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二人の自分 私と俺の夢世界~最強の女神様の化身になった私と、最高の魔法使いの魔術回路を埋め込まれた俺は、家族に愛されながら異世界生活を謳歌します~  作者: ソラ・ルナ
第一章 オーブ編

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21.王都・エイランド

 泉の前で向かい合う私とアーネスト。


「俺も最後のオーブに行くとするよ。まぁ大丈夫だと思うけど、蓮華も気をつけろよ?」


「分かってるよ。最後まで気を抜かないさ。お前も油断なんてして怪我するんじゃないぞ?相手が気の毒だからな」


 その言葉に苦笑するアーネスト。


「あ、ああ。肝に銘じてるよ」


 それは、今も心配そうに見送ってくれてる二人の為だ。


「アーちゃん、レンちゃん。気を付けるんだよ?何かあったら、すぐ帰ってくるんだよ?」


「アーネスト、蓮華。危ないと感じたら、退くのもまた勇気ですよ。大丈夫、邪魔なモノは全てこの私が排除してあげますからね」


 なんて過保護すぎる二人に苦笑しながら。


「「行ってきます!」」


 と言って、ポータルを起動させた。

 その瞬間、王都・エイランドに到着する。

 あれ?っと思う。

 周りに誰も居ないのだ。

 関所にも、ここから見る限り誰も居ないみたいだし、

 この国の兵の人が待ってる風でもない。

 以前までは母さんか兄さんが、話を通してくれていたみたいで、すぐに話が進んだんだけど。

 とりあえず、関所の方に行ってみるかな?と歩き出したら、なんか向こうから車が飛んできた。

 そう、飛んできたのだ。

 タイヤが大地に着いていない。

 目の前で車が止まる。

 タイヤは着地の為だけについてるのか。


「はろー蓮華様。レンちゃんで良い?アタシはバニラ=ハーゲンダッツって言うの」


「アイスかよ!?」


 突っ込んでしまった。

 ヤバイ。


「ふふ、やぁっぱり。この名前にそう反応するのは、地球人よねぇ?」


 なんて、言ってきた。

 衝撃を受けると同時に、警戒レベルを最大まで上げる。


「あぁん、そんな目で見ないでレンちゃん。アタシ、転生者なの。レンちゃんなら、この意味分かるでしょぉ?」


 転生者……成程。

 もしかしたら私と同じ世界から来たのかもしれない。


「お互い話をしたいわよねぇ。だから、乗って?アタシの家へ案内するわぁ」


「私は、王宮からオーブの元へ案内してくれる人を待たないといけないから」


 ついていきたいし、話も聞きたいのは山々だけど……当初の目的を忘れるわけにはいかない。


「あぁ、それなら大丈夫よん。アタシがその案内する者だからぁ。ロイヤルガードが一人、バニラ=ハーゲンダッツとはアタシの事よぉ」


 なんて、ウインクしてきた。

 うっそん……。

 驚いている私に言う。


「この世界に、テレビや車を広げたのはアタシなのぉ。ビックリしたぁ?これでも300歳は超えてるおばぁちゃんだったりするのよぉ」


「マジですか……」


 もはや、恥も外聞もなく言ってしまった。


「人間じゃないのに転生してしまったんですね」


 と。


「あ、あらぁ。そっちに驚くのねぇ。面白い子だわぁレンちゃん」


 とりあえず、悪い人?じゃなさそうだし、案内者って事だから、ついて行く事にした。


「それじゃ、飛ばすわよぉ!」


 ブォン!


 という音と共に、走り出す。


「ちょ、ちょっと!?街中をこのスピードで走るつもりですか!?」


 なんせ、車のメーターを見るに、120kって出てるのだ。


「だーいじょうぶよぉレンちゃん。当ててぶっ飛ばしても、回復魔法かけておくから死なないわよぉ」


「そーいう問題じゃなぁーい!!」


 私の叫びが木霊する。

 結局、誰もひかなかったが、物凄く心臓に悪い運転だった。

 この人、頭がぶっ飛んでる、間違いない。


「ぜぇっ……ぜぇっ……」


 なんで助手席に座って疲れにゃならんのか……。


「ほらレンちゃん、中に入りましょーよぉ」


「くっ……誰のせいで!」


 キッと睨むのだが。


「レンちゃんったら可愛い」


 何の意味もなかった。

 泣きたい。

 そして屋敷の中へ入る。

 この屋敷も大きかった。

 カレンとアニスの豪邸程じゃなかったけれど、十分な大きさだ。

 だけど、異様なのは。


「なんで入ってすぐの居間があるべき場所に、地下に続く階段があるんですかね……」


 もはや、秘密基地かよ!っと突っ込まなかった自分を褒めたい。


「うふふ、秘密基地みたいでしょーぅ?」


「お前が言うんかいっ!」


 もう、最初からずっとこの人?に翻弄されっぱなしである。

 ニコニコと笑っているこの人が言う。


「レンちゃんって楽しい。私にそんなに突っ込んでくれる人、今まで居なかったのぉ。嬉しいわぁ」


 周りの人、言ってやってよ。

 本当にお願いします……。

 この話が一向に進まない感じ、何とかしてください。


「ふふ、安心してレンちゃん。オーブのある場所にはねぇ、この地下の先から行けるからねぇ」


「!?」


 衝撃だった。

 まさかちゃんと案内してくれてたなんて。

 いや、そーじゃない。そーじゃなくて。


「えっと……気のせいか、水の中に見えるんですけど」


 そうなのだ。

 水族館とでも言おうか、ガラス張りで外を見れば、魚が泳いでいるのだ。


「そうよぉ。オーブは海底にあるのよねぇ」


 マジですか……今度は海底ですか。

 これ、溺れたら助からないんじゃ……。


「だーいじょうぶよぉ。酸素を作る魔法も、魔道具も、ちゃんと開発してるんだからぁ」


 魔法はともかく、魔道具!?それも、今開発って言った!?


「うふふ、驚いてるわねぇレンちゃん。アタシね、物を創るのが昔から大好きだったの。だから、元の世界にあったものは大抵作ったし、この世界に適応させるのも楽しかったわぁ」


 その言葉に、更に驚いた。

 この人は、本当に凄い人だという事を理解して。


「アタシはねぇ、レンちゃんのように強くはないかもしれない。だけど、物を創るっていう点でならぁ、誰にも負けないと自負してるわぁ」


 私は初めて、母さんや兄さんとは違う意味で、尊敬できる人に出会えたのかもしれない。

 ちょっと、頭おかしいけど。


「さぁてレンちゃん、まずはアタシの事を話すわねぇ。レンちゃんの事は、アタシの話を聞いてから、話せる所までで良いからねぇ」


「そんな私に好条件で良いんですか?」


「えぇ。アタシ、雰囲気でなんとなくだけどぉ、信じられるかどうかが分かるのよぉ。それでなくても、精霊様の加護を受けているレンちゃんが、悪い人なはずないからねぇ」


精霊様の加護?もしかしてウンディーネが何かしてくれたんだろうか。

バニラさんが話を続ける。


「アタシは今から320年前、この世界へ生を受けたわぁ。と言っても、最初はこの世界の事しか知らなかったのよぉ」


「もしかして、いつからか前世の記憶を取り戻したって事ですか?」


「そうよぉ。大体100年くらい経ってからだったけどねぇ」


 それはまた、普通なら人生終わってるよ。


「でもねぇ、前世でもアタシは、別に交通事故や突然死だったわけじゃないのぉ。ちゃんと寿命まで精一杯生きて、家族に看取られて亡くなったわぁ」


 家族に看取られて……か。

 それは、良い人生だったんだろうな。


「アタシは良い親じゃなくってねぇ、ずっと研究にかまけてて、夫も子供も、ほとんどほったらかしだったわぁ。だというのに、アタシなんかを大事にしてくれて、死ぬ時なんて、泣いてくれて……嬉しかったのを思い出したのぉ」


「……」


 何て言ったら良いか分からなかった。

 私は三十五年しか生きていない。

 そんな私では、声を掛ける事が躊躇われた。


「だからねぇ、今度の人生では、皆の役に立てるように生きようと思ったのぉ。前世での記憶を頼りに、色々開発していったわぁ。この世界の人達が、幸せに生きられるようにねぇ」


 この人は、凄く立派な人だと思った。

 第二の人生、好きに生きたって良かったはずだ。

 その知識を生かして、どんな生き方だってできたはずだ。

 なのに、その力を皆の為に使っている。

 尊敬すべき人だ。

 そう思った。


「レンちゃん、アタシはね、だからレンちゃんを尊敬してるのぉ」


 え?なんでその流れで私を?

 疑問が顔に出ていたのか、バニラさんが続ける。


「レンちゃんは、この地上を守る為に行動してくれてる。レンちゃんがどう考えているかは分からないけれどぉ、それって凄い事なのよぉ?誰にでもできる事じゃないのぉ」


 そう、なんだろうか。

 私にはよく分からなかった。


「うふふ、だからねぇ。アタシに協力させて?この地上に生きる皆を守る為に、アタシの知識と力を、レンちゃんに使わせて頂戴」


 その、言葉に。


「バニラさん、よろしくお願いします」


 と頭を下げた。

 こんなに凄い人に協力してもらえるなら、こちらから頭を下げるべきだ。

 そう思ったから。


「レンちゃんは良い子だねぇ。礼儀を知ってる。敬う事を知ってる。うん、アタシレンちゃんの事気に入っちゃったぁ」


「バニラさんは、尊敬できる人です。その、行動はハチャメチャでしたけど。でも、心に芯が通ってる。そう感じました。だから……信じます、貴女の事を」


 手を差し出す。

 バニラさんは驚いた顔をしたけれど、しっかりと握り返してくれた。


「よろしくねぇ、レンちゃん。アタシの自己紹介は以上だけれど、レンちゃんの事を聞かせて貰っても良い?もちろん、話せる所までで良いからねぇ」


 そう言ってくれるバニラさんに、私は全て話す事にした。

 この人なら、信じられると思ったから。

 そしてそれは、決して間違いじゃなかったと思う。



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