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疲れた。

タイトル変更しました。

ブックマークありがとうございます。すごく嬉しいです。

頑張ります。

「俺はカイ。王へんに鬼で、瑰。カッコいいでしょ?」

「えっ、鬼の王様になるの?」


お兄さん、もとい、瑰は手をヒラヒラさせて、笑いながらまたビールを飲み始めた。


「ないない。鬼の王国なんてあるわけ無いじゃん。さくらって発想が子供っぽいね。アニメ好き?」


むー。こんなお屋敷に住んでるし、みんなが若様って呼んでたから聞いてみただけなのに。


「ああ、一族はいるよ。俺の家は三番目におっきいのかな。兄弟はいないから一応跡継ぎってやつ。」

「ふーん。それでお嫁さんが必要なのか。」


ふと、瑰を見ると、私をじっと見つめてる雰囲気に戸惑う。目が見えていれば視線が分かるんだけど前髪、長くない?切ろうよ。


「さくらが切ってくれる?美容室とか無いんだよ。ここ。」

「え、無理。どこまで切っていいか分かんないし。坊主にしてもいいの?」

「あはは、それは困る。」


飲みなよと、ビールを注いでくれた。チビチビと味わってみると、いつもより少し苦い気がした。何だか今、振られたその夜に知らない男の人と二人で飲んでるのは悪い事のような、気まずいような変な気がした。


「そういえば、動物達に色々言われてたみたいだね。ごめんね。」

「うん。でもね、当たってるんだと思う。彼が誰かに取られる辛さよりも、めんどくさい事ばっかり浮かんじゃってさ。浮気されてたのにさ、別れたくないとか、許さない!なんて思いもしなかったのよ。恥ずかしいと悔しいって思った。やっぱり変だよ。」


瑰はうーんと伸びをして、コキコキ首を鳴らすと、また私をじっと見つめる。


「さくらだけじゃないんじゃない?相手の男もおかしいよ。結婚しようと思う相手がいるのに土壇場で変えるとか。人の結婚観が動物達とは違うって思えばいいよ。俺らだって本家とかめんどくさいしがらみはあるしさ。あいつらの事は気にしないで。特に狼、烏は番と一生添い遂げるんだよ。あいつらから見たら、今回のさくら達の事は理解出来ないのかもね。」


慰めてくれてるんだろうか?優しい所もあるんだ。

「人間もよっぽどの事が無ければ添い遂げるわよ。」

「そのつもりだった?」

「何も無ければ。多分。」


瑰はグッとグラスのビールを飲み干すと、片付け始めた。


「もう寝な。明日また話そう。」

「うん、ごめん、ありがとう。」

「何がごめんで、何がありがとうなの?」

「あ、夜中にお酒用意させてごめんなさい。あと、聞いてくれてありがとう。」


瑰はちょっと笑ってどういたしまして。と言ってお盆を持って部屋を出ていった。

私、何か気に障る事を言ったかな。

押し入れらしき襖を端から開けて、布団を見付けて自分で敷いた。廊下に面した襖を閉めると、どこかに灯りがあったみたいで少し薄暗い位になる。

布団なんて久しぶりだわ。

今日だけで色々あったなぁ。

明日は会社と親に連絡して説明しないと。

退職撤回出来たりしたらいいのに。

眠くないつもりだったけど、どんどん体が重くなってく。

明日になったら、婚約解消も鬼の里に来たことも全部夢だったら良いのにな……。




「貂、いるか。」

「はい。」


瑰は厨房で影に呼び掛ける。音もなく貂、狼が現れて瓶やコップなどを片付け始めた。

瑰は近くにあったイスを引き寄せ、座って足を組む。


「どうですか、さくら様は?」

「貂はさくらのどこがいいと思った?恋人と別れた直後だなんて、さすがに可哀想だとは思わないのか?」

「気に入りませんでしたか?私はさくら様好きですよ。若様は甘いですね。」

「俺もそう思いますよ。恋に破れたばかりなら優しくすればイチコロじゃないすか。」


瑰は嫌そうに二人を見ると、ガシガシと前髪をかき上げる。目と眉が露になると、女のように綺麗な顔立ちだ。

瑰もさくらのような女は嫌いではない。背はちょっと低い位で、体型も細すぎる訳ではないし、髪も綺麗だし着物が似合ってた。酒が好きそうなのも好感が持てる。

何より自分を怖がらない。

しかし。


「そういうの、苦手なんだよ。傷付いた女の子なんてどうしたらいいかわからん。」

「若様はへたれですね。」

「今回は頑張ったぞ!角を触らせてやった。そもそもお前らが傷口を抉るような事を言ったのも悪い!」


貂と狼が残念な目で主を見る。この顔で迫れば前の二人だって簡単に落とせたはずなのだ。鬼の一族なのに大人しすぎる。鬼だって言ってるんだからちょっと位強引な方がいいのかもしれないのだ。


「そういやあの女、不思議な匂いがしましたよ。懐かしいような、なんて言うか、うまそうな。」


狼が思い出したように話し出した。人の女の匂いの他に不思議な匂いがしたから、もっと良く嗅ごうとして狼の姿になっていたのだ。


「見た目も悪くないし、本家の兄さんが気に入るかもしれないっすね。」


瑰の赤い目の色が怪しく変わる。しばらく考え込むと、眉間にシワを寄せ狼を見た。


「兄さんに取られるのはなんか嫌だな。」

「え!」

「若様!」


貂と狼は驚いた。瑰は今まで一度も、本家の兄弟に逆らう事はなかったからだ。特に本家が傍若無人と言うわけではないのだが、年若い分家としては本家の意向に沿わなくてはならない。今までずっとそうだった。もしや遅い反抗期か。

二人はじっと主を見つめる。これはいい傾向なのでは?


「なんだよ。」

「いいえぇ。では、若様がさくら様を先に何とかしないとなりませんねぇ。」

「う。」

「若、俺が髪切りますよ。若は顔がいいんだから見せないと損っす。」

「顔の事はいい。もう寝る。疲れた。」


ドスドスと音を立てて部屋に向かう。貂は主の後ろ姿を見送ったあと、さくらをどう説得しようか考え始めた。


もう少ししたら狼と貂にさくらが名前をつけます。


本家の兄さん二人の容姿(色)にしようか考え中です。

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