地獄の終わり~ジゴクのハジマリ
~あらすじ~
酷いイジメをうけていたが両親が気付いた。
※カタカナは、仁にとって、大した事なかったり、勘違いだったりします。
三人称です。
仁の体を見た陸は、酷く憤った。それを聞いた奏海は一晩中、仁に気付かれないように泣いた。
明くる日、両親は話しあって仕事を辞めて、陸の友達がいる東京に引っ越しする事にした。
陸は最初、訴えようと思ったが、冷静に話しあって仁が矢面にたつことを嫌い、泣き寝入りだがそれをやめた。
イジメの問題はニュースでよくみるが、悲しいことにほとんどが被害者が、どうにも出来なくなってからでしかニュースにならない。きっと泣き寝入りしている被害者は沢山いる…。
閑話休題。
仁は引きこもって、3ヶ月くらい、死ぬ事ばかり考えていたが、死ぬ方法などがわからず自殺できないでいた。
そんな事を考えている時に、引っ越しをした。
陸の就職が決まっていないので、日雇いの仕事をしながら就職活動をしていた。
その頃、リーマンショックの影響でなかなか決まらず、貯金と家を売ったお金で生活していたので、年季の入ったアパートに住んでいた。
生活が落ち着くと奏海は、
「なんか若い頃を思いだすね」と陸と影ながらイチャイチャしていた。仁は知らなかったが…
閑話休題。
アパートは前の家より狭く、仁の部屋はなかった。
そのため、最初はぎこちない会話だったが、家族と話す事が多くなり、自分を両親が全然嫌ってない事がわかり、佐藤家全員で泣いたり、加害者に憤ったりしていた。
両親と普通に話せるようになる頃になると、陸の就職が決まり、アパートから引っ越す事も出来たが、奏海が反対したのでそのままだった。
仁は6年生になった。
都立の学校に転校したのだが、体の傷はなくなったが心の傷は深く残っていて、他人が怖くなっていた。
保健室登校で学校に通い、休日はカウンセリングにいく生活を送っていた。
最初は怖かった、保健室の先生とカウンセリングの先生に話しをするようになり、吃りながらも話はできていた。
そんな生活をしていて、少しずつであるが、自分に自信がつき、保険室の先生とカウンセラーには、吃って話す事も少なくなってきた。
小学校を卒業して、中学生になったが、同級生くらいの子はまだ怖く、中学校でも保健室登校だった。
それで1ヶ月が過ぎた頃、保健室に生徒二人がサボりに来て、ネット小説の話をしていた。
それを聞いて、面白そうと思い、ネット小説をみるようになった。
スマホは、中学校入学と同時に渡されたが、両親と連絡する以外使っていなかった。
この一年間で、保健室でネット小説の話をする友達もでき、中学2年生から普通に登校する事になった。
仁は、身長は低いが(成長期にイジメであまり食べてなかったため)、顔が良いのと、私立の小学校に通っていたので頭も良く、陸の影響で優しい性格だったので、すぐに(特に女子から)受け入れられ、帰宅部だが普通の学生生活を送っていた。
夏休みの終わりに、カウンセリングに行かなくても、大丈夫になり、奏海は泣いて喜んだ。
陸はジンや奏海に隠れて一人で泣いた。
12月の休日に、クリスマス前だったので、陸と一緒に買い物に出かけていた。
その頃に、日本人初の9秒台ということで、ニュースになっていて、また短距離走をしたくなっていた。クラスの友達にも誘われていた。
その人が使っているスパイクの値段をみて、ビックリしたりして楽しんでいた。
陸が飲み物を買いにいって、(父さん遅いなー)と思いながら1人で休憩していると、知らない女がいきなり包丁を持って仁に襲いかかり、女が馬乗りの状態で
「あんたがいるから、陸さんは幸せになれないのよ!!」
そう言いながら包丁を振り上げ、仁の胸めがけて振り下ろした。
仁は目を瞑り痛みを耐えようとした。だが、痛みが来ない……。
「そんな…。陸さん……。」
その女の声で仁が恐る恐る目を開けると、陸がいた…。頭にないものがある状態で…。
「うわーっと」と叫びながら女は走ってどこかにいった。
「父さん…。」と言っても返事がない…。
騒ぎを聞きつけ人が集まり119番等をして事態を収拾しようとする人もいたが、スマホを持って撮影する人もいた。
前者は、人として当たり前だが立派だ。
後者、いなくなれば良いのに。
閑話休題。
人が沢山集まってパニックになり、現実を受け止められずに仁は意識を失った。
女の「あんたが━━のよ」という言葉を胸に残して……。
陸は即死だった…。
その後、イカれた女は自宅で自殺していた。
女は陸が勤める会社の事務員だった。
少し残念な顔の持ち主で、妄想癖のある孤児だった。男に優しくされた経験がなかった。
陸も同じ孤児だったのと、女性に凄く甘かったので優しく、いろいろな相談を受けていた。
その時に自分の失敗談や仁の話をしてしまった。
仁の事を聞いて、(陸さんは私の事が好きなのに、その子がいるから私と結ばれないのね。可哀想に。)と考えるようになった。
もちろん陸は、奏海とのノロケ話もしていたが、(というより半分以上はノロケ話だった)聞いてなかったか、自分に都合が良いように受け取った。
それで「あなたがいるから、(私と結ばれず)陸さんは幸せになれないのよ!!」という意味の言葉だったが、目撃者は違う意味に受けとった。
警察が目撃者や陸の同僚に事情聴取したときに、「あなたが━━のよ!!」と女が言っていたことや「会社が終わって、よく2人でよく会っていた」などの憶測で、証言した。
警察は、2人は『親しかった』と思い、警察は報道官に、それらをそのまま流した。
この事は全国的ニュースになり、「痴情のもつれによる犯行」と報道された。
マスコミも目撃者や同僚に取材をして、そんな事しか流されなかった。
コメンテーターなどは不倫はどうの、こうのと陸が不倫していた事を前提に話をしていた。
全国ニュースになったので、陸の葬式にはデリカシーをどこかに落とした、マスコミが多数来て奏海に取材をした。
奏海は取材をうけ「夫から彼女の事を聞いていました。夫は不倫なんてしていません!!」と不倫を否定したが、そんな事はなかったかのようにカットされ、他のところばかりテレビに流れた。
ネットでは、加害者が死んでいて孤児だったので、仁に矛先が向いた。
前の学校でイジメてた人達、主に、禅のファンクラブだった人や腰巾着、仁の同級生達が、仁はいかに悪い奴か、ある事ない事ネットに書き込んで、仁がやらかした運動会の映像も拡散されていった。
それを信じたバカなコメンテーターは、「ネットの事は信用できません」と以前話していたのに、仁は問題ある子供みたいに話していた。
それには、奏海は激怒し、テレビ局に猛抗議して放送があった翌日に、そのバカなコメンテーターは謝罪していた。
そんな時に仁は都立病院で目を覚まし、奏海は泣いて陸の事を話した。
仁は最初、奏海がなにを言っているのかがわからなかった。
あの時の記憶がなかったのだ。
ただ、陸が死んだことだけ理解して、泣くのを我慢して「女性を泣かすなって言ってたのに、父さんが泣かしてるじゃないか」と言ったり、奏海の話を聞いてあげたりして、奏海を慰めていた。
奏海が落ちつき、仁に少し遅れたクリスマスプレゼントを渡した。
あのビックリしたスパイクだった。陸が飲み物を買いにいった時に、こっそり購入した物だった…。
しばらくしてトイレに行き、トイレで1人声を我慢して泣いた…。
翌日からいろいろな検査をしているうちに、体に異常はなかったが事件の事を思いだし、奏海以外の女性が怖くなっていた。
カウンセリングが必要だが以前お世話になったカウンセラーは女性だった為、違う病院を紹介してもらい退院する事になった。
仁が退院する頃は、日下部のニュースがワイドショーを賑わせ、陸の事件は、風化していた為に、マスコミはいなくなっていた。
閑話休題。
退院しても学校に行けなくて、紹介された心療内科の病院に通っていた。
遠藤 玄二という人のカウンセリングを受けていた。バツイチ子持ち(子供は元妻が連れていった)の先生で、大柄で熊みたいな人だった。
病院が少し遠かったので、近くのアパートに引っ越した。
女性と話す事が出来るまで、2ヶ月ほどかかり、1月にあった修学旅行に行けなくて残念だったが、学校に行けるようになった。
クラスに入ると、微妙な雰囲気で実際は気にしていたが、気にしていない風を装って、自分の席に着いた。
いつもは友達が来て、小説など話をするのだが、誰も寄ってこない。
仁は事件の影響かなと思っていた。
微妙な雰囲気になっていたのは事件のこともあるが、修学旅行で学校のアイドル(実際、人気若手女優で次回の朝のドラマで、最年少主演が決まっている)の、楓絵莉が修学旅行で仁の事が好きだと、女友達に告白したのだ。
その事を、絵莉のファンが聞いてしまい、修学旅行中に、同学年全員に知れ渡り、修学旅行から帰って1週間で学校中に知れ渡ってしまった。
絵莉を好きな人は沢山いる。男子は勿論の事、女子にも性的に好きな人がいる。なかには、男子アイドルグループのメンバーもいた。
そのなかには、その事が気に入らない人も沢山いた。
やはり人は自分の都合に良い事は信じる生き物で、ネットのデマを信じ正義感で仁をイジメ初めた。
仁の地獄の第二章の始まりだった?
お読み頂きありがとうございます。