七月三日
今回からロムスカ王さんのメタルデビルズとコラボすることになりました!!
七月三日 PM22:15 廃ビル。
壊れた夏という史上最悪のテロによって日本は壊滅的な打撃を受けてしまった。
テロが終わって、既に一年が経過しようとしているが、復興を終えたとはまだまだいえない状況にある。
横坂市は内戦後に生み出された最新技術が集った都市であるが、そこから離れた所では爆破によって半壊したビルやドロドロに溶けた電柱の残骸など、痛々しい光景が残っている場所がまだまだ存在しており、復興の目途はたっていない、そもそもテロや続いて起こった内戦によって日本の財政はほとんど底をついているのに等しい。横坂市を作れたのは奇跡と言っていい。
街の残骸といえる場所で、彼らは戦っていた。
ビルの間をまるで飛ぶように動きながら、赤い瞳は飛来するミサイルや弾丸を避けていく。
それは一見すれば、黒い竜人という言葉が似合う。
竜人の名前はアデル、メタルデビルズと呼ばれる改造人間であり、こことは違う世界で戦い続けている者である。
リボルバー式のガンブレード、プライドソウルを使って、襲い掛かってくる白い装甲をまとった兵士達を一撃で無力化させていく。
アデルの頭上に上空から大量のミサイルが降り注いでくる。
「うぉおおおおおおおおおおおおおお!」
アデルは叫びながらイタカウィングを呼ばれるブースターを展開しミサイルの中を潜り抜けて、戦闘機を叩き落す。
パイロットが脱出したのを赤い目で確認しアデルは残りの敵を無力化させていく。
圧倒的強さを持つアデルと戦っているのは対特殊生物殲滅自衛隊、通称、対自と呼ばれる自衛隊の特殊部隊。
彼らは内戦の中で発生したバイオテロなどで生み出された合成獣の殲滅を第一とする組織であり、従来の武器よりもハイテクなものを使用している。
化け物を殺すプロをアデルは奥の手を使わずに圧倒していた。
このまま、包囲網から脱出しようとしていたアデルは飛来した、槍をプライドソウルで弾き飛ばす。
「全く・・・・」
聞こえてきた声にアデルが視線を向けると包帯を巻いた火町塔志郎〈ひまちとうしろう〉がメガネを掛けなおし半分壊れているビルから見上げていた。
「病人を無理やり動かすとは特別手当を請求したいところです。そうだと思いませんか?」
「・・・・」
「この世界には何を目的でやってきたのですか? 言葉が通じるのでしたら今すぐ武装を解除してください。話し合いのテーブルを用意することを約束します」
動きを警戒しながら火町は尋ねる。
相手の動きにおかしなところがあれば、すぐに動けるように・・・・。
「――――を知っているか?」
「はい?」
突風が吹いて、前半の言葉が掻き消える。
何を言ったのかわからず、火町はもう一度問う。
「――相馬ナイトを知っているか?」
半歩、足が後ろに下がってしまう。
それほどまでにアデルの声には怒気と殺気に満ち溢れていた。
「・・・・その人物を見つけ出してどうするつもりですか?」
表面上、冷静を装いながら火町は問う、だが、頭の中ではどうゆうことだという疑問が浮き上がっていた。
反応が確かなら、目の前にいる竜人は、こことは全く違う世界から来た存在のはず。
――私とは違う世界の力・・・・。
火町を含めた数人は自分達が住んでいる世界とは異なる世界に飛ばされた。
飛ばされた世界で、血反吐を吐くような思いをして、契約を結んだ事によってこの世界に戻る事ができた。契約の影響で火町は特殊な力を使う事が出来る。
最初は、自分と同じように別世界に飛ばされて戻ってきたのかと考えていた。けれど、遭遇して理解した。
――コイツは、自分達が飛ばされた世界から戻ってきたんじゃない。別の世界からコッチの世界に飛んできたんだ、と。
少し前に異世界から侵入した最強の存在の事を思い浮かべながら火町は顔をしかめる。
自分達の知っている世界にない力。そんな力を持つ存在の口から彼の名前が出たのだろうか。
「奪われたものを取り返す」
「・・・・奪われたもの?」
アデルの言葉に火町の眉間に皺がよる。
「貴方は、彼に何を奪われたというのですか」
ぞわり、と殺気が増して、火町はその場から離れる。
――轟音。
大地を真っ二つに裂けてしまいそうな威力の拳が火町のいたビルに叩き込まれた。
ビルはがらがらと土煙をあげて倒壊する。
アデルの拳の破壊力に体から冷や汗が流れ落ちていく。
「・・・・相馬ナイトはどこにいる? お前はヤツの行方を知っているんだろう」
どうやら、さっきの会話の中で火町が相馬のことを知っていると感づいたのだろう。
さっきよりも濃度の高い殺気がぶつけられる。
知らない、といっても向こうは聞き入れてくれないだろう。
「仕方ありませんね」
火町はメガネを外してポケットの中に仕舞う。
刹那、
火町の周りから無数の武器が姿を見せた。
「・・・・異能か?」
「少し近いですけれど、違います・・・・さて、一応、警告しておきます。大人しく元いた世界に戻ってください。でないと、我々は貴方を排除しないといけない」
武器再現領地から再現した剣を一つ、手に取り、切っ先をアデルに向けた。
「誰が!」
アデルは地面を蹴り、沢山の武器の中へと突っ込む。
羽鳥天月は目の前の存在に疑問を抱いていた。
彼女は対特殊生物殲滅自衛隊に所属している。
対自のメンバーは内戦後に生み出された未知のウィルスによって異能の力に目覚めた人間によって構成されている。
そんな羽鳥は目の前にいる敵を敵として認識するのに少しばかりの抵抗を感じていた。
上層部からの命令で彼女が所属する第八部隊はテロを起こす危険のある不穏分子を無力化させることを目的としている。
「(・・・・でも)」
目の前で仲間達と戦っている不穏分子は自分と同じくらい、もしくは少し上くらいの年齢の男女二人組み。
一人は死神の鎌のような武器を片手に電磁警棒を持っている仲間を次々と無力化させていく。
羽鳥は体を少しずらす。
数秒後、彼女の後ろのコンクリートの床が大きく音を立てて抉れた。
羽鳥は纏っているバイザー越しに遠くを見る。
ミュータントとしての力が発動している羽鳥は離れた所で対戦車を構えている少女の姿を捉えていた。
2kmという距離からの狙撃を平然と行えることに戦慄しながらも羽鳥はスナイパーの少女を無力化させるために自身が纏う龍機・壱式の両肩に装備されているミサイルランチャーの照準を向ける。
直撃しないように操作しながら無数のミサイルがスナイパーの方へ放たれた。
だが、少女は逃げない。
それどころか、ライフルの銃口を無数のミサイルへと向けている。
「(なっ!?)」
ライフルの射線上にあったミサイルのほとんどが次々と消滅していく。
あの対戦車ライフルは普通の武器ではないのだろうか?と疑惑を抱きながらもミサイルパックの後部についているバーニアを噴かしスナイパーの方へ向かう。
「・・・・・・」
「?」
バイザー越しにスナイパーと目が合う。
目が合ったことに気づいたのか、自分とさほど、歳の違わない少女はぱくぱくと口を動かす。
なんだ?と羽鳥はスローモーションに動いている口の動きを目で追う。
「後・方・注・意」
「!!」
背後にぞわりと、嫌な予感がして振り返る。
同時に、バイザーの中で警報音がなりだす。
先ほどまで電磁警棒を持った仲間と戦っていた男が黄色の鎌を振り上げている姿が目に入る。
手の中にあるアサルトライフルを構えようとするけれど、間に合わない。
羽鳥と鎌の間に、割り込む姿があった。
「うぉっ!?」
不意打ちを仕掛けた襲撃者は驚きの声を漏らして、地面に叩きつけられる。
「寝不足、肌の、敵」
ゴシック調の衣装を着て、眠たそうな顔をした少女、曙リーサは自分の体より大きな処刑鎌を手に持ってふわぁーと欠伸を噛み殺す。
「うわっ、でけぇ武器だな」
「お前、ダブってる、それはダメ」
「・・・・そういわれても、これが俺の使用する武器なわけで・・・・」
「気に入らない、拘束する」
「どうしてそんな流れになる!? 武器が似ているだけでか!・・・・職権乱用にもほどがあるぞ!?」
「うるさい、私が正義、多分」
「断定すべきだろ!」
襲撃者の叫びにリーサは可愛く首をかしげながら処刑鎌を構えて、襲い掛かる。
「がはっ!?」
ガラスが砕け散る音と刃が折れる音が混ざり合ったような音が周囲に響き渡る。
苦悶の表情に顔をゆがめながら地面から生えていた槍を手に取ろうとした。
しかし、それよりも早くアデルの刃が槍先を切り落とし、火町のわき腹を抉るような蹴りを放つ。
皹の入っていた肋骨が折れて、口から血を吐き出し、ごろごろとコンクリートの床の上に転がり落ちた。
「・・・・答えろ、相馬ナイトはどこにいる?」
赤い瞳で火町を見下ろしながら刃を突きつける。
「がはっ・・・・ごほっ、おほぅ」
血が混じった唾液をはきながら火町は周囲に目を向けた。アデルによって再現した全ての武器が破壊されてしまい、使える武器がない。
「答えろ、ヤツはどこに――」
尋問していたアデルは気配を感じて後ろに下がった。
「ふん!!」
アデルのいた場所が陥没して、土埃が巻き起こる。
「・・・・新手か」
「まぁ、そんなところだな」
火町を庇うようにして立っていたのは長身二メートルを超えそうな大男。
学生らしいというのは着ている服で判断できたが、問題はその男がこれといった武器を装備していないという事。
装備なしでコンクリートに大穴をあけていたという事実がアデルに警戒心を生み出している。
「副会長、無事か?」
「鬼林君、どうしてここに?」
火町は、彼がどうしてこの場にいるのかわからず、戸惑いの声を漏らす。
彼はもう一人のメンバーと一緒に、別のポイントに現れた存在の対処に向かっていたはずだ。
「いやぁ、それが白い姿に変身したと思ったら逃げられての」
「・・・・何をやっているんですか、キミは」
「まぁ、勘弁してくれや。さて・・・・」
鬼林は鋭い目でアデルを睨む。
「俺の名前は鬼林林蔵、お前はどれだけ強い?」
「悪いが、お前の相手をしている暇はない・・・・相馬ナイトを知っているか」
「ん・・・・知らんな」
「ならば、邪魔をするな!」
アデルが激昂し鬼林との戦闘が始まった。
「いいの?」
「どういう意味?」
アデル達が戦っているのを遠くから紫色の髪を風で揺らして隣にいる真っ黒に尋ねる。
「そのままの意味だよ。これは計画になかったこと」
「だって、計画を狂わされたんだよ。こうなるのは仕方のないことだ、でも、大丈夫」
真っ黒はパチンと指を鳴らす。
「・・・・それは?」
「向こうにあって忘れ去られていたものを“偶然”手に入れて作り上げたものだよ。あそこで戦っているメタルデビルズだっけ? あれよりも強いかもしれない、それにぃ」
懐からガーネットの枝を取り出して、グジュンと中に押し込む。
ソレは獣のようにくぐもった声を漏らす。
「ここまで面倒なことになったんだ。仕返しにアイツも呼び寄せて手伝ってもらおう・・・・私の計画を狂わせた罰を味あわせてやる」
底冷えする声に真っ黒の隣の少女はやれやれ、と肩をすくめる。




