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第8話 修道院の封印展示室

母の肖像に残された修復印を追うと、かつて一時保管先だった北辺修道院の封印展示室へ辿り着いた。


 石造りの長い回廊を抜けると、修道女ミナが古い鍵束を揺らして待っていた。


「クララ様の絵なら、確かに一度ここへ届いています」


 扉が開く。中には布を掛けられた習作や寄進画が静かに並び、乾いた麻布と蝋の匂いが漂っていた。


 見つかったのは、若き宮廷画家エルドの下絵帳だった。そこには母の婚礼肖像のための素描が何枚も挟まれている。胸元の百合紋、耳元の青石、そして幼い女の子を抱いた横向きの別案。


「この子……私です」


 幼いころ落馬でつけた眉横の小さな傷まで、そこには描かれていた。


 さらに帳面の裏に、母の手紙が一通残っていた。


『もし私の絵が壁から消える日が来たら、裏面を見てください。表に描かれる顔より、背で語る真実の方が長く残ります』


 末尾には、ノルトハイム公妃宛の署名。


 ルーファスが静かに息をつく。


「母上は、君の母君から何かを託されていたんだな」


「なら、この件はただの婚礼展示の横取りではありません」


 私は手紙を抱えた。


「母たちは最初から、いずれ誰かが裏面を塗り潰すと知っていた」


 封印展示室の冷気の中で、私たちの前にあるのは古い絵具ではなく、長く待ち続けていた告発そのものだった。


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