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村人だけど、わけあって追放令嬢を破滅から救うにはどうしたらいいか真剣に奔走することになった  作者: 礼(ゆき)
10万字版

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25,温泉宿へ

 ラルフがアリアーナと王太子に気付き立ち上がる。

「いいのよ。ここでは、気にしないで」

 アリアーナはラルフの行動を制す。


 一礼しラルフは椅子の向き変え、テーブルから少し離してから座りなおした。

 街の中では、同じ年の友人という関係でかまわないと前々から彼女は宣言している。

 ただ、なぜか王太子には厳しい。

 今も、テーブル席一つ運んできてと、当たり前のように命じる。

 いそいそと従う王太子も慣れたもの。

 長年、ここで反発しても面倒なだけだと割り切っているのかもしれない。

 アリアーナを前にすると、王太子でさえ従者のようである。

 2人が席につくと、店員が来て注文をとっていった。


「今日は私のわがままにつきあってくれてありがとう」

 アリアーナが切り出す。

 街へ一緒に出掛けることはあっても、いつもならその日のうちに帰るところ。

 今日は、彼女の提案で、宿へ泊ることになっていた。


「いいのよ、アナ。

 何もかも準備していただいて、私たちは遊びに行くだけだもの」


 店員が飲み物を置く。

 アリアーナは、ありがとうと軽く伝える。

 一礼して店員は静かに去った。


「私まで呼んでもらって本当によいのでしょうか」

 ラルフが困惑した表情を見せる。


「いいのよ。

 フェリシアを誘えば、あなたがついてくるのは必然だわ。

 そうでもないと、宰相家の方から了承得られませんもの」

 この数年はおとなしくしているつもりなのに。一度ついた評価はなかなか落とせない。

「私も前々から行ってみたかったところですもの。

 一人で行ってもつまらないわ。

 フェリシアやラルフを呼んだのは、私の楽しみのためよ。

 どうしても準備に時間がかかってしまった半分は彼のせいなんですけどね」


 横にいる王太子を一瞥する。


「いいじゃないか。

 三人だけでそんな楽しそうな経験するのに、俺だけのけ者なんてないだろう」


「あなたが来るだけで護衛が数倍になるのよ」

 アリアーナはため息を吐く。


「俺、そんな経験人生で一回くらいしかできそうにないじゃん」

 可愛そうな犬のように小さくなる。

 なんでこんなに小さく見えるんだろう。

 アリアーナのどっしりとした雰囲気とは対照的。


 王太子はラルフより少し背が高い。

 体格は王様によく似ている。

 かつらを外せは黄金色の髪がなびく。 

 黙っていれば、さわやか。

 アリアーナにからかわれていると大型の犬みたい。従順な牧羊犬を思い出す。


「そうですわね。

 学園に入る頃にはもう自由はきかなくなりますものね」

 

 そうそうと王太子も頷く。


 私たちのテーブル席横に馬車がゆっくりと近づき、止まる。

 御者がおりてきて、お迎えにきましたとアリアーナに一礼した。

「さあ、宿へ行きましょう」

 

 俺は、はいと返事し、立ち上がる。荷物はラルフが持ってくれる。


 王太子は、なぜか自分とアリアーナの荷物持ち。

 それでも、こうやってついていくのは、小さいころからの力関係が続いているからだろうか。


「では、後はよろしくね」

 店員にもアリアーナは声をかける。

「行ってらっしゃいませ」

 一礼する店員。

 清算はない。

 この店はアリアーナの店だ。

 彼女が出資し、オーナーでもある。


 視界の端に、群青色の髪が揺れたように見えた。

 レオン?

 たくさんの人が広場を行きかう。

 見間違いか。

 青みがかった髪色の人はたくさんいる。珍しくはない。

 こんなとこに、レオンがまだいるわけがない。


               ☆ 


 馬車に揺られ街の外れへと運ばれる。


 木々に囲まれる木造の大き目な建物。そこはこじんまりとした個人経営の温泉宿だった。


 到着し、馬車が止まる。降りると、何とも言えない不思議なにおいがした。

 鼻につくものの、山をはしりまわっていた時に踏んだ腐りかけた落ち葉を連想させる。


「このにおいは何だ」

 好奇心が先行する王太子が、においをかぎながら前へ進む。

 荷物を持つラルフは宿の入口へ。

 御者が王太子とアリアーナの荷物を運び始めた。


 アリアーナと俺は、王太子の後を追う。


 王太子が立ち止まる。

 行き止まりで、坂になっているようだった。


「アナ、あれはなんだ」

 目を輝かせる王太子。振り向きながら、坂の下を先を指さす。


「温泉ですわ」

 アリアーナが呼びかける。

 

「温泉?」

 王太子に追いつき、俺とアリアーナも坂の際から見下ろす。

 そこには湯気立つ川が流れていた。

「山から熱い湯が沸き出ているのです」


「それはすごい」

 王太子は坂を下りようとする。

「直接触ると、やけどします。

 宿に、そのお湯を引いたお風呂がありますから、そちらでたのしんでくださいな」

 アリアーナが大きな声で、王太子を止めた。


 俺たちは宿の入口へ引き返す。


 老夫婦が宿の中から出てきた。

「ようこそお越しくださいました」

 深々とお辞儀をする。


 老夫婦に、さあどうぞ中へ、と招き入れらる。


 長く宿を構えているらしく、しつらえは古めかしい。

 掃除が行き届き、清潔感がある。

 古風な雰囲気がノスタルジックである。


「すごい」

 村人だった俺から見たら、すごく上等な宿だ。

 これでも街では歴史ある中堅の宿という。


「今日はここに泊まれるんですか」

 俺は目を輝かせてアリアーナを見た。

「ええ、一泊ですけど。

 温泉が湧いており、お風呂が良い宿なんです。

 昔から、ケガをした冒険者や病気の貴族が湯治する宿なのよ」


最後まで、お読みいただきありがとうございます。


続きが気になる、面白いと思っていただけましたら、


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