4/4
第4話 返されなかった持参絵画目録
翌朝、私は北辺収蔵庫の回送控えと返還台帳を片端から洗い直した。
見つかったのは、母の持参絵画目録の写しだった。ただし肝心の三一八番には、王都版にはなかった追記がある。
返還停止。
理由、婚礼展示への転用。
承認者、レオンハルト・クローナー。
「返還停止まで書かれている……」
私は紙を握る。
「婚約解消を告げる前から、母の絵は戻さないことにされていたんです」
ルーファスは控え書きを読み、机に肘をついた。
「絵そのものだけでなく、所有権まで奪うつもりだったわけか」
「はい。しかも返還停止の根拠になった婚礼展示室の入庫台帳は、王都で抜き取られていました」
私はさらに裏書読解で控え紙を探る。消された一行が浮かぶ。
付属品、金箔額一、真珠飾り一、家紋印章板一。
母の肖像には、ヴァインベルク家の真正印章板が取り付けられていた。つまりその絵があれば、誰が本当に母の系譜を引くかまで証明できる。
「封印庫を開ける」
ルーファスが言った。
「北辺へ送られた時点で領内の案件だ。責任は私が持つ」
責任という言葉が、ここでは私を黙らせるためではなく、調べるための許可になる。その違いだけで、息の通り方がまるで違った。




