「しゅるてんとさん」
episode14
「しゅるてんとさん」
ふわふわとした意識の中、床を見ると、
倒れている僕がいた。
どうやら幽体離脱は成功したようだ。
「ふぅ・・・・・、とりあえず幽体離脱は成功だね。だけどこれからが本番だ、ミスを犯せば二度と戻って来れないよ。」
翠先生が僕に釘を押す。
その手にはお守りのような物が握られていた。
「それは?」
僕はそのお守りも指さしながら聞く。
「あぁ、これのことかい?これは幽霊を封じ込めていつでも降霊できるようにした物さ。」
「降霊・・・・・」
降霊。
テレビとかでよく見るが、大抵はフィクションだろう。
こんな事を体感できるなんて花子さんにあとでお礼を言わなきゃ・・・・・
そんなことを思っていると
「それが技術の正体。言わば守護霊ってやつだね。」
翠先生が説明を始めた。
「じゃあ、さっきの花子さんからの攻撃を防いだのも・・・・・」
僕が聞き返す。
翠先生、やはり生前は教師だったのだろうか。
質問に対して、快く回答してくれる。
「あぁ、このお守りだね。僕は戦闘が苦手で他に頼るしかないんだ。君にはこれから地獄と天国の狭間、「シュルテント」に行き、「幽霊の力を抑える」幽霊と契約してもらう。」
「わかりました、それで冥さんを治すと。」
「そうだ。あともちろん、契約が簡単に終わるとは思わない事だね。機嫌を損ねたら喰われてしまうかもしれない・・・・・、まぁ、そうさせないために僕がいるんだけども、もしもの事はある。それでも覚悟を決めたんなら僕はもうなにも言わないよ。」
「決めています」
僕は即答した。
その言葉を待っていたかのように翠先生が空間に手を翳すと、眩いばかりの光とけたたましい轟音が目と耳を劈く。
眩んでしって閉じた目を見開くと、そこには空間が歪んでできたような楕円形の赤黒い穴が禍禍しく開いていた。
「シュルテントに、レッツゴーだ」
僕と翠先生は、その穴に引きずり込まれた。