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解答編 1

解答編1です。え? 1というのはなんだ? ですか? 1は1です。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーー戦いから30分経過ーーーーーーーーー

「ふああ」


「良く寝ましたか? ところでどうしてそんなところで立って寝ているんです?」


「うーん。そんなの分からないよ。強いて言うならMP切れそうって事かしら」


「そうですか? じゃあ回復のスープ作ります?」


「まだちょっとあるから! 別の料理を食べたらさっきのセットの上昇量が消えちゃうからね」


「分かりました。しかしすごい戦いでした。どうやって彼女を……遠くで見ていましたがあなたは何もせずにずっと攻撃を受け続けていた気がしますが……」


「ああ、上界で戦った怪物が使っていたカウンター技を使ったのよ」


「え? ご自身の技ではなく?」


「そうなのよ。そもそも何故か自分が見た事のある技でもここでは使えるみたいね」


「不思議ですね」


「多分上界で見た事がある技を全て一回だけ使えるのかも知れない」


「はあ……地獄に住んで長いですけどこんな事初めて知りましたよ」


「で、その技の効果が1時間続くの。普通は効果が切れたら忘れちゃうらしいけどまだ1時間経過していないみたいね」


「はい。あれから40分くらいしか経過していません」


「そうなんだ」


「戦いは階級だけではないんですね……それをあなたの戦いで感じました」


「そうね。じゃ、もういいか。物理反射【硬】解除!」


「これでもう忘れてしまうんですね?」


「ええ、さて、じゃあ事件の解答編に行きますか」


「え?」


「邪魔が入っちゃったからね」


「そう言えばそうでした!」


「じゃあ行くわよ……その前にこれも試してみるね」

ぐいーんコチョコチョ


「何をなさって?」


「擽りマシーンを使ってみたんだけどやっぱり効果ないね」


「当たり前ですよ。亡くなっておられるんですから」


「鈴木さん2号はいい反応してくれたんだけどねえ」


「おひぇえ? それは誰でもなりやすぜ……」


「果たして本当にそうなのかしら? 確固たる意志を感じるわ。じゃあ、本番行きましょう」


「え? 意思……? 誰のです?」


「見てて」

アリサの体から目を背けたくなる程の邪悪な力が巻き上がる。寝起きとは思えない程にもう躊躇いも弱みもない。既に完全回復している……

そして十字架を、そう、逆さ十字架を向ける……!

「うわあああ」


「何だオニ?」


「死神の蝦蟇(がま)振るいかぶる時に空間凍り付き、全ての生命失われるだろう。大いなる冥界の王よ、汝、十字架に封ぜられた力、今ここで開放した。これを(しるべ)とし、この地に()の神遣わせよ! 我は此処に……我は……此処に!! この罪深き命、贄と捧げる! 我は望む。逆さ十字架の導きの下に()の魂、未来永劫、冥府の淵底(えんてい)に繋ぎ留めよ!! 出でよ、死を、司りし神!!!」 

     

              【アルヴァデカ・ダー……!】


「な、何を……なさって?」

アリサは突然死んでいる閻魔に向け、五鳴館で一度目を通したネクロノミコンに記されていた死の呪文を詠唱する。

しかもただの死の呪文ではない。各種の戦力を上がる行動を終え、最高の組み合わせで理論値最大の上昇量の食事を済ませ、更には地獄で二番目に強いジン゛ジア゛を倒し経験を取得していて、そこら辺の魔法使いより遥かに魔力は高くなっている状態での死の呪文だ。死の呪文に耐性の無いラスボスすら瞬殺? 大げさかもしれない。だが、今の状態の彼女を上界にだけは送ってはいけない気がする。

すると……


「止めんかあ」

ムクッ


「え!?」


「ああっ」

その声は部屋内に響き渡る。


「やっぱりね……」


「あ、ああああ貴方は……」


「死を望んでも、実際本当に殺されると思うと体は勝手に動いてしまうのだな……人間とは……否、閻魔とは愚かであるな……」


「そうね」


「お前、相当な魔力だな。その呪文で本当に殺されるという恐怖から芝居を中断せざるを得なかった……凄まじい闇の力だった。お前になら閻魔の座を譲ってもよいぞ」


「嫌よ! 書庫で見たよ? あんたの仕事滅茶苦茶大変よね……あんな求人広告あったら誰も応募しないわ!」


「知っていたのか」


「こんな面倒なことを毎日休まず……逃げたくなるよね……だから自殺したふりをして現実逃避していたんでしょ? その後の事を何も考えずにね」


「うむ。だが思ってしまった。このままずっと死んだふりをしていれば、誰かがどこかに連れて行ってくれるのではないか? とな……」


「確か死因は呼吸が止まっているとの検視だったけどずっと息を止めてたのね?」


「ああ、だが堪え切れず」


「ブオオオオオオよね?」


「ああ、時々呼吸をしなくてはならぬ。半日は耐えられるが我慢の限界が来てあんな爆音になってしまう」


「一気に吐くとあんな爆発音になるんだ……凄いね。でも、逆に呼吸とは思われないでしょうね」


「だがいつまでたっても何も変わらぬ。誰も、迎えに来てくれぬ」


「死の世界の更に死の世界? そんなのあるのかしら?」 


「長い事生き続けていればそんな妄想も自然と生まれてくる」


「そっか……でもここのルールではそもそも死んだら自宅で復活するんだよ。何度も見て来た筈なのに……ずっと倒れている時点でおかしかったのに……気付けなかった……不甲斐ないわ……でもその仕事量、シフト制にして休みを取らなきゃダメよ?」


「わしの様な力の持ち主をもう一人作り出す事など出来るだろうか?」


「確かに……2位のあいつは賢さⅣ……おっと4だし厳しいよね……でも今のやり方はちょっと……」


「何かいい方法はないのだろうか?」


「私に聞かないでよ! でも自分が辛いのも分かるけど責め苦何とかならないの? 亡者もかわいそうだし……もう少し楽に出来ないの?」


「そうしてほしいもうじゃあ」


「魂にももう少し権限を与えて下さい……」


「そうであったか……わしもイラついていたのだ。亡者共は新しい人生を得るという目標がある。確かに辛い試練ではあるが、その先に


【未知の道】


が待っている。わしは永遠に同じ作業の繰り返し」


「ダジャレ? 4点よ?」


「そうだろうな。こんなつまらぬ生活を続ければユーモアセンスなど磨かれぬ」


「あんたの死んだふりのお陰で地獄巡りを楽しむ羽目になったわ。ありがとね?」


「嫌味を言うな……わしはこれ以上努力をしても何も新しい知識を得る事も、力が成長する事も出来ず、与えられた退屈すぎるタスクを永遠にこなすだけの存在……これの何が楽しいのだ? 力はある。だがそれを示す場所もない。例えば……ぬん!」

閻魔が机を睨むと机が突然浮遊する。


「わー」


「これを出来たとて


『それ位出来て当然だもうじゃ』


程度の反応しかない。何せ閻魔なのだから。で、終わる……全てが空しい……」


「私、イマジネーションは誰よりも優れているけど閻魔の立場になって考えた事はなかったから分かれなかったわ。当然死ねないからその虚しさを永遠に味わっちゃうという事ね? それが嫌になった……と」(なんか昔見た話の中でこれと同じ気持ちの主人公を見た気がする)


「そうだ。このままどこか遠く……わしがわしでなくなれる場所に運んで貰えたらと突然思い立ち、死んだ振りをしたと言う事だな。だがいつまで経っても何も変わらずだ……当たり前だがな……完全な現実逃避だな」


「……そこまで追い詰められたって事なのね……そう考えると可哀そうになってくる……今でもその気持ちは変わらないのね?」


「無論。ワシは生まれた時から老人。そして歩く事すらままならぬ。何故か移動関連の能力が著しく低い。歩く事は出来てもまさに亀の歩み。わしにこの任務を与えた誰かは仕事だけ専念して置けと言わんばかりにワシの体を設計したようだな。腹立たしい……そして、頭の中で今からすべき事を全て理解していた。閻魔になった瞬間にな。その一つ一つはワシにとっては何も心躍らない内容。好きでこの立ち位置に上り詰めたのではないのだ。人はある程度自分の好きな職に就けるがワシは違う。もう許してくれ……」


「それでかあ」


「何がだ?」


「私が生き返る時本当は条件なんか要らなかった筈なのに増魔石? だっけ? それを4つ集めさせた。この理由は私が余りにも生き生きしていてそれが許せなかったから。せっかく死んで楽になれたのに生き返りたい気持ちで満ち溢れた私のオーラに苛立ちを感じ、そんな意味の無いミッションを与えたんだ」


「そうだ。お前の肉体が残っている事は分かっていた。故に本来いつでも戻れるという事を教える事も出来たが敢えて言わなかった。多分知らないと思っていたからな。少々意地悪をしてやろうとあんな行動に出たのだ」


「これからどうするの?」


「もうこの仕事をしたくない。申し訳ないが楽になりたいという気持ちが強くてな」


「そ、そんな……ではこれから地獄はどうなってしまうのでしょう?」


「そうだったな。誰に引き継ぎもなく逝ってしまうのは軽薄だった。だが、もう、限界だ。お前に全権を委ねる」


「そ、そんなあ私、ただの受付ですうう」


「もう決定だ」


「ひええ」


「私、読んだ事があるのよ」

ぬ?


「え? 何をでしょう?」


「言ってみよ」


「永遠を打ち壊した話」

何だ? 初耳だ……


「ほう? 興味深い話だ……話してくれるか?」


「ええ、でも物語の中の話よ。でも、結構リアルだった……思い出したくもない。その話を読んだ後、初めて鬱になりかけたと思う。それほど私の人生の中で衝撃的な内容だった。本当は思い出したくはない。でもあんたのために特別思い出して教えてあげるわ。まあがっかりさせちゃう内容かもしれないけどね」


「辛い事なのか? だが頼む」


「ええ……その時は3歳の時だったかな……本棚があったのよ」


「本棚?」


「ええ。私が付けた名前はデスブックシルフ……死の本棚って意味ね。これが本当に不思議な本棚なの」


「その本棚がどうしたのだ?」


「二つの話を混ぜた物を作ってくれる本棚なの。自分が選んだ2つの本を上手く辻褄を合わせて作ってくれた。で、その時作ったのはうさぎとかめとうらしま太郎が合わさった話を作ったの」


「お前がか?」


「そう。タイトルは


【うさしま太郎】


で、うちにあった絵本を3段構成の本棚の最上段中央にうさぎとかめ、最下段中央に浦島太郎をセットしたら、2段目の中央の空間から2つの特性を合わせたうさしま太郎が出て来たの」


「そこで永遠を壊す方法が記してあった?」


「うん。うさしま太郎さんといううさぎは、実は月で不老不死の仙薬を飲んだの。で、しばらく生きている内にずっと死ねないという事実の恐ろしさに気付き、悩んでたんだって」


「わしと同じ……おお……」

ボロボロ

涙……大粒の涙が零れ落ちる……


「そしてそんな時、いつまでも悩んでも何も変わらないと、変わる為に行動しようと思いたった、その刹那に急にかめにかけっこの競争を提案されたの。で、健闘したけど居眠りしてしまって……かめは起こそうとしたんだけど眠りたかったうさしまさんはかめをゴールに投げつけて、結果負けちゃったの。そしたらうさしまさんの子分がうさしまさんの力を借りるなんて納得いかないとか因縁をつけてかめを突然いじめ始めた。それを助けてうさしまさんはかめと竜宮城に行ったんだけど、その時乙姫から貰った玉手箱で老化したのよ」

冒頭でアリサが話していた話はこれであったか……この話を聞きアリサは3歳という若さで鬱を体験した。


「な、なんと! 不老不死の仙薬を飲んだウサギがか?」


「そう、そして老化した後、もう一度かめと競争したの……その後……」


「死んで……しまったのだな? 不老不死の者が老衰で……力……尽きて……そんな事が……」


「ぐすん……うん……」


「アリサが偶然無作為に選んだ二つの絵本で作り出しただけの、


【空想のまた空想】


か……正に絵空事……の一言で片づける事も……だが、数千とも言われる文献を読み漁ってもその中で不老不死を終わらせる方法を具体的に書き記したものは無い。うさしま太郎以外思いつかぬ……乙姫か……意外な盲点であった……だが……実際存在するのか? もしそいつに会う事が出来れば……そうすれば終わらせる事が出来る……! その微かな希望に賭けてみよう……まずは亀をいじめている悪者を見つけなくては……どこにいるのだ?」

冗談の様な事を言っているが、閻魔の目は本気だ。


「なんか希望に満ち溢れた目をしているよ?」


「ああ、人と同じ寿命で死ねると言う希望をお前から聞く事が出来た」


「変な閻魔!」


「ありがとうアリサ。お前は命の恩人だ」


「ぎゃくう」

いや。あながちそうでもないのかもしれぬ。本当に死を望んでいる者は、死、それこそが目的であり、喜び。生き返るという意味とも取れる場合もあるのかもしれない。


「受付の者よ。後の事は任せたぞ? わしは乙姫を探す旅に出る」


「ひええ」


「宛てはあるの?」


「取り合えず上界にわたり、全国のうらしまたろうを読み漁る」


「その格好で行かないでよ?」


「ああ、七三にしてスーツ姿にすれば怪しまれんだろう」


「目立つよw」


「どうしてだ?」


「体がデカいよw」


「まあ何とかなるだろう」


「でもそんな事で解決するかしら?」


「そこに乙姫に到達できる道のヒントがあるかもしれない」


「単純ねえ……まあ頑張って」(現実に存在する筈ないとは思うけど、探してる間は死のうなんて考えないよね……で、旅をしているうちに生きている楽しみ……そう、生きがいも見つかるかもしれないし、放っておくのもいいかもしれないわ)


「勿論だ! 乙姫から真実を吐かせて……死ぬぞおおおおお」


「やっぱり変な閻魔!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アリサが3歳の頃に読んだうさしま太郎はノベルアッププラスという小説投稿サイトのみで読むことが出来ます。短編集というタイトルでその中に入っています。他にも桃太郎と浦島太郎を混ぜた話や赤ずきんとシンデレラを混ぜた話など色々なお話があります。もし興味があったら読んでみて下さい。

サイト内の検索バーが右上にあります。虫眼鏡が目印で、魔技者 短編集で検索すれば出てきます。


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