第073粧 (.{3})キュリテ:7
ノワールの寝息が聞こえて少ししてから、俺はノワールの頬に触れた。
すやすやと寝息を立てるだけで起きる気配もないことに安心し、彼女の手袋をそっと外した。
「アザが濃くなっている……。無意識にでも闇の因子を吸収するのか。厄介だな」
薄くなっていたはずのノワールの三日月が、色付きを増している。
「今日行けなかったカフェには、今度ちゃんと連れて行ってやるから……」
俺の手袋も外して左手の指でノワールのアザを撫でると、彼女がくすぐったそうにした。
「駄犬じゃあるましい、変なものを拾い食いするんじゃない」
撫でた指を外すと、ノワールのアザは以前の濃さに戻っていた。
対して俺のアザは、少し濃くなっている。
「……これで良い」
その指先で本棚を指すと、本棚の影から黒猫が這い出て来た。
「ニャ」
霧が出ていたときにノワールと共に行動していた猫、オプスだ。
「黒の神子の使い魔か……。これは紛れもなく、俺のなんだが……な」
俺がノワールのそばに侍らせているから、そう認識してもおかしくない。
きっと乙女ゲームの俺も、ノワールのことが心配だったんだろう。
俺はオプスに本棚から一冊の本を咥えさせ、俺のところに持って来させた。
「だいぶ状況が変わってきたな……」
かつてノワールが記したゲームブックを受け取り、ページをめくる。
「提示されている要素は、次の通り」
――ノワールは黒の神子である。
――黒の神子は闇の因子を受け入れる器である。
――双子の片割れは闇の因子の制御役である。
――器から溢れた、あるいは制御を失ったとき、闇の因子は根源へと昇華する。
「これらの設定を覆すことは、もう出来ない」
ページをめくっていた手を止める。
「ただ一つの逆転要素、それは」
――闇の根源へと至るは、双子の長子である。
これさえ覆してしまえば。
きっと、ノワールが担う予定だった破滅の未来だけは、変えられるだろう。
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第1章はここまでとなります。
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第2章の途中からシリアスが増していきます。
もし本作をお気に召して頂けましたら、引き続きよろしくお願いいたします。
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これにて「第一部」終了です。
ここまでご覧いただきまして、有難うございます。
第二部は書き終えたら、小説家になろうにも掲載していこうと思います。




