第二百十八話
ヨルムンガンドが暴走した理由は単純だ。
未完成で不安定なブラックホールエンジンを強引に酷使し主砲を連射したからだ。
無理をした結果、安定性を完全に欠き暴走したのだ。
暴走したブラックホールエンジンはヨルムンガンドをあっという間に飲み込みブラックホールを発生させる。
その規模はどんどん巨大になっていく。
最初に犠牲になったのは単艦で相手をしていたエルフィンドだった。
逃げようとするが間に合わず発生したブラックホールに巻き込まれる。
「エルフィンド・・・」
俊は絶望的な気持ちでそれを見ているしかなかった。
発生したブラックホールはその規模をどんどんでかくしていく。
味方の艦隊もヴァルハントの艦隊もその発生したブラックホールから逃げるすべを持たなかった。
次々にブラックホールに巻き込まれていく。
それは他の女性陣も同じだった。
「俊・・・。ごめんね」
「俊さんと過ごせて幸せでした」
「俊。幸せになってね」
女性陣は最後に通信を送ってくるとそのままブラックホールに巻き込まれる。
ブラックホールに巻き込まれヴァルハントの艦隊も味方の艦隊も消滅してしまった。
俊が無事だったのは後方支援の為に、皆より少し後ろに布陣していたからだった。
「こんなの・・・。こんなのって・・・」
戦闘には確かに勝利したかもしれない。
だが、守るべき人を誰1人守れなかった。
「マスター・・・」
あんまりな状況に明石もメティスも声をかけることができなかった。
俊のすぐ後ろから声が聞こえる。
「大丈夫だよ」
「えっ・・・?」
俊は驚いて後ろを見る。
すると精霊の卵が強く輝いていた。
「大丈夫。俊の大事な人は私が守るよ」
そう言ってさらに光が強くなる。
目が明けていられないほどだ。
光が収まった時、精霊の卵は力を全て使い切ったように黒くなり床を転がっていた。
「一体何が・・・?」
「マスター。通信が入っています」
メティスがそう報告してくる。
「どこから・・・?」
「アピス公爵家からです」
「アピス公爵家・・・?」
「俊君。久しぶりだね」
「マーカスさん・・・」
「落ち着いてきいてほしい。君の艦隊は無事だ」
「無事・・・?」
俊はその意味をすぐには理解できなかった。
「君に預けた精霊が無茶をしたようだね。世界樹様からの伝言だ。1度、こちらにきてくれ」
マーカスはそれだけ言うと通信を切った。
俊は力を使い切ったように転がる精霊の卵を抱きかかえる。
弱弱しいが僅かに鼓動を感じる。
「ありがとう」
精霊の卵に俊はそうお礼を言う。
精霊の卵は1度だけとくんと強く鼓動し返事をしたような気がした。




