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8.人の話はちゃんと聞きましょう

まぁ、そんな感じで適当に進めば森をすぐに抜けられるだろうって歩いて行ったのが悪かったんでしょうねぇ。


気が付いたら、森の薄暗い場所をグルグル回っていました。



おかしいなぁ。


セスは、街道を通れば夕刻前には次の街に付くだろうと言っていました。

と、言う事はこの森を突っ切った私はとっくの昔に街について、美味しいおやつを食べている頃のはずなのに……。


変ですねぇ。



野生の感を研ぎ澄まし、分かれ道を右に進もうとしたところ、持っていた飛竜がギャアギャアと泣き喚きました。


「何?こっちじゃないの?」

こちらの言葉は分からないのか、飛竜は何も答えません。

……ってか、相変わらず目さえも合わせてもらえません。

飛竜に乗って大空を自由に飛び回れる日は遠そうです。



左に進もうとすると飛竜は何も言いませんでしたが、試しにもう一度右に進もうとすると檻の中で暴れ始めました。


どうやら、やはり左に行けという事らしいです。

道案内をしてくれるのでしょうか?


物は試しと、飛竜の望むまま進んでみることにしました。

渡り鳥と一緒で空を飛ぶ飛竜には、正しい方角が分かるのかもしれませんしね。



飛竜の希望通り道を左に曲がりしばらく進むとまた三又に分かれた道がありました。

飛竜は今度は真っすぐすすめと主張しているので、そのようにします。


だんだん明るい場所に出てきました。

街までもうすぐなのでしょう!



ホッとして思わず気を抜いたその時でした。

突然地面がぐらりと揺れ、気が付くと私は木の蔦に足をと手を搦めとられ、逆さづりの状態で木の枝からぶら下がっていました。


どうやら何かの罠を踏んでしまったようですね。


どうにか蔦を切れないかと風魔法を使ってみますが、手も蔦に絡まってしまっているせいで向きを変えられず上手い事いきません。

炎の魔法を使うと、きっと、残念ながら蔦と一緒に私もお炊き上げです。


……詰みました。



でも大丈夫!


逆さ吊りになった時に森に何か鈴のような音が響いたことからして、おそらくさっきのヒャッハーな人達が誰かが罠にかかったことに気づいて助けに(?)来てくれるはずです。


……ええ、もちろん、私が風魔法でぶっ飛ばしていなければの話ですが(T―T)



逆さまに吊り下げられている為、だんだん頭に血が上って辛くなってきました。


「誰か助けて~!!」

誰もいない森の中に私の声が虚しく響きます。


まさかここで死んじゃうの?

こんなバッドエンドあり?!


そう思った時でした。


「お前!絶対森にははいるなってわざわざ教えてやったのに、一直線に森に向かいやがって!!!」

不意に背後で息を切らせた男の人の声がしました。


懸命に首を曲げて振り返れば、そこには額に青筋を浮かべたセスが立っていたのでした。





「オレ、絶対森には入るなって言ったよな?!」

腰に手を当てたままセスが言いました。


顔には引きつった笑顔が張り付いていますが、額に青筋浮かんでいるのでどうやらと~っても怒っているようです。


「早く降ろして~」

「言・っ・た・よ・な!」

助けを求めつつ、その問いの答えは有耶無耶にしてしまおうと思いましたが、答えるまで降ろしてもらえないようです。


「言ってましたあぁぁ」

はい、『風が強くて~』とか何とか適当な事言って聞こえない振りして無視しましたが、ばっちり聞こえてましたあぁぁぁ。


認めたので早く降ろしてくださいぃぃぃ。



「なんでちゃんと忠告を聞かなかった?」

逆さ吊りになったまま、お説教次いでにセスに体を押され、ブランコみたいにブランブラン揺れます。


「うわぁぁぁ、酔う!酔うからやめてぇぇ」

「な・ん・で、ちゃんと忠告をきかなかった?!」

「だって、絶対森を突っ切った方が近道だと思ったんだもん!!」

「方向音痴のヤツにかぎってそういう事言うんだよ!!」


最後に一度、激しくブランブラン揺らされた後で、ようやくセスが蔦をナイフで切って降ろしてくれることになりました。


おえぇぇぇ。



足の蔦を切った直後に頭から地面に落ちたら大変なので、セスが荷物を担ぐ要領で私の上半身を持ち上げ彼の肩に乗せてくれました。


はあぁぁぁ。

苦しかったぁ。



ホッとしたのも束の間

「お、落ちるうぅぅ」

セスが蔦を切ろうと不安定な体勢で手を動かせば彼の肩からズルッと滑り落ちてしまいそうな恐怖に見舞われます。


せめて手でセスに掴まれれば安定感も生まれるのでしょうが、何がどうしてこうなったのか、蔦を解こうともがいた結果、きつく前手に拘束されたようになってしまって自分では解けない状態です。



「あーもう耳元でうるせえなぁ!」

キレたセスがスポッと私の縛られた両腕の間に頭を通しました。


えっ?!


「これでぜってー落ちねぇから、黙ってろ!」

いや確かに、これで手を縛られた状態で頭から落っこちる恐怖はなくなりましたが……


セスさん、顔!

あなたの綺麗な顔がめっちゃ近いです!!

ちょっと唇を寄せればキス出来てしまいそうな近さです!!!

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