第二百十六話
俊達は要塞の恩恵を受けられるように動かない。
それに対してヴァルハントの艦隊は勝負を急ぐように接近してくる。
「不利なのはわかっているはずだけど・・・」
俊は何か考えがあるのだろうかと考える。
だが、向かってくるというのなら相手をするしかない。
「メティス。お願い」
「了解したのです。電子攻撃を開始するのです」
メティスはパターンを変えた電子攻撃を開始する。
だが、思っていた通り対策をされていたのか思ったよりも効きが悪い。
全く効いていないわけではないだろうがどんどんヴァルハントの艦隊が近づいてくる。
「全艦隊。砲撃準備」
「了解」
全員から応答が返ってくる。
射程に入るなり激しい砲撃戦が開始される。
俊達の艦隊は被害を受けるであろう場所にAIの操作する艦を配置していた。
要塞からも強力な砲撃が放たれる。
俊達の艦隊も被害は大きいがヴァルハントの艦隊はそれ以上の被害が出ている。
それでも引く気配はなかった。
「メティス。次の手を」
「了解なのです。仕掛けておいたウィルスを起動するのです」
メティスはそう言うとコマンドを発する。
その効果は効果てきめんだった。
ヴァルハントの艦隊が次々に動きを止める。
こうなっては如何に練度の高い軍人が操っていようと関係ない。
一方的に砲撃に晒されヴァルハントの艦隊はどんどん脱落していった。
「ええっぃ!何が起こっている」
「わかりません。現在、調査しています」
参謀はそう言うしかなかった。
配下が必死に調べているが原因はわかっていない。
突然、艦が操縦を受け付けなくなるなど異常だ。
ましてや今は戦闘中だ。
考えられる中でも最悪の事態だった。
普通に考えるなら相手に何かをされたと考えるのが普通だった。
「これは・・・」
部下が言いよどむ。
「何かわかったのか?」
「はい・・・。わかりましたが手だてがありません」
部下が絶望的な声で言ってくる。
「それで、原因は?」
「ウィルスです。いつ感染したのかわかりませんが中枢まで侵入されています」
中枢まで侵入されているということは本当に手だてがなかった。
艦のコントロールを完全に奪われているということだ。
「こんな手まで用意しているとは・・・」
何か仕掛けてくるとは思っていたがここまで手玉に取られるとは笑うしかない。
「ヴァルハント様。このままでは全滅です」
「出来ることは何もないのだな?」
そこに帯同していたヨルムンガンドから通信が入る。
「ここは我々に任せてもらおうか」
「お前達は動けるのか?」
「システムが全くの別物だからな」
ヴァルハントはマーキュリー家の負け犬に全く期待などしていなかった。
行動を共にしていたのは後の統治でマーキュリー家を支配下に置きやすくする為だった。
だが、この場を何とかしてくれるというのなら任せてみてもいいだろう。
「よし。時間を稼げ。こちらはこちらで対策を考える」
ヴァルハントは使い捨てるつもりでそう命じる。
活躍次第では待遇をもう少しマシにしてやってもいいだろう。




