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フェイズ・ジョーカー  作者: ナイトレイド
魔法使いと傭兵のダブルクライシス
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七月四日

七月四日 PM18:10 草薙家


 ビャクオウは相手の出方を待っていた。


『(相手が未知数すぎるのは当然ですが・・・・さっきから感じているこの奇妙な感覚は何だ?)』


 ひしひしと体に伝わるプレッシャーにビャクオウは魚座の魔法使いの出方を待つ。


「・・・・つまらないな」


 出方を待っていると小さく魚座の魔法使いは呟いた。


 ビャクオウが疑問の表情を浮かべていると、一瞬で眼前に姿を見せる。


『(視えっ!?)』


「全力で俺と戦ってもらおう・・・・でなければつまらない!!」


 魚座の魔法使いがグルンとビャクオウの体を撫でるように動かした瞬間、全身から力がわきあがってきた。


『これは!?』


 ビャクオウの純白の装甲が漆黒に染まり、血のような赤いラインが走っている状態になる。


 真の混沌の使者、ケイオスモードへと強制的に変えられてしまう。


「これぐらいは強くなってもらわないと意味がない!さぁ・・・・俺を楽しませろ!」


『貴方、私以上に壊れていますね!』


 笑う魚座の魔法使いの瞳は本当に楽しそうにしている。エリックは改めて目の前にいる魔法使いと言う存在の異常性に気づく。


 獅子座の魔法使いもそこそこ異常ではあったが、目の前の魚座の魔法使いはその上を行く異常性だとわかる。


 だが、これはチャンスだとエリックは考えた。


 この世界で大きな力を使えるかどうかわからない点があったが強制的に使われたのなら使わせてもらおうと魚座の魔法使いに向かってブラックインフィニティーの斬撃を放つ。


 刃がぶつかる直前、衝撃がビャクオウを襲う。


『がはっ!?』


 吐血してビャクオウは近くの空き地に体を叩きつけられる。


「何が起こったのかわからないという表情をしているな混沌の力を持つ者よ」


 見下しながら魚座の魔法使いは喋る。


「それが実力の差っていうヤツだ。お前の力は存在している世界なら最強に匹敵するんだろう・・・・だが、それはその世界での話し、この世界ではお前よりも強大な存在はうじゃうじゃいる」


『だから、勝てないというつもりですか?』


「いいや」


 ビャクオウの言葉を魚座の魔法使いは否定する。


「この世界に絶対なんてものは存在しない。慢心しているヤツは下からくる、自分の力に溺れているやつは容赦なく消え去る。だからさぁ」





――強いヤツと戦って楽しみたい、と魚座の魔法使いは告げた。






「強いヤツと戦っていると俺の存在がどういったものなのか教えてくれる。強いヤツとの戦いほど楽しいものはない!俺は戦い続けたい」


『魔法使いというのはどいつもおそろしく強くて狂っているんでしょうかねぇ?』


「安心しろ、“まだ”いないさ、俺以外はな」


『成る程、それは安心しました・・・・てめぇを叩き潰したらこの世界でも俺は最強になるってことだよなぁ!』


 エリックは強者と戦う事を望む。


 色々とあって薄れていたが己の中に眠る闘争心は止まる事をしらない。ふつふつと煮えたぎるマグマのように湧き上がる力を感じながらビャクオウはホワイトスイーパーとブラックインフィニティーを構える。


『ビャクオウ、それがお前を地に叩き伏せてやる存在だ、しっかりと刻め』


「楽しませてもらうぞ。ビャクオウ!」


 同時に魚座の魔法使いは全身を覆う鎧に身を包み、ビャクオウとの戦いを再開する。



































「あの白いのちゃんとやってんだろうなぁ」


「エリックのことか?アイツのことなら問題ないって、ゲイルと同じくらいの強さをもっているからな」


 狩谷はエリックの性格を好まないがその強さは知っている。


 苦戦していた強敵をあっさりと退けるほどの強さを持っている彼が負けるはずがないという絶対的な自信は信頼からきていた。


「・・・・信じているといいたいのか?」


「当たり前だろ?俺達はいくつもの修羅場潜り抜けてきているんだから」


「そーゆうもんかねぇ」


「お前は、どうなんだよ?」


 安倍が運転しているバイクの横で狩谷は尋ねる。


「あ?」


「獅子座の魔法使いのことだよ。聞いた話だと何度か戦っているんだろ?」


「バカいってんじゃねぇよ」


 冷たい声で安倍は否定する。


「さっきも言ったが俺はアイツを駒としか見ていない」


「なんでだよ」


「・・・・そこまで話す必要性がねぇな」


 狩谷の質問に安倍はそれっきり答えない。


 そう、異世界からきた連中に自分の失敗談を話す必要はない。今、安倍がやらないといけないのは最愛の妹、早苗の魂を取り戻す事のみ。


 アクセルを回して安倍は目的地に向かう。














「見つけたぞ」


 一足先に目的地である空き地に辿り着いたゲイルは素顔をさらけ出しているクヴァシルを見つける。


 クヴァシルは笑顔を貼り付けたような表情でこちらを見ていた。


「いやぁ、よく来ましたね・・・・予定通りにきてくれたので少し話す時間があります。何か言い残しておく事とかはありますか?」


「特にない・・・・といいたいが一つ聞きたい、お前の目的はなんだ?」


「定番ですね・・・・まぁ、予定通りなので教えて差し上げましょう。何、簡単なことです。私の目的は世界のリセットですよ」


「リセット?」


「この世界は酷く不均等になっている。国の文明の発達、一人の人生、戦争、テロ、飢餓、未知のウィルスなどなど、この世界は酷く不安定で脆い。どこか突いてしまえばあっさりと崩れ去って色々な事が起こる。革命、大恐慌、災害、これらがいい例ですけれど、すぐにこれらが起こるというわけではない、そこで」



――魔女を目覚めさせる事を思いついたとクヴァシルは手を広げる。




「古くから魔女は恐怖の対象として怖れられている。魔女狩りなどがいい例でしょうね。しかし、あんな偽物と本物は比べるまでもないほどに力を有している。魔女一人いるだけで世界の半分は壊せる・・・・ですが、問題があったんですよ」


「問題、だと?」


「魔女になる魂は純粋でないといけない。純粋な魂が必要なんですけれど、この世界で純粋な魂はかなり限られていましてね。異世界で純粋な魂があるというのを聞きましてね・・・・」


「だから、アンジェを狙ったというのか?」


「そうですよ」


 最後まで聞く必要がないとゲイルは判断してガンブレードを振り上げる。


 クヴァシルに刃が振り下ろされる瞬間に、見えない壁に阻まれた。


「ちぃっ」


 そのまま押し切ろうとしたところでグランバニッシャーに横から殴られる。


 地面を転がりながらゲイルは起き上がって身構えた。


「まだ話の途中なんだけどなぁ・・・・まぁいいか、キミのお友達も辿り着いたみたいだし」


 瞬間、グランバニッシャーにバイクが激突した。


 グランバニッシャーはバイクを拳で粉砕して破壊する。


「ゲイル!!」


 狩谷の叫びを理解してゲイルは後ろに大きく跳ぶ。


「俺のバイクゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!?」


 安倍が悲鳴を上げて壊れたバイクの事を嘆き、狩谷の胸倉を掴む。


「てめぇぇぇ!?二代目なんだぞぉ!この野郎なんてことしやがんだぁあああ!」


「・・・・まぁ、いいじゃん」


「よくねぇよ!?」


「・・・・いやぁ、楽しい漫才ですねぇ」


 パチパチと拍手をするクヴァシルに安倍と狩谷はぴたりと動きを止めて、仇敵をみるような視線を向けた。


「怖いですねぇ・・・・」


「全てはてめぇが元凶だ」


「いやいやいや、貴方の隣にいるでしょう・・・・さて、時間も押していることですし」


 パチンと指を鳴らすと唸り声を上げてグランバニッシャーがバイクの残骸を蹴散らして三人に近づいてくる。


「アイツを殴り飛ばすにはこの敵をなんとかしないといけない」


「けどよ、アイツかなり強いぞ・・・・その間に、クヴァシルが儀式を始めたらどうするんだよ?」


「俺に提案がある。お前ら、五分ほど、時間を稼げるか?」


「五分だな」


「何かわかんねぇけど、了解」


 手段が思いつかないゲイルと狩谷は安倍の言葉に頷いてガンブレードと鎌を手にグランバニッシャーと対峙する。


 グランバニッシャーは両手にカタールを生み出して地面を蹴った。


 途中でゲイルはアデルに変身し、イグニスドライブを発動し炎の一撃をグランバニッシャーに仕掛ける。


 攻撃をよけた所で狩谷の攻撃がわき腹に深く突き刺さった。


 グランバニッシャーは突き刺さった鎌を掴むと狩谷ごと空に向かって投げる。


 投げ飛ばされた拍子に狩谷はポケットからスタングレネードを投擲した。


 事前に空子から渡されたグレネードが炸裂してグランバニッシャーの視界が黒に染まる。


 戦っている三人を他所に安倍は懐から水の入った瓶と塩を取り出して地面に置く。


「(今回は一発で成功しないといけねぇんだ・・・・早苗の魂取り戻すためにもなぁ・・・・だから・・・・・・)」


 地面に陣を描き終えると祝詞を唱え始める。


 体内の力が物凄い勢いで消費されるのを感じながら安倍は一心不乱に唱えた。


「【来ぉぉぉぉぉぉぉぉい!】」


 視界を回復させたグランバニッシャーが顔を上げると空が割れて、そこから“巨大な足”が見えた。


 咄嗟に盾を展開して防ごうとしたがそれよりも速く“足”に踏み潰されてしまう。


「はぁ・・・・はぁ・・・・くそったれ、渋った末に足だけかよ・・・・クソ亀野郎・・・・ごほごほ!」


 激しく咳き込んで安倍が肩膝をつくと足はずずずず、と音を立てて割れた空間の裂け目の中に戻っていく。


 アデルはゆっくりとグランバニッシャーに近づいた。


 かなりの威力で踏み潰されたのかグランバニッシャーの両腕はありえない方向に折れて、足は千切れていた。


 ガンブレードを手にアデルは刃で腹を掻っ捌く。


 どろどろした粘液をどけながら漆黒の両手はやがて、一人の少女を見つける。


「・・・・」


 サイボーグソルジャーの聴覚が規則正しい呼吸音を捉えた。


 まだ生きている事に安堵してアデルが彼女を外へと取り出そうとする。


 体内に手を入れた途端、折れたはずのグランバニッシャーの腕がアデルを捕まえた。


『なに!?』


「ゲイル!!」


 異変に気づいた狩谷がアーミースキルを用いて、腕を引き剥がそうとするがびくともしない。


「さっきよりも強度があがってる!?」


『・・・・フ・・フッフッフフフフフフフフ』


 起き上がったグランバニッシャーの口が不気味に笑い出す。


『くっ』



『お兄ちゃんの体を貰うよ?』



 瞬間、掻っ捌いた箇所が大きく開いてアデルを飲み込んでしまう。


「ゲイルゥゥゥ!」


 狩谷の叫びが響く前で、グランバニッシャーの体が変化する。


 皮膚に漆黒と赤いラインが入り、伸びている尻尾は刺々しいものへ。複眼が緑色に変色していく。


 やがて、背中に漆黒の翼を生やした悪魔が誕生する。


「この時を待っていたんですよ!アデルの・・・・邪神の力をグランバニッシャーが取り込むことでさらに強力なカオスバニッシャーへと進化する!これで、貴方達に勝機はない!私の計画を揺るがすものは存在しなくなるのですよ!!」


「ど・・・・どうなってんだ?」


『邪魔だよ、キミ』


 動揺している狩谷の眼前にグランバニッシャー、否、カオスバニッシャーが現れる。腕が黒い炎に包まれると、変化してプライドソウルを模した刃になるとそのまま腹に突きたてる。


 咄嗟の事に反応ができず、刃が狩谷に迫ろうとしていた。


「【後ろに跳べぇ!!】」


 ぐん、と狩谷の体が後ろに引っ張られるように大きく跳躍する。


 刃は服の表面を斬るだけに終わった。


「油断してんじゃねぇぞ!?このド阿呆」


「す、すまん・・・・って、お前」


 助けてくれた事に感謝しようとした狩谷は安倍の状況を見て、息を呑んだ。


 安倍彦馬は口から沢山の血を吐き出していた。


 彼が座り込んでいる地面に血溜りができている。


 狩谷は驚いて彼の手当てを仕様とするけれど、その手を安倍が跳ね除けた。


「俺の、手当てなんざいいんだ・・・・それよりも、あの野郎をなんとかすることを考えろ・・・・はっきりいって、状況はかなり最悪だ」


 ぜぇぜぇいいながら安倍はこの状況を打開する為の手段を考えろという。


 はっきりいって、状況は最悪を通り越して絶望的過ぎる。


 かなりの戦力となるアデルが敵に飲み込まれて、グランバニッシャーがさらに強くなった。


 対して安倍彦馬は奥の手を使用したことにより力が術式を使うほどの力が余っていない上に、言霊の力も弱い。


 狩谷は大きな怪我はないが、カオスバニッシャーと互角に戦えるほど強くはない、ないない尽くしに涙がでそうになるほど、最悪な状況過ぎた。















『・・・・ん?』


『よそ見するとは余裕じゃねぇかぁ!』


 ビャクオウが動きを止めた魚座の魔法使いに向けて、ホワイトスイーパーとブラックインフィニティーを合体させて、ギャラクティックエンドジェノサイダーを放つ。


『おっと』


 余所見をしていた魚座の魔法使いは反応に遅れて光の中に消える。


 これで少しはダメージを食らっただろうとエリックが思っていると煙の中からゆっくりと魚座の魔法使いが姿を見せた。


『これほどとは・・・・』


 最強の状態といえるビャクオウの攻撃を受けても魚座の魔法使いはぴんぴんしていた。


『もっと、楽しみたい所だが、予定が変わった・・・・どうやらガーネットの枝の力を強制的に引き出している者がいる・・・・』


『ガーネットの枝ですって・・・・あれはただのダイヤですよ』


 エドガー学園長が散々、調べた末に導き出された結果だ。


『ただのダイヤ?いいや、違う・・・・あれは欠片なのさ』


『欠片・・・・どうゆう意味です?』


『おっと、これを話した所でキミ達が獅子座に話さないとは限らない・・・・目的を果たす為にここは失礼させてもらうよ』


『行かすと思いですか?』


 合体させた武器を構えてゆく手を阻もうとするビャクオウに魚座の魔法使いは小さく笑う。


 小さく笑っただけだというのに体が、本能が警鐘を打ち鳴らす。


『ガーディアン・ギアだけで相手をしてやるつもりだったが気が変わった。お前に教えてあげようじゃないか、我々魔法使いのおそろしさというのを・・・・っ!』


 魚座の魔法使いが何かをする素振りを見せた途端、彼の周囲を囲むように水色の壁が現れた。


『これは・・・・?』


『邪魔だ』


 壁を壊そうと魚座の魔法使いが拳を繰り出すが、威力が全てあたった途端に吸収されてしまう。


『この力・・・・アクエリアスか!? 邪魔を』


 魚座は苛立ちを混ぜた声を放ち、壁を壊そうとする。


 しかし、どれだけ殴っても壁は壊れない。


『・・・・やめだ』


『・・・・・・・・』


 魚座の言葉にビャクオウは無言で返す。


『欠片が破壊されるわけではないから、ここでしばらく様子見でもさせてもらおう』


『あっさりと引き下がるのですね』


『ここにいる奴らでは欠片の力を引き出すことは出来ても使いこなす事はできない・・・・消耗しきった所を潰して回収させてもらうよ』


『(これで、こちらの足止めはすみました・・・・早くしてくださいよ)』


 動かなくなった相手に警戒しながらもエリックは彼らが早く終わらせる事を願った。



















「はははは、誰も・・・・止められない」


 クヴァシルは楽しげな声を漏らしながら作業を始める。


 懐からいくつもの小瓶を取り出して地面に撒き散らす。


 流れ落ちた液体はまるで生き物のように動き、地面に大きな模様を描き始めた。


「これから始まる、僕を虐げたことを後悔させてやる」


 模様が完全に出来上がるのを眺めながらクヴァシルは憎悪にゆがめた笑みを浮かべた。


 彼の中を支配している感情は復讐心。


 天才である自分を虐げた魔術結社、及び異端として追いかけてくる騎士団の連中、そして、自分を認めなかった世界に復讐するべくクヴァシルは懐からふわりと宙に浮きはじめる二個の魂、アンジェ・ティーリと安倍早苗の魂を眺めながらほくそ笑む。


「異世界のさらに異質な存在の女と山神を抑えるために鍛えれられた姫巫女の魂、穢れていないのが残念だ」


 魂を掴もうと手を伸ばすけれど、逃げるように二つの光は離れる。


 ぴくりと口元を歪めながらクヴァシルはある方向を睨む。


「さて、そろそろエイレーネさんに来てもらおうか・・・・迎えにいってもいいんだけれど、予想外の事があっても困るからねぇ・・・・彼女の方から来てもらおう・・・・そう思うだろう?キミ達」


 クヴァシルは地面に倒れている狩谷信介とカオスバニッシャーによって頭を踏まれている安倍彦馬に尋ねる。


 狩谷は胸から腹にかけて赤い液体の染みが広がり、安倍の服は全身を切り刻まれて額から血が流れていた。


「て・・・・めっ」


「あぁ、キミ達はそこで見ているといい。魔女が生まれる瞬間を見せてあげるよ」


 微笑んでクヴァシルは準備をする。


 最後の贄がこの場にくるようにするために。


「だせ」


 カオスバニッシャーに指示を飛ばすと、形成されていく陣の中心に立ち、体を地面に向ける。


 腹が風船のように膨れ上がると、そこから取り込んでいた羽鳥天月を吐き出す。


 粘液のようなものと一緒に吐き出された羽鳥は投げ出される。


 粘液が混じって汚い羽鳥をみて、クヴァシルはひくひくと口元を歪めながら近づいていく。


「汚い・・・・」


 粘液の混じった髪の毛を掴んだクヴァシルは吐き捨てて頭を空へ向けさせる。


 片目の瞼をあけて瞳孔を確認すると手を離す。


「あー、汚い、汚い」


 ローブで手についた粘液を払い落としながら空間に術式を展開させる。


「反射神経、肉体の強度、精神面・・・・なかなかの素材だなぁ」


 笑いながら片手で別の術式を展開させると顔を向けた。


「これが見えているかなぁ?ミス・草薙ィ」


 口元に笑みを浮かべながら術式の向こうにいるであろうエイレーネに問いかける。


 クヴァシルはこれからみせるであろう彼女の表情を想像して楽しそうに笑う。


















『これが見えているかなぁ?ミス・草薙ィ』


 草薙家の屋敷、縁側で魚座の魔法使いとビャクオウの戦いが一段落着いたところでいきなり、彼女達の前に術式が現れた。


 そこに映っていたのはクヴァシルの狂気に歪んだ顔。


 通信用の術式にエイレーネ達は黙ってみていた。


『聡明なキミなら私がこれから何をしようとしているのか理解できるよね?』


 クヴァシルの言葉にエイレーネは声をあげずに目を見開く。


 予想ができた。


 映像の向こうにいる彼が何を言おうするのかをだ。


『心が清らかなキミのことだ・・・・これを阻止したいと思うならすぐにこっちにくるんだ。キミ独りでね、でないと――』


 クヴァシルは懐からどす黒い水?のようなものを取り出す。


 空子はわからなかったが強度な保護術式によって黒い水は守られていた。


『これをうっかり小娘の頭に落としてしまうかもしれない・・・・十分待ってあげるよ、いい返事がもらえると嬉しいな♪』


 用件を伝えるとクヴァシルは通信術式を切った。


「・・・・空子さん・・・・」


「ダメよ」


 エイレーネのいおうとしたことを察知している空子は却下する。


 彼女の言おうとしている事は理解できた。


「ヤツの狙いが貴方だっているのはわかってる・・・・むざむざいかせるわけないでしょ」


「でも、このまま放っておいたら彼女が・・・・」


「・・・・お嬢様?」


「何をそんなに焦っているの?あの水が何か知っているみたいだけど・・・・」


 空子はちらっ、とみただけであの黒い水がなんなのかわからない。


 エイレーネは目をそらしてから、震える口を動かした。


「あれは、オチミズと呼ばれているもの・・・・・・・・人を魔女へと変えてしまう禁薬です」


『ほぉ、オチミズか・・・・成る程、あの薬ならば高確率で魔女として覚醒するかもしれないなぁ』


 エイレーネの言葉に誰よりも反応したのは意外にも空中に閉じ込められている魚座の魔法使いだった。


「ですが、あれの製造は禁止されているはず・・・・方法も闇に抹消されているはず!?」


 メイドは戸惑いながら尋ねる。


「闇から取り戻されたんです・・・・・半年前に、あの人が葬られたはずの方式を見つけ出してオチミズを製造したんです・・・・あの時、全てが破壊されていたと思っていたのに、まさか残っているなんて」


『あの水ならば、素質がなくともさっきの女は魔女になるだろうな。この土地の穢れ具合からして失敗しても面白いものができあがる』


『少し・・・・黙ってろ』


 ビャクオウが結界の中の魚座の魔法使いに殺気を飛ばすと、やれやれという表情をして黙り込む。


「・・・・空子さん、協力してくれますか?」


「何か、考えがあるの」


 空子の問いにエイレーネは静かに頷いた。




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