六月一日
六月一日 AM8:35 国友高校グラウンド前
六月一日、それまでにいろいろなことがあった、まずは途中退室したことでの教師からの質問攻め、コレに関しては事前に打ち合わせをしていただめに大きな問題はない。
余談だが、権田とその取り巻き達は風紀委員に現行犯で取り押さえられて四週間の停学と反省文30枚の刑に処されたらしい。ざまぁみろと被害者を含めて全員がしばしの平和を喜んだ。
もし、問題があるとしたら。
「“ナイト”君~~~!」
どしん、と腕に衝撃が走る、隣を見るとにこにこと笑顔を浮かべている剣立鳴海がいた。
芳養麻からの依頼でそれとなく剣立の護衛をするつもりだったのだが、あの事件からどういうわけか別人みたいに積極的に話しかけてくる。
「おう、剣立、どうしたんだ?」
純心無垢な子どもみたいな笑顔を向けられて、少し前の剣立の表情の違い、いわゆるギャップの差がまだ慣れなくて少し戸惑った声が出る。
「今日は二人で一杯楽しもうね!」
「お、おう」
二人のところを強調して嬉しそうにしている剣立をみていると何故か背中に寒気が走ったけれど、それは変化に戸惑っているからだろうと納得する。
「ねぇ、ナイト君、バスなんだけど、一緒の席に座らない?」
「すまないんだけど、俺は」
「一緒の席に座らない?」
「・・・・・・」
「座らない? くすくす」
「・・・オーケー、わかった」
「・・あ、先生に呼ばれているからいくね?」
ぴょこぴょことスキップしながら剣立は離れていく。
剣立がいなくなると体にドッと疲れが降ってくる。
オリエンテーションがまだ始まっていないのにこれか、とため息が出そうになった。
おどおどしさがなくなった剣立は、悪く言えば相馬限定で独占しようとするような態度を度々することが多くなった。
「(鎖音原には悪いけれど、断りいれとくか)」
浮き足立った表情のクラスメイト達はグラウンドの前に停車しているバスを見て子どもみたいに騒いでいる。
「いや、騒ぐのは当然だよな」
子どもみたいに騒いでいる仲間を見ながら手元にあるパンフレットを覗き込む。
パンフレットには当日の流れや必要なもの、諸注意、必要なもの、そして行き先の住所など。
「なーに、熱心に見てんだ?」
「今日の行き先とか色々だよ、何度も目を通しているんだけど、やっぱり信じられないな」
「まぁ、だから皆浮き足立っているんだよな。当日になっても信じらんねぇよ、行き先が大江戸村だってな」
大江戸村、近年減少の一途を辿っている時代劇という文化を失わせないようにという考えが強まり、京都にあった映画村という場所を、未開拓地に移してさらに規模をでかくした都市。
それが大江戸村。
「あ、鎖音原、悪いんだけどさ、バスの座席の事で」
「そのことなんだがな。俺さ、他のヤツとの席になっちゃったからさ、剣立と一緒になってやってくんないか?」
「ん・・・あ、あぁ」
「それじゃ、向こうに着いたら合流しようなー!」
「お・・・・おう」
爽やかな笑顔で去っていた鎖音原に手を振りながらぽかんとした表情になった。
剣立と座る事になったと謝罪を入れようとしたら逆に鎖音原から謝罪されたのが驚いた。
「まぁ・・・剣立が喜ぶから・・・いいのかなぁ?」
「よし、時間だ、クラスごとにバスに乗り込みなさい」
どこか釈然としない気分になりながら教師の指示に従って相馬はバスに乗り込む。
バスの中では生徒がそれぞれ楽しい時間を過ごしていた、座席を反転させて後ろの席の者達とトランプを楽しむのもいれば、余分に買っておいたお菓子を隣の人と一緒に食べあうなどなど、それぞれが思い思いの時間を過ごしている。
その中で相馬はこくりこっくりと座席のシートにもたれて船を漕ぎ始めていた。
「ナイト君、眠いの?」
「ん・・・あぁ、遅くまで調べ物しててさ、あまり寝てない」
「だったらゆっくり寝なよ」
「でもさ、そうするとお前が」
「僕なら大丈夫だよ! それよりも睡眠不足で楽しめない方が問題だよ!」
ぐぃっと距離を詰めてくる剣立の勢いに圧されてシートに深く体を沈める。
ゆっくりと眠りに落ちる中で、昨日までエイレーネと一緒に妖刀について調べていた事が蘇ってくる。
「本当なんですか? ナイトさんのお友達が妖刀使いに狙われているというのは」
「警察の情報だと狙われる可能性が高いというだけで確証はないらしいんだけどな、でも、調べておいて損はないから」
エイレーネと相馬の二人は草薙屋敷の離れにある書庫で本を読み漁っていた。
書庫は魔術、妖刀に関する文献が少しだけだが集っている、これは先代の利用者が自身が遭遇した魔術などの情報を少しでも残しておく為という意味で保存されていたそうな。
ちなみに本には腐敗を防ぐ為の術が施されていて破ける事もなければ黄ばむ事もない。
「妖刀に関して前にも話したと思いますけど、使うものを選ぶ、つまり適正資格というものが存在します」
「適正があれば誰でも妖刀が使えるんだよな?」
「厳密に言うとA~Dまでのランク付けがなされます、ランクが高ければ高いほど、妖刀、聖剣の全力の力を引き出せるらしいです」
「確か、妖刀の特徴がここにあるんだけど、ここでわかるかな?」
芳養麻から渡されていた資料を机の上に置く。
そこには海外で持ち出され、日本で事件を引き起こしているであろう妖刀の特徴が細かく書かれている。
「ここの書籍は代表的なものからあまり知られていないものもありますから・・・・この特徴ですと、あった」
「え、マジ!?」
見つからないだろうなぁと思っていたらあっさり発見した事に驚いて上から覗き込む。
そこには渡された資料の特徴と一致する刀が描かれている。
「これは、とんでもないことになりそうですね」
「え?」
エイレーネは刀の横に赤い文字で超危険!と書かれている部分を指差した。
「名前は六文銭、天照院明朝ですね」
刀匠・天照院明朝〈あまていんみょうちょう〉、妖刀を作らせることに関しては右にでるものはいないと謳われた希代の天才。
彼の作りし刀は名もないものを含めて、全てが驚異的な力を持っていたそうだが、あまりの危険さゆえに大名達の手によって殺された。
殺されるまでに作った刀は30ほどと少ないが、そのどれもが人の血に染まっている代物ばかり。
「六文銭というのは三途の川の渡し賃として昔はいわれていたそうです、刀の鍔についているこれがそれです」
「力については?」
「どうやら、書かれていないみたいです。この文献に書かれているのは天照院明朝が最後に作った刀ということだけですね」
「ナイト君、ナイト君」
ゆさゆさと体を揺らされる感覚と誰かが自分を呼ぶ声が聞こえてきて、相馬の意識はゆっくりと覚醒する。
「目、覚めた?」
「ん・・・ふぁわぁ」
「目的地についたよぉ」
欠伸を途中で飲み込むように中断しながらゆっくりと回りを見る。剣立のいうとおり、バスは目的地に到着したみたいでクラスメイト達は我先にと外に出て行こうとしている。
「・・・なぁ、剣立」
「なにかな?」
「俺の記憶が確かなら、シートベルトでしっかりと固定してシートにうずもれるようにして寝ていたはずなんだけど」
「そうだよ」
「なんで、俺、剣立の膝の上で寝てんの」
記憶が確かならば眠る前に座席を少しだけ後ろに倒して、シートにうずもれるようにして寝ていたはず、なのに目を開けると、あら不思議、剣立の膝の上で自分は寝ているじゃなりませんか。
余談だが、寝る時にしっかりとシートベルトを腹のうえあたりを通して巻いていたはずなのに外れていた。
これが女の子なら発狂するほどのテンションになっていただろう、男なら一度はやってもらいたいシチュエーションランキング上位に食い込んでおかしくない膝枕。
だが・・・・こんなことになるような覚えがない。
「俺、何かした?」
「ううん、寝苦しそうな顔をナイト君がしていたからシートベルトを外して僕の膝の上で休ませたの・・・・いけなかった?」
目を潤ませて今にも泣きそうな表情になる。子猫を連想させるような可愛さとはかなさを兼ね備えた表情に悪い事をしたわけじゃないのに、罪悪感がむくむくとでてくる。
「いや、悪くはない、でも、他の奴らになんかいわれなかったのか?」
男同士だから大丈夫か?と一瞬、思ったけれど、そういうことでからかうクラスメイトがいたことを思い出した。
「ううん、他の人の事なんて興味ないから大丈夫、それより、バス降りようよ!」
「あ、おぉ」
起き上がって棚に載せていた荷物を持ってバスを降りる。
「おぉ」
バスを降りてすぐ目の前に大きな城門が姿を見せる。
屋根瓦がいくつも並んでいる白と灰色の城門はとても威厳があってこっちが萎縮してしまいそうな雰囲気があり、声を漏らした。
大江戸村入口兼受付がそこにある。
ここから既に自由時間となっていて各自班で一緒に行動することになっていた。
しかし、
「っあれ? 鎖音原どこにいった」
きょろきょろと回りを見てみるがどういうわけか同じ班の鎖音原の姿がない。
はぐれたか?
「どうしたの?」
「いや、鎖音原の姿が」
「鎖音原君なら凄い勢いで中に入っていったよ? 僕達も入ろうよ!」
腕に絡みつくように手を伸ばしてくる剣立に、まぁ、仕方ないかと考えて入口に向かう。
事前に教師から渡されていた入場券をポケットから出して受付の人に見せる。
「では、空いている更衣室に置かれている服に着替えてください」
受付のおばさんが指差した更衣室という看板のところに入ると、無数に並んでいるロッカーと更衣室があった。
ロッカーには木製の鍵がささっているものがいくつかあって、相馬は手近にあったもののロッカーを開いて持っていた荷物を置いて鍵をかける。
そして、木製の鍵(中身は最新式の電子キー)を手にもって更衣室の中に入る。
更衣室はデパートなどにある試着室程度の広さしかないのだが、正面の右側に鍵をいれるソケットと赤と青のボタンが目に入る。
木製の鍵をソケットにいれて青いボタンを押すとピーという電子音と共に目の前に綺麗に折りたたまれた服が現れた。
服を着替えて体操服を現れたケースの中にしまうと音を立てて服がケースごと中に消える。
「なんというか、聞いたとおりなんだな。最新技術導入って」
更衣室から出て木製の鍵をみながら考えていた。
大江戸村は絶滅危機にある時代劇を存続させる為の一大プロジェクトとして作られた中規模都市。
そして、大江戸村で活動している職員と外からやってきた人達はコンピューターが決めた衣装を纏い、中に入ることが義務付けられている。
「剣立のヤツ、まだかかってんのかな?」
「ごめん、遅くなっちゃった」
「どうしたんだ、着替えに戸惑ったか? ケースの中に着付けが」
「えっと、変かな?」
振り返った途端、自分の目がおかしくなったんじゃないだろうかと思ってしまった。
目の前にいる剣立が女の子が着るような着物を纏っていたらそうなるのも当然かもしれないがいくらなんでも不意打ち過ぎた。
鳶色の着物に青色の帯を腰に巻いている剣立の姿は意外にもぴったりしていて、なんというか。
「似合ってる」
「え?」
「ごほん! どうして女性物の着物なんて着ているんだ? 青いボタン押すようにいわれていただろ?」
あ、としまったという顔になる剣立を見てボタンを間違えたんだなという事に気づいた。
更衣室にある赤と青は女性と男性用のボタンで区別されている、おそらく剣立は赤のボタン、つまり女性のボタンを押したのだろう。
「うわー、ナイト君のカッコイイね! 何をやっている人?」
「情報によるとかんざし職人の格好だって」
「かんざし職人って、今の僕達と近い格好していたんだね」
「・・・どうなんだろう」
首をかしげながらも二人は更衣室を出る。
着替えは一度設定したものは修正できないらしいので剣立は女性の着物をきたままになった。
二人で進みだしたところで急に剣立が相馬の腕に抱きついてくる。
「お、おい?」
「・・・ダメ、かな」
「いや、いきなりで驚いただけなんだけど、てか、なんで?」
「どうせだからやってみたいなぁって!ほら、僕らこの格好だと男同士だとかばれないし」
「まぁ、剣立がやりたいっていうならいいけれど、どれから見て回る?」
大江戸村は四箇所のエリアに分けられている。
一つが商人エリア、時代劇でみられるような~屋を含めた民家などがいくつか並んでいる。二つ目が奉行所エリア、大岡越前などが登場している南町奉行所などが再現されている。
三つ目、居住区、ここは一泊する予定の人たちの為に設けられた宿泊施設。
四つ目が江戸城(仮)、江戸城そっくりの構造をしているお城が中心にあるエリア。
「なんで(仮)なのかな?」
「出来てほやほやで名前が決まっていないとかじゃ」
「そうなんだ」
とにかく見て回ろうという話になり二人は近くの団子屋で購入したみたらし団子を頬張りながら村を歩いていた。
村の中は侍やら町娘、飛脚、魚屋など色々な人たちが行き交っている。この中に自分達の学校の人間もいるのだろうけれど、服装が変わっただけでこうも判断しづらいものなのだろうか。
「あ、あそこで劇をやっているみたいだよ!観にいこうよ!」
「え、あ、おい、ひ、引っ張るなよ!?」
転びそうになりながら相馬は剣立につれられていくつもの旗が並んでいる建物の中に入っていく。
「面白かったね!」
「あぁ・・・小さな劇なのかと思ったらテレビでみるような時代活劇レベルだったことに驚きを隠せない」
「あの役者さん、テレビでみたことある気がする」
「マジか!?」
「いろいろなところで悪役をやっていたはずだよ」
三十分後、劇を見終えた二人は興奮が冷め切らずよさを語り合っていた。
「でも、あぁいうのは憧れるよね」
「そうだな、あぁいう男になれたら俺はいいな」
二人がみた劇というのは風に揺られて東から西へ、各地を転々としている浪人が陰謀に巻き込まれた町娘を助ける為に奮闘するという勧善懲悪もの。
悪を浪人がばっさりと刀で切り伏せる所で興奮していた男子は少なくない。最後の町娘を抱きしめる浪人の場面では男性よりも女性側の高い歓声のほうが凄かったが。
「僕もあぁいうのに憧れるよ」
「だよなぁ、さて、そろそろ何か食べるか」
「あそこに蕎麦屋があるみたいだよ!」
「蕎麦屋」とかかれているのれんを見つけてそこに入ることにした。
中に入ると木製の机と椅子が置かれている。
空いている場所を見つけて相馬と剣立はすわり、女中に蕎麦を注文した。
「それにしても、中々、鎖音原たちと遭遇しないな」
携帯は更衣室に預けてあるので電話で連絡をする事もできない、今、彼がどこにいるのか把握する事もできなかった。
「仕方ないよ、それよりもさ、色々なところをみて回ろうよ!」
「はしゃぐのはいいけれど、顔に蕎麦の切れ端がついてるぞ」
「え、どこ?」
「ここだ、ここ」
ぺたぺたと頬を触っている剣立に苦笑しながら唇の近くについている蕎麦を手に取る。
はみゅ。
「・・・・・ん?」
蕎麦を指でつまんだところで奇妙な音と指先にぬるぬるした感触が伝わってきた。
なんだろうと目線を動かすと人差し指と親指が剣立の口の中に消えている。
「はっ!?」
驚きのあまり動かない間にぺろ、れちゅとどこか卑猥な音をだしながらぺろぺろと相馬の指を一通り舐めて、離れる。
「ん、ごちそうさま」
「お、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおい、剣立さーん!? な、何をしてくれちゃってるのでありますかぁ!?」
予想以上に混乱しているのだろう、少し変な言葉遣いになっていることに気づかない。
当の本人はというとけろりとした表情をしていて。
「おいしかったよ」
「あ・・・そう」
ここで、何が!?と叫ぶ勇気など相馬にはなかった。
叫んだとしても変な言葉が返ってくるのは目に見えていたがこれはないだろうと言わずにいられない。
「さ、行こうよ、時間は無限というわけじゃないんだから楽しまないと!」
蕎麦を食べ終えて二人は店ののれんをくぐって外に出る。
ずるずると蕎麦を食べ終えてお代を机において城戸はゆっくりと二人の後を追いかける。
何で、俺がとぶつぶつと文句を言いながら楽しそうに先を歩いている二人を見て自然と言葉が漏れた。
「あの二人、性別同じだよな、なんか・・・恋人同士にしかみえないなぁ」
性別を知っているからこんな言葉がでるわけで、事実を知らない者からすれば仲の良い男女にしか見えない。
そもそも剣立鳴海は男というよりかは女に顔の整い臥近いというのもそうみえる原因なのかもしれないのだが、それにしては、剣立の距離がすごい近い。
距離が近いから余計にカップルと錯覚してしまいそうになる上に男に言い寄られているのに隣にいる相馬が嫌がる様子をみせないことも気になる。
上司である芳養麻の命令で城戸は相馬ナイトと妖刀が起こしている傷害事件を捜査することとなった。
最初はなんで高校生なんかと調査しなければならないんだと渋っていたのだが、11係のデータベースで彼の事を調べて城戸は驚いた。
相馬ナイトは世界に十二人しかいない魔法使い。
魔法使いは魔術師と違い、一子相伝で力が与えられたりするのではなく、まるで、突然変異のごとく力を宿した者達、その力は不可能など存在しないといわれている。
そして、現在いる魔法使いの中でも相馬ナイトはかなり特殊な位置にいるということがわかった。
魔法使いが誕生する時、黄道十二星座の一つが新星のごとき輝きを発するという話があるがそれに関しての説は薄い、なぜなら魔法使い誕生は極めて少なく、生まれたとしても同じ星座を宿した魔法使いが再誕することもない。
なのに、相馬ナイトは過去に誕生した星座をその身に宿して魔法使いとして覚醒した。それだけで多くの魔術組織は彼の存在を危険視しており、11係の中でも超一級警護対象になりつつある。
「(護衛対象になることが確定しないとはいえ、こういう仕事に関わらせるってどうなんだろうな・・・彼ものりのりでかかわってくるし)」
芳養麻の指示で彼とコンビを組む事になった途端、相馬ナイトは城戸に頼んで南房総市にある剣立鳴海の祖父の下へ向かうといって車で二日ばかり往復してくたくたになったところで、今度は学校行事で、ここ、大江戸村にきていた。
やはり、この部署は自分に向いていないんじゃないだろうかと思う。
元々、自分は交番勤務の人間で、偶然にも魔術師の事件に関わっていたことによって11係に呼ばれたと聞いている。城戸の目標は公安ではなく警視庁の花形部署である捜査一課。いずれはここをでて捜査一課の刑事となる事を夢見ている。だから、魔術師とかわけのわからない存在に関わりたいとは思えない。
「しっかし、ここの機械はどういう基準で服を選んでいるんだろうな」
気を紛らわすように呟いた彼の服は城下町でかわら版を売って回る瓦屋の仕事着、瓦屋の格好はどこか派手だった。今みたいにテレビがなく、口頭で内容を伝えないといけないから目立たないといけなかったのかもしれないが、これは少し目立つ、尾行もへったくれもない。
そう考えながら歩いていると何かの視線を感じた。
ちらちらと回りを見ると、一瞬だけ、剣立鳴海がこっちをみている。
もしかして・・・・気づかれた?と考えていると相馬に笑顔を向けて話し始めた、気のせいだったかと考えようとしたが何かが引っかかった。
「まぁ、何かあれば俺が助けに入ればいいか」
まだ、魔術師が現れるというわけじゃない、ただ妖刀に操られている犯人を確保するだけ、腕っ節なら自信はある。自分ならできる、彼の手を煩わせる事もない。
楽観的な気持ちで城戸は二人の尾行を続ける。
それが間違いだと知るのはすぐだった。
もうそろそろバスに戻らないといけない時間が近づいている頃、剣立の提案で二人は江戸城(仮)に訪れてきた。
景色を一望してみたいという考えに同意してここまできたが想像しているよりも絶景で二人は言葉が出ない。
「昔の将軍ってこういう景色を何度もみてきたのかな?」
「そうかもしれないなぁ、こういう景色を独り占めってずるいって思うわ」
「僕もだよ」
夕方になりつつある赤い空に照らされるように町は赤く輝いているのを眺めている相馬の手に剣立は自分の手を重ねる。
「ナイト君・・・・僕ね、この景色を二人だけで見られて嬉しいよ」
「そうだな、俺もこの景色がみられて良かった」
「・・・でね、僕、ナイト君に言いたい、ことがあるんだ」
剣立は相馬と向かいようにして手をもじもじと動かしながら、顔を見る。
どうしたんだ?という顔をしている相馬をみているだけで心臓の鼓動が早くなっていく。
それが酷く心地良い、
ずっと、この気持ちを味わいたい。
だから、
「僕ね、相馬ナイト君のことが大好きです! だから」
心の底から吐き出すように剣立は気持ちを伝える。
「・・・・・・僕のものになって、永遠に」
手に握り締めた刀を相馬ナイトの腹部に突き刺しながら。




