「ゆうたいりだつさん」
episode13
「ゆうたいりだつさん」
翠先生の顔は本気だ。
少なくとも僕から見て嘘の色は見えない。
だが、決して聞き間違いである可能性を否定してはならない。
あんな態度をとったのだ。覚悟があると思われて当然だろう。
まさか死ぬことは想定してなかったが。
「で、でもそれは流石に・・・・・」
お願いです神様、聞き間違いでありますように・・・・・
「そうよ、おかしくない?」
僕の願いが通じたのか、花子さんが翠先生に向かって反論を口にする。
「あはは、バレちゃった?」
翠先生はまるで反省していない様子で謝罪した。
「いや、そりゃそうよ。先生が言ってるのは「幽体離脱」の事でしょ?流石にそれぐらいはわかるわ。」
良かった、死ぬわけじゃない・・・・・!
「な、なぁんだ、死ぬわけじゃないんだ・・・・・」
安堵の声が漏れる。
「でも死ぬほど危険だ。それでもするかい?」
「でも死ぬわけじゃ」
翠先生が僕の返しを遮り話す。
翠先生は真剣な顔をやめない。
「あえて僕が「幽体離脱」という言葉を使わなかった意味がわかるかい?・・・・・危険だと思われないからだよ。」
翠先生はさらに続ける。
「幽体離脱ってのは遊びじゃない。人の体から生気だけを幽体化して分離させ、仮死状態になることを言う。生半可な覚悟じゃできない。」
「もし、失敗したら・・・・・?」
「身体に戻って来れなくなって、完全に死ぬ。」
―――死。
失敗したら、死ぬ。
まさか僕の親も学校で死ぬとは思わないだろうな。
僕を探すのが大変だよ。
でも
それでも
「・・・・・どうする?」
僕は拳を握りしめる。
「覚悟が、決まりました。」
その言葉を口にした瞬間、
僕の意識は、するりと消えた。




