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12年前

 ※途中で、三人称になります。

 

「チュンチュン」


「じーん!!早く起きなさーい!!今日は運動会で、勝てるように朝ごはんはカツカレーよ」


 佐藤 奏海(母さん)の声が家に響きわたり。目を覚ました。


 (今年が最後のチャンスだ!絶対に優勝すぞ!!) 


 気合いをいれて起き上がり、体操服に着替えてリビングで朝食を食べていると、外から2つ上の幼なじみの石原 真理(真理姉)の声が聞こえてきた。


「仁起きてるーっ!?早く準備して一緒に学校に行くわよ。」


 残っていたカレーを急いで口に掻き込み、母親が用意していた荷物を持って外へでた。


「真理姉おはよー!!」


「仁、おはよう!今年は一緒の赤組だから、優勝目指して頑張るわよ!!」


「真理姉の小学校最後の運動会だから、俺が頑張って優勝させるよっ!」


「ありがとう…。」


 なんて言ったか分からなかったので、

「なんか、言った?」 


「さっ…最後に優勝するわよっ」


 聞き直したけど、なんか、誤魔化していた。

 真理姉の顔が赤くなっていた。そんな顔をみると2年前を思い出す。


 2年前、俺の小2の運動会が終わり家に帰ると負けず嫌いの真理姉が顔を真っ赤にして「ぞらぢゃんに(そらちゃんに)ばだばげた~(また負けた~)」泣きながらやってきた。


 俺がどうしていいかわからなくあたふたしながら慰めてる?とそれを聞いていた俺の佐藤 陸(父さん)


「仁、真理ちゃん市内の陸上部に入ってみたらどうかな?」という言葉をキッカケで陸上部に入った。


 父さんは基本放任主義だが唯一、

「男に優しく女の人にはめちゃくちゃ優しくしなさい。」と耳にタコができるほど、言われ続けていた。


 曰く、「女性を嬉し涙以外で泣かせる男は最低だ!」がモットーだ。

 女性に甘いが、父さんは母さん一筋だ。


 閑話休題。


 陸上部に入ったのだが、そこには、そらちゃんもいた。


 陸上部に入り、俺と真理姉は足がどんどん速くなり、そらちゃんと真理姉は、仲良くなって今では1年前から、真理姉とそらちゃんはライバルで親友だ。


 去年の運動会では、真理姉と違う組で俺の組がビリの4位で真理姉の組は2位だった。真理姉の目元はウルウルしていた。


 そんな事を思い出しながら、気合いを入れて、喋ったりしているうちに、学校につき運動会が始まった。


 プログラムが進んでいき、1位は白組、僅差で2位が赤組だった。残すプログラムは選抜リレーだけだった。


 俺の小学校の選抜リレーは、各色の各学年から代表を1人選びアンカーの前と、アンカーはトラック一周、それ以外はトラック半周走るというルールで、運動会のトリに行われ、1番盛り上がる種目だった。


 これで赤、白どちらかが勝つかのリレーで俺は小4だったが、陸上部に入ったおかげで足が速かったので、赤組のアンカーの前の走者になった。


 赤組のアンカーは、真理姉で白組のアンカーはそらちゃんだ。足の速さは、真理姉とはそう変わらないので、俺が先にバトンを渡したら、真理姉が勝って優勝だ!!


 俺の相手は全員5年生で、青組と緑組の2人は問題ないが、白組の日下部(くさかべ) (ぜん)君。イケメンで頭も良くて、運動神経も良くて俺よりも足が速い。

 小学生なのにファンクラブみたいな集団もいる。


 禅君の祖父は一代で株式上場の企業までにした凄い人で、彼なくてはこの○○市は回らないといっても過言ではないくらいだ。

 なぜなら、○○市にはその企業のグループ会社や下請け会社、工場が沢山ある。

 もちろん○○市だけではなく、日本全国や海外にいくつもあるが…。

 この学校の生徒の保護者もだいたいグループ会社か下請け会社の社員だ。

 俺のお父さんもグループ会社の営業マンで、鳴かず飛ばずの成績だったが去年と今年の複数月でトップの成績になったので、「来年昇進するかも」とお母さんに嬉しそうに話していた。

 この学校も『私立 日下部大学附属小学校』、大学までの一貫校で禅君の祖父が名誉理事長でもある。

 禅君の父親はやはりイケメンで、若い頃、人気バンドのドラマーだったらしい。

 今は市議会議員で次の選挙で衆議院選挙に出馬するのでは…。したら三バンも充実しているので当選間違いなしと思われてる。

 母親も美人で、元有名人気アナウンサーで、現文部科学省の事務次官の娘というエリート一家なのだ。(企業と学校は禅の父の兄弟が跡を継ぐ)

 もちろんその時はどれほど凄いか、なんとなくしか分からなかったのだが…

 噂によると禅君は有名中学を受験するので、その準備の為、来年の夏から学校に来なくなり、これが小学校最後の運動会らしい。


 閑話休題。


 いよいよ自分の番は目前で、1位は青組、青組と僅差の2位が赤組、少し離れて3位が緑組で、低学年でバトンミスがあり、ビリは白組だった。


 バトンを受け取り一生懸命走り、第一コーナーで青組の先輩を抜かして1位になった。


 禅君の追い上げで、周りが盛り上がっていった。


 第二コーナー前くらいで後ろを向くと、禅君との距離がどんどん近づいてきていた。


 (このままじゃ抜かされる。神様お願いします。なんとかして下さい。)


 と、力一杯踏ん張った瞬間、不思議な力がわいて、自分の体が自分のものでは、ないような感覚になった。

 だが、踏ん張ったせいか、自分の体じゃない感覚のせいか、知らないが、体操服の半ズボンから茶色い丸いものが[コロコロ]と転がった……。


 学校で飼っていたウサギから、でたような茶色く丸いものがいくつか転がってしまった(泣)


 それを、イケメン先輩が踏んでしまい転んでしまった。


 その隙にアンカーの真理姉に、恥ずかしくて、バトンを半泣きで渡し、先輩がゴールテープを切って赤組の勝ちで、閉会式をする前に一騒動があり、運動会が終わったらしい。


 らしいというのは、俺は先輩に泣きながら、バトンを渡したあと、すぐに母親と一緒に家へ帰ったからだ。





 一騒動とは、禅君が転けた先にも、ウ○コが転がっておりそれが禅君のおでこの真ん中についてしまってたのだが、自分では気付かなかったのだ。


 ウ○コを踏んでしまった嫌悪感からか、転んでしまったことへの、羞恥心や痛みからか、最後の運動会で、負けてしまった悔しさからなのか、それともそれら全部の理由からか…。とにかく気付けなかった。


 閉会式が始まる為、全生徒が集合した時、小学1年生の男の子に「大仏様みたい。ハハハ!」と、笑われしまいその言葉をキッカケで大半の生徒が大爆笑。保護者の席や先生達の席から「クスクス」と忍び笑いも起きたらしい……。


 完璧に近い人が失敗するほど面白いので、仕方ないのかもしれないが……。


 それで、日下部家の人達は、禅の体調を理由に、閉会式の途中で帰っていった。

 本当に、大怪我をしていたのだが、大半の人は知らなかった。


 そして、いろんな事があって、その日を境に、禅は小学校に来なくなった。


 この事がキッカケで、仁は約1年間、ひどいイジメ(地獄)を受け、人格が変わってしまい、社会復帰するまで3年かかった。

 お読み頂きありがとうございます。

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