幼馴染①
相変わらず五月蝿い目覚まし時計で目を覚ます。
時間を合わせたのが自分自身にも関わらず、アラームが鳴ると煩わしくて仕方がない。
だから、たまにぶっ壊しては婆ちゃんに叱られてしまう。
今日はなんとか二回目のアラームで起きることが出来た私はバタバタと荒い足音を立てながら階段を下りていった。
「おはよう!爺ちゃん!」
そして、居間に顔を出してテレビの前に新聞を持って座る爺ちゃんに挨拶をする。
「おう、おはようさん。…相変わらず五月蝿いのう…お前は女の子なんじゃからもうちょい静かに起きてこられんもんか?」
爺ちゃんが顔だけをこちらに向けながら呆れたような口調で訊いてくる。
「あっ、爺ちゃんそれ禁句!次、言ったらしばらく口聞かないからね!」
爺ちゃんの失言に苛立ちながら居間をすり抜けて、キッチンへと向かう。
「おはよう婆ちゃん。ついでにおはよう和兄」
キッチンの食卓に座って朝食を食べていた婆ちゃんと和兄に挨拶をする。
「おい、ついでには余計だ。相変わらず可愛げがねぇ妹だな…」
和兄がこちらを振り向きながら、仏頂面でため息を吐く。
和兄は二番目の兄で、和兄の上にもう一人、達兄という兄がいる。
その達兄は既にこの家を出て、立派に自立している自慢の兄だ。
「おはよう。ちえは朝ご飯はどうするんだい?」
婆ちゃんは朝食を食べながら、目線を手元に向けたまま私に質問する。
「うーん。時間が微妙…牛乳とその目玉焼きだけ頂くね」
そう答えて私は食卓にある目玉焼きを手で掴み口に頬張る。
「…おいおい、はしたないにも程があるだろ?せめて箸を使えよ原始人」
横で和兄が冷ややかな目で私を見ている。
そんな和兄を他所に私は冷蔵庫から牛乳を取り出してガラスコップに注ぐ。
それを一気に飲み干すと、私はコップをシンクの中に置いた。
「行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい」
婆ちゃんの声を背に受けて、私はせかせかと居間に戻っていく。
居間に戻ると爺ちゃんが横にいても御構い無しに寝間着を脱ぎ捨てて、隅っこに置いてある制服へと慌てて着替える。
爺ちゃんもそれが日常になっているため、もう何も言わない。
着替え終わると、洗面所に行って顔を洗い、ボサボサの髪をゴムでポニーテールに括る。
昔から私はこの髪型だ。
剣道をやっているため、面をつけるのにもっと短い髪の方がいいけれど、幼い頃に母が「ちえはポニーテールが似合うわ」と言われてから、ずっとポニーテールを続けている。
これからも変えるつもりはない。
その母に挨拶をしようと居間に戻る。
そして、居間にある仏壇の前に正座し、りんを鳴らして手を合わせ目を瞑る。
…母は私が小学二年生の時に亡くなった。
癌だった。
母は病気と闘いながらも最後の最後まで私や兄達のことばかり考えてくれていたのを今でも覚えている。
母は私達兄弟だけではなく大とコウにもとても優しかった。
私の自慢のお母さんだ。
母の遺影を見てそう誇る。
仏壇に挨拶を終えると爺ちゃんに行ってきますと告げて、私は玄関付近に立てかけてある大切な竹刀を持ち、玄関のドアを開けて飛び出すように外へと出た。




