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第10話 王都収蔵庫の空箱

ルーファスの領主権限で発行された照会状を持ち、私は王都郊外の収蔵庫別棟へ入った。


 積み上げられた木箱は整然としているのに、番号だけがところどころ不自然に飛んでいる。私は母の目録と照らし合わせ、空箱の並びを追った。


 三一八の箱はあった。だが蓋を開ければ、中は藁しか詰まっていない。


 裏板に指を触れる。


 再梱包。


 宛先、婚礼展示準備室。


 積替先、民間額装工房。


「一度工房へ出している」


 私は箱の底から出てきた紙片を掲げた。額装料金の控えだ。しかも画題欄には、塗り潰された跡の下に『イリス・ヴァインベルク婚礼肖像』とある。


「母の絵を解体して、義妹の花嫁肖像に付け替える気だったんです」


 同行していた監査官ヘルミーネが眉を寄せた。


「ここまで露骨なすり替えは珍しいわね」


「露骨でも、飾ってしまえば皆、正面しか見ませんから」


 私は空箱の中を見下ろした。箱は空でも、欠けた痕跡は残る。なら私は、その空白の形まで記録してやる。


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