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ニョーイの星  作者: 木端 貴史
最終章 紳士たちの黄昏
20/21

5-3

 ――同時刻。ドームの屋上。


「ふぉふぉふぉふぉ……。どんどんバラ撒け、皆の衆!」

 神様というか、「尿神」こと長之介が楽しそうに命令していた。銃身(バレル)丸出しで。


「良いのですか、ご隠居。このような真似をして」

 二回戦で伍朗に敗れた尿紳士、鳳凰院もここにいた。同じく銃身バレル丸出しで。


「心配するな、鳳凰院の。日本ニョーイ界の重鎮たるワシが音頭を取っとるんじゃ。誰にも口出しはさせんよ」

「はぁ……。まあ私とて彼らを祝福したいのは同感ですが」


 なぜかドーム屋上には……ざっと数えて総勢十四人。全員が男、というより全員ニョーイスト。表彰台に立つ伍朗と廉士を除いた、三位以下のメンバーだった。

 みな一様に、腰には太く頑丈なロープを結びつけている。なにせ足場の悪い高所なのだ。滑落(かつらく)防止用だろう。

 そう、伍朗たちを祝福した雪の正体は――ニョーイストが互いに放尿(ビーム)をぶつけ合い、飛沫が雪の結晶を作り出した人工の――いや「人尿」の雪だったのだ。


「ふぉーふぉふぉふぉふぉ。これぞシーズン限定の合体奥義『ホワイト・クリスマス』じゃ! ニョーイストにとって、これ以上の祝福はあるまいて! ふぉーふぉふぉふぉふぉふぉふぉ!」

 高笑いする長之介。

「ん? どうしたんじゃ鳳凰院の、それにダニエルの。皆の衆も。放尿(ビーム)の勢いが落ちておるぞ」

 ここに集めた連中は、この程度で残尿(ざんだん)が尽きる手練れではあるまいに。


「……あ、いや、ご隠居……う、う……後ろ……」

「ふぉ?」

 鳳凰院がブルブルと震える指で、長之介の背後を指さす。

 そこには――全身漆黒のメイドがいた。

 安全用ロープも何も身につけず、ただ己の足のみでドーム屋根を踏みしめる。


「皆さま揃って、どちらにおいでかと思えば……そのようなお(たわむ)れを……」

「ふぉふぉ、ふぉ……。まあ落ち着けメイドさんや。これはニョーイストとして最大のなぁ……」

 ごきっ、ごききっ。

 指の骨を鳴らす音が夜空に響いた。わりとリアルな殺意を伴って。

「ま、まってくれ。これはご隠居の命令で……我々は仕方なくっ!」

「一人あたり完全(チン)黙まで二秒として……ああ、意外に短いですね。三十秒あれば済みますか」

「きっ、聞く耳持ってねぇぞ!?」

 日本を代表する屈強なニョーイストたちが、情けないほど慌てふためいている。

「やむを得ん! 皆の者、一時撤退じゃ!」

「無理ですよご隠居っ! ロープで体固定してるじゃないですか!」

「ふぉー!? そうじゃったァ!」

「――では参ります。『冥土フィンガー終焉式アポカリプス』! お嬢様に尿を浴びせるとは何事ですかーーーっ!!」

「「もんごめりっ!?」」


「……あれ?」

「どうしたゴロー?」

「いや、なんかさ……雪の色が赤くなった」

「?」


【大会結果】

 第一回 全日本ニョーイ選手権大会

・参加者数…四百九十二人

・総観客数…五万二千七百三十七人(立ち見を含む)

・優勝者名…前出 伍朗(日本橋ニョーイジム所属)

・入院者数…十四人

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