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地雷のおかげで生きている男  作者: おむすびさん
エリーゼと【ブライゼン】
58/62

バカな奴とバカな俺

 公務所を出ると、女将さんとマリンが待ってくれた。

「お待たせして、すみません。」

 一礼した。


「別にいいよ。とりあえず、ここではマズイ。どこかに入ろう。」


 なんでもない会話をしながら歩きだし、高級レストランの個室に入った。


「ここなら良いだろう。…ジン、私からは聞かない。だが頼りたくなったら教えな。」


 その気遣いが嬉しかった。


「ありがとうございます。マリンはあまり心配してないけど、マリンも誰にも言わないようにね。」


「当然です。ごしゅ…ジン様が秘密にしていることは、誰にも言いません。」


「女将さんは、カンナからなにか聞いてます?」


「あの子も言っていい事と、悪い事の分別はついてるよ。だから、私は本当に知らない。」


「そうですね。女将さん、迷惑かけますが、頼った時はよろしくお願いします。」


「任せときな。それで話をした表向きの理由は、なんになったんだい?」


 さすがだな。


「…そうですね。俺の祖父がリオンさんを世話した人でした。」


「ほぅ…。オーブリオンがあんたにリオン呼びを許すなんてね…。ただ、自分の都合で呼ぶんじゃないよ。あんたの発言や行動で、オーブリオンが傷つくからね。理不尽を受けた時の切り札として持っとくのが、一番良いからね。」


「それはもちろんです。リオンさんを怒らせるような事はしませんよ。」


「それは良かった。私もつまらない理由で死にたくはないからね。あれは化け物だ。私が相手するのは無理だ。」


 いやいや、女将さんだけじゃなく、人である限り誰にも相手出来ませんよ。と言いたかったが、言えない。


 話の後、昼食として食事をしたが、女将さんの料理の方が美味しかった。

 それを女将さんに言うと、マリンが同意した。

 それに対して、当たり前だよ。と言っていたが、嬉しそうだった。


 【黒ランプ】に戻ると、師匠がカンナとエリーゼを自分の後ろに庇って、誰かと言い合いをしていた。


「…カンナと嬢ちゃんに触れんじゃねぇ!!」


「ボルドー、なに言ってるんだ。カンナは僕の婚約者じゃないか、カンナも僕に会いにきたんだろう?」


「うるせぇ!お前が勝手にカンナを婚約者って言ってんだろうが!俺とアンナ、それからカンナも一度たりとも、良いと言った覚えはない!!」


「シングルの癖に、口だけは達者だな。トリプルの街長の僕のお嫁さんになるんだ。悪い事じゃないだろう?ついでにそこお嬢さんも一緒にもらってあげる。」


 なに言ってんだろう?あいつ…。

 怒りももちろんあるが、ため息が出てしまう。


「女将さんあいつですか?面倒臭い奴は?」


「そうだよ。ジンなら飛び出すと思ったんだけどね。」


「会議の時にも思ったんですが、ちょっと昔の知り合いに似てて、少し驚いたっていうか呆れてましてね。まぁ、師匠が守ってくれているのが、一番大きいですよ。どんな奴なんですか?」


「そうなのかい?まぁ、あんな奴はどこにでもいるからね。あいつの名前は、シンツーって言ってね。レベル8なんだけど、トリプルの街の【ランローバ】の街長で、自称カンナの婚約者さ。シンツーは今、結婚してる奴が5人いるんだが、どれもシングルやダブルの街から半ば強引に結婚してるんだ。向こうは善意なんだろうが、こっちはいい迷惑を越えて害悪さ。」


 そうなのか…。やっぱり、なんか似てるな…。

 それにしても、シンツーって…。もう少し考えろよ。アイドル(バカ)が少し可哀想だ。

 そう。俺が殺しかけた、慎二(バカ)にそっくりだった。


 それにしても…。本当にため息がでる。

 それとありがとう。リオンさん…。早速役に立ちそうです。

 だが、一応女将さんに確認しておこう。なんかやらかすかもしれないからな。


「今こそ、虎さん…リオンさんの力を借りる時ですよね。」


「そうだね。あいつには凄く効くだろうね。」

 悪い笑顔で言ってきた。


 大丈夫みたいだったので、

「すみません。私の仲間兼婚約者達になにか用ですか?」


 仲間兼奴隷じゃ、俺が思うバカなら、なに言うか分からないからな。念のために言った。

 カンナとエリーゼは顔を赤く染めていた。

 師匠がなにか言おうとしたが、女将さんにボディブローをされて悶絶していた。いつの間に…。


「なにを言う。君は確か、アークを殺した成り上がり君か…。カンナは僕の婚約者だ。」


 俺は成り上がったのか?よく分からん。

 そんなバカの言った事よりヤバイ…。マリンの機嫌が…。


「違いますよ。カンナとエリーゼ、そしてこちらのマリンは三人とも私の婚約者です。」


 ふぅー。危ない、危ない。俺は無罪だ。なんに対してかは分からないが…。

 マリンの機嫌が少しマシになった。


「なに?この美しい女性を3人も娶るのか?それは不義理ではないのか?」


 こいつはなに言ってんだろう?

 ブーメランって言葉をこの世界にはないのかな?

 本当に面倒臭い…。さっさと虎さんの力を借りれば良かった。

 そんな事を考えてると…。


「なんだ。僕の言った事で改心したか。お前はそっちのマリンという女だけで我慢しとけ。」


 くそっ、また失敗した。早く虎さんの力を出せば良かった。

 マリンがなんとも言えない顔になっている。多分、選ばれなかったのは良かったが、選ばれないのはなんか嫌なんだろうな。

 カンナとエリーゼは顔がさっきまで赤かったのに、今は青くなっている。こちらは選ばれて最悪って感じかな。

 これ以上、変な空気にならないように早く終わらせよう。


「すみません。私の婚約者ですので、誰も渡せません。【ランローバ】の街長なのにこんな事が許されるんですか?」


「当たり前だ。なんたって、トリプルの街長だからな。」

 なんか威張っていた。


「そうなんですか…。リオンさんに言っておかないとな…。」

 ギリギリ聞こえるくらいで呟いた。


「ちょっと待て!お前はオーブリオン様の事を、僕でも呼ばせてくれない、オーブを抜いて呼ぶとはどういう事だ!!」


 おぉーっ。リオンさんの事、リオンって呼ばせてもらうのってかなり凄い事なんだな…。

 しかも、こいつリオンって呼ばないように、「オーブを抜いて」なんて言ってるし…。少し面白いな。

 まぁ、従神様だからな。


 早く終わらせよう。

 ペンダントを出して、


「もし、理不尽な事があったら、俺の名前出していい。って言われてるんですよ。リオンさんにね。」

 リオンさんの名前を少し強調した。


「くっ…。権力や力に頼るとは卑怯だぞ。お嬢さん方、今は撤退しますが、いつか悪の手から救ってみせます。」

 そう言い残して、シンツーはどこかに走っていった。


 突っ込みどころが複数あったが、シンツーはもういないので、どうでもいいか。


 バカの事よりマズイな…。この状況…。

 師匠は俺の事睨んでいるし、女将さんはこの状況を笑ってみてる。

 そして…三人は、一人は選ばれなかったのが、嫌だったのか不機嫌で、二人はそんな一人を慰めているが、なんだか嬉しそうだ。あいつに選ばれた事がそんなに嬉しいのか?


「マリン、あんな奴に選ばれなくたって良いじゃないか。俺はマリンを一番愛してる。それだけじゃあダメなのか?」


「っ…、そんな事ありません。私はご主人様がいるだけで良いんです。」

 マリンの機嫌が180度変わった。

 助かった…。と思っていると、アラームが鳴った。


「ほう…。ジンよ…。カンナは一番じゃないのに、婚約者と言ったのか?」

 殺気を込めて、笑顔で師匠が言った。女将さんも笑顔で楽しそうにこちらを見ていた。


 助けを求めて二人を見ると、さっきまで機嫌が良さそうだったのに、悪くなって俺と目を合わせない。

 カンナはふてくされてるし、エリーゼは悲しい顔をしていた。


 この喜怒哀楽が入り混じった空間にいるのが辛かった。

 俺はどうしたら良かったんだ。と誰かに言いたかったが、言っても俺が欲しい答えが返ってくる訳がない。

 なにが悪かったのか分からないこの状況が早く終わるのを願った。


 しばらくするとその願いは叶った。


 師匠が、

「まぁ、その事は忘れて鍛練でもしよう。」

 全然忘れてない感じで言ってきた。


 アラームがまだ鳴っていた。だがこの状況から抜け出せるならと、「はい。師匠。」と言うと、


「それじゃあ、ついて来い。」


「えっ…いつもの鍛練ならここでも出来ますよ。」


「ここじゃあ、建物が壊れるだろう。迷宮にいくぞ。」


 なにそれ…。だが答えられるのは一種類しかない。


 その後、師匠と一緒に鍛練という名のなにかを受けた。


 終わったのは、日付が変わった頃だった。

 変わった頃に女将さんが助けてくれた。


 適度に休ませてもらっていたが、開始2時間で100年の寿命が削れた。途中で限界突破組が上がった事と、【真回避】が【超回避】に昇華したおかげで、師匠の攻撃が当たるまでの時間が延びて、生きて帰ってこれた。

 たったの半日くらいで、寿命が300年も減った。

 やっぱり寿命は大切だ。レベルが上がってて良かった。


 師匠のなにかを受けた後、【黒ランプ】に帰ると三人が待っていた。

 なんか疲れているので、その事を言うと、カンナが「ジン様は、疲れないでしょう。」の言葉に二人が同意して、波状攻撃を受けた。


 今日の夜は、マリンはなんだか優しくて、早めに満足していたが、カンナとエリーゼは違った。

 カンナとエリーゼのコンビネーションで、俺の弾がなくなり撃墜した。

 戦いは早朝まで続いた。

 お読み頂きありがとうございます。

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