したのはワタシたちだと名乗り出ておくけど~、異
変を起こしたのがワタシたちだって言う、証拠はあるわけぇ?」
「ォオ、オイdooッ、何とんでもない相手にケンカ売ってんだ!」
舌を噛みそうになりながらも、さすがに魁も大きく顎を鳴らしてしまう。
「もう魁が大売出しにしちゃっているの。その魁がそんな様なんだもん、ワタシが
代わりに、売りぬけるためにガンバるしかないでしょ」
「‥‥ガンバってどうにかなるデカさかよ! 今スグ、オルカ女子のトコへ戻れっ
て。みんなでできる限り遠くへ、とにかくこの町の外まで急げっ」
「ムリムリ~。たった今、ワタシも売りつけちゃったもん」
「約束しただろっ、絶対に従うって言ったじゃないか!」
「エ~? それは魁が逃げろって言った場合だったはずぅ」
「な! 今そんな揚げ足とってる場合かよっ――」
「おまえたちぃぃ! どう見ても風体は人素族のクセして、わらわを蔑するとは愚
かにもほどがすぎるぞぉぉっ」
「アラァ。マジガチに激怒らせちゃったみた~い、魁のせいで」
「言ってろ──とか、そんな場合じゃないってのっ」
「且つは、それのみで万死に値しよう。えぇい灰燼に帰してしまえぇぇぇ!」
魁とdooの無益なイチャコチャに、憤激の横矢を喚き下した空からの声が止む
と、超巨大赤鬼の両眼がカッと黄金に輝く。
その双眸の周囲に眼球内からの熱輻射による電磁波の中でも、可視光線の放散が
急激に始まり――超大口径となる左右の瞳孔から、雷霆放射!
太い稲妻が絡み合い、渦を巻いて二本の螺旋を描く柱となった雷撃が、二人を目
がけて突き立つ!!
問答無用の猶予のなさで回避行動もとれず、ただ目を瞑り左手を翳すのが精一杯
だった魁は、それでも自分の全身が熾烈な光に包まれて、完全に直撃を受けたこと
は感じ取れた。




