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書庫にて

「受付さん! 6つの薬草持ってきたよ!」

閻魔の屋敷に戻るアリサ。


「お帰りアリサ神裔Ⅳ様ガル」


「ただいま虎ちゃん!! これで復活出来るから安心してね。後アリサでいいよ。そこまでの事はしてないし」


「良かったガル。アリサ神裔Ⅳ様……」

完全に彼女の中で主従関係が出来てしまっているな……本来憎むべき相手の筈なのだが唯一知っていてしかも階級も遥か上という事で盲目的に従っている訳か……


「もう! いいってのに……」(私がここに呼び寄せちゃったのにそんなにかしこまられても困るのよ……)


「おお、確かに……良く集めましたねえ」


「これを最強の鬼に飲ませるんだっけ? でも、ちゃんと言う事聞いてくれるの?」


「それは分かりません」


「えええええ? じゃあ何で集めさせたのよお!」


「現状それしか方法が無いという事です。それと悲しいお知らせですが閻魔様より気性は荒いです」


「そうなの……」


「もしかしたら戦いを挑んでくるかもしれません。ですが、それに打ち勝つ事で従ってくれるかと……」


「ちょ! 私で勝てる訳ないでしょ!」


「最悪のケースですよ。とりあえず呼んでみましょう」


「怖いなあ……」


「もしもし……今お時間ありますか? ……はい。……そうでございます……よろしくお願いします」


「どんな奴が来るんだろう……」


「ドキドキガル……もしいう事を聞かず戦いを挑まれアリサ神裔Ⅳ様が負ければ……ずっとここに居なくてはならないガル」


「何とかして見せるから」


「では薬草のスープを作ってきます」


「お願い! 美味しい奴頼むよ!」


「お願いガル……」

ーーーーーーーーーー20分後ーーーーーーーーーー


「出来ました最高の出来です」


「本当? ちょっと味見していい?」


「うーん分かりました。ですがほんの少しですよ?」


「ありがとう! どれどれ?」

ズズズ


「あっちょぴり辛いね……でもいい味! 野菜だけでこんなに美味しいんだ!」


「勿論調味料も入れていますよ? それが辛さの元ですよ」


「ああ、そうなのね? この効能は?」


「最大魔力が大幅に上昇します。そうする事で彼女の最大魔力では本来使えない術も一時的に使用可能となるんです」


「はああそういう事なのね? 彼女?」


「女性の鬼です」


「この世界二位の鬼が男じゃないってのはすごいね」


「誰も勝てませんね」


「でも魔力は低いのか。じゃあベビィサタンみたいなものか」


「はい?」


「トラクエ3ってゲームにいるモンスターなんだけど、その魔物は最強のイオンナズンを使う事が出来るんだ。でも魔力が足りないのよ」


「ああ、そういうゲームのキャラクターがいるんですね?」


「そうそう、でそれの5作目ではそいつがその特徴を残した状態で仲間になるのよ」


「ほう」


「で、敵を倒していく内に最大魔力も少しずつ上がって、使えちゃうのよイオンナズンが! これって結構3からやっている人にとってはエモいのよ!」


「エ、エモい?」


「そうね……心が揺さぶられて、何とも言えない気持ちになる事かな? とにかくあの何も出来なかったモンスターがこっちの仲間になって、少しずつ育ち、使えなかった魔法が使えるようになり共に魔王を倒す。これが実現出来て最高のエモさを感じられるの!」


「はあ、そんなもんなんですね?」


「そうだよ! 他にもね……」

すると……


「よんだか」

凄まじい闘気と共に最強の鬼が姿を現す。いつの間に現れた? 私ですら気配を感じなかったぞ……こやつは只物ではない……!

挿絵(By みてみん)

右手にはごっつい金棒を担ぎ、頭上には賢者Ⅴの階級が輝く原始人のような服を着た茶色い鬼だ。


「あっ、お忙しいところありがとうござます。ほら! アリサちゃんも挨拶して下さい!!」


「こんにちは! アリサですうぅ!」


「虎音ガル!」


「なによう」


「じ、実はこちらの女性を生き返らせるために貴女様の力をお借りしたくて……」


「なるほど」


「こちらに薬草スープの準備は出来て居ますので……こちらでお召し上がり下さい」


「めんどう」


「ええ?」(やっぱり一筋縄ではいかないよね。でもこちらの弱みを見せたらこういう奴は喜んで飲まずに私達が悔しがる顔を楽しみそう。だから……奴にメリットがあるプレゼンをすればいい)


「ちょっと待って?」


「なによう」


「これさっき少し味見したけど死ぬほど美味かったよ? それに出来たてで今が一番いい状態だよ! 今飲まにゃいつ飲むの? 一生後悔すると思う」


「なるほど」


「わかった」

ズズズ


「あ、素直に飲んでくれた……良かった」


「これで帰れるガル? ありがとうガル……」


「ぶっがゃ」


「ぶぃぐぅ」

すると飲んでいる途中で吹き出してしまう。


「え?」(こ、この音どこかで聞いた事がある様な……あれ? どこだっけ? それにこいつ……あいつそっくり……! 気のせいかしら?)


「からすぎ」

そういいつつ器を机の上に置く。


「ひいいいいそういえばそうだった……辛いのは駄目だったんだ」


「ええ? 何でそんな事知らなかったのよ!」


「完全に勘違いです。辛いのが好きだと思い込んでいました……でも、全くの逆でした……すいませええん」


「むかつく」


「す、すいませええん作り直してきますううう」

そう言いつつ、もう一組の薬草まで持って行ってしまう。


「ちょっと! それ私の分でしょ!」 


「そうですよね? では返します……ってそんな事言ってる場合じゃないでしょう!!」


「そ、そうか……分かったよ諦めるよ。今度はちゃんと調味料を変えなさいよ!」


「はいい」


「もういい」


「え? 待って! もうちょっとだけお願い!」


「お願いガル!」


「もどるわ」


「また連絡するからね。今度こそは美味しいスープが出来てる筈だから……」


「おまえは」


「うそつき」


「きらいだ」


「さらばだ」

ドスドス


「ああ……帰っちゃった。もう!」


「困ったガル」


「ブゴオオオオオ」


「わあ?」


「ひいいガル?」


「何よ今の音! あれ……? そう言えば、閻魔が死んで情報集めてた時も同じ音が響いてたよね?」


「そうガル。私は別室で検死の書類をまとめていた時に突然響いて何を書くかも忘れかかけたガル」


「やっぱり? あの瞬間はここより遠くから響いたと思ってたのよ……それで血の池に向かったのよね……でも、これじゃ……」


「申し訳ありませえええええん」

アリサの思考を遮り、受付の鬼が大急ぎでスープを持って来る。


「あ? もう出来たガル?」


「もう! もう居ないわよ」


「そんな……これを30分以内に食べてもらわないとスープの効力はなくなってしまいます……」


「嘘でしょ? また6種類集め直さないといけなくなるじゃん! 絶対にダメよ! じゃあ保温とか出来ない?」


「あ、確かに冷凍保存するなら八寒地獄でもいいですが……」


「どっちでもいいから保存しておいて?」


「はい! では火車ー。今すぐ来てくれー」

受付鬼は火車でどこかに行ってしまう。残された二人はどうするのだろうか?


「ふう、これでひとまず安心ね。後はあの鬼の機嫌が直るまでしばらくここで休憩しているしかないわ」


「そうガル。あの鬼もお腹が減ればスープを飲みたくなる筈ガル」


「でもさっきの音ほんのすぐ傍で聞こえたのよね」


「確かにガル」


「一体何の音なの?」


「分からないガル」


「それにしても閻魔を殺した奴って一体誰なのかしら……色々回ったけど全く手掛かりがないわよ」


「不思議ガルぅ」


「そもそも死因は何なの? 外傷とかあったの?」


「それが不思議な事に何もないガル。それに皮膚を触ってみたけど鋼鉄みたいに硬かったガル……」


「死因も分からず、外傷もないんじゃお手上げよねえ……本当に死んでいたの?」


「間違いないガル」


「だよねー。虎ちゃんの検視は世界一だもんねえ……と、なると……完全にお手上げよ」

本当にそうなのだろうか? アリサよ思い出せ……1話から3話の被害者の状態を……1話の時の被害者


【真田行照代】


はどうだった? そして2話の


【味噌門太】


はどうだった? そして3話の


【市田理内】


はどうだったのだ? 驚きの全員生存ではないか! なのに何故全面的に信頼を置いているのだ? ここだけアリサはポンコツに成り下がるのはどういう事なのだろう? 不思議の国のアリサちゃんか? 時計を持ったウナギの後を追い、ハトの女王の元に辿り着くのか? 違うであろう! 目を覚ますのだ! あの


「ブゴオオオオオオオオ」


という音の正体が何かを考えれば


【全て】


が分かるではないか!


「すーすー」


「グーガル、グーガル、グーガルアースゥ」

なんと! 虎音と一緒に眠り始めてしまったではないか! さぞ疲れたのだろうゆっくり休むが良い……というか霊体に睡眠欲があると言うのか? 起きるのだ! アリサ! 全く……ここが地獄という事を忘れてしまったのか……緊張感の欠片もない……


「戻りましたよ。あ、あれ? な、何をなさっているのです?」

ぬ? 受付がアリサ達の行動に疑問を持っている? まさか眠りという概念が地獄にはないのか?


「どうすればいいんだ? 揺さぶっても大丈夫かなあ? おーい? 生きてますかー?」

死んでいるであろう。それともこの世界でも死があるのか? そんな言い方である。


「疲れてるのでしょう少し待ちます」

すると


「ふああああ良く寝たガル……」

とことこ

どこかに行ってしまう。

「え? え? ちょっと! 待ちなさい!」


「何よ! 折角お休みしてたのに……あれ? 虎ちゃんは?」


「それが……行ってしまいました」


「へえ、どこに?」


「あちらの方角です」


「お散歩かな? それくらいさせてあげよう」


「そうですか? 逃げたんじゃないですか?」


「そんな訳ないよ。付き合いも長いし分かるよ」


「しかし彼女の検視は本物なんですか?」


「優秀な鑑識よ?」

そうかなあ?


「そうなのですね?」


「口癖はおかしいけどね。あいつを説得するまでちょっと時間を空けたいわ」


「え?」


「どこかに暇つぶし出来そうな所無いの?」


「書庫はどうですか?」


「え? 本があるのね?」


「はい。では、案内します」


ーーーーーーーーーー地獄の1丁目、書庫ーーーーーーーーーーー


「こちらです」


「ああ、沢山の本! 嬉しいい! ここでずっと籠りたいい」


「ずっと居てはいけませんよ? では私はこれで」


「うん。で、もし虎ちゃんに会ったら真田行照代って言えば素直についてくる筈よ! 覚えておいてね! 町中に放送しておいてもいいわよ?」


「まだいきてるよ? 分かりました。では失礼します」


「良し、何から読もうかなあ? 何か昔話とか地獄でしか読めない物語とかあるかなあ?」

一瞬で趣旨が変わってしまったよ……


「閻魔の仕事ってのがあるなあ。まずは一番偉い人の仕事を把握しておこう。殺された原因もあるけど、万が一次の閻魔に私が選ばれるかもしれないしねw」

うむ、この腹黒で、戦力的にも相当上のアリサなので普通にあり得るから怖いな。


「なになに? まず魂が来たらお前のやった罪は何かを問うのね? 1日に膨大な人数来るらしいからね……それだけじゃないのよね? 鬼の製造……素材調達は鬼に任せるけど分量を知っているのは閻魔のみなので彼にしか行えない作業という事になるね。

次に6つの地獄のメンテもやるのね? 賽の河原では積みやすい小石を手作業で砕いて、一か所に偏らない様に全域に均等に分布し、針山では先端が曲がった針をまっすぐな物に取り換えたり、刺さって取れなくなった亡者の救出方法のレクチャーを見張りの鬼にしているのね? なら針山なんて作らなくてもいいのに……変な所よねえ……で、釜茹で所では薪の補充や風呂桶の掃除、茹で上がってしまうギリギリの温度設定の指導。

血の池ではあまりにも古い血液は血栓になって固まってしまうので網で掬って新しい新鮮な血液を入れたり、焦熱地獄ではボイラーのチェックや、焼き過ぎて黒焦げにならない様に見張りの鬼に片面を焼いたら反対側に向けるタイミングの指導等。で、八寒地獄ではフリーザーにゴミが詰まっていないかのチェックや、あまりの冷たさでへばりついて取れなくなった亡者の救出等で忙しいみたい……それに様々な行動で戦力上昇するけどそのギミックや100万到達した王者の亡者への人間界への転送もやっているの? 他にも守護毎に拾ってくる道具の設定とかも一人でやってるし……店の値段設定や、階級上昇時に支払われるヘルや戦力の調整も全部一人でやっているのね? これって何だ? あ、あ、ああああああああああ! 閻魔ってゲ、ゲームクリエイターじゃん……そうだよ地獄って結局また人間に戻るための中継地点に過ぎず、良く考えてみればそのための試練に過ぎない。故にクリア不可能にしてはいけないし、細かな調整をも一人でやってるのか……大変な仕事ねえ。見ているだけで嫌になってくる。こんな事を毎日やっているの? 次は? ……閻魔大王は、死者に裁きを下す罪を背負うため、実は当人も罰せられている? その仕打ちはなんとも辛く、熱されてドロドロに溶けた熱い銅を1日に3回も飲まされる? 嘘でしょ? 閻魔の喉や腸はもちろん大火傷。人を裁き苦しみを与えること自体が自身の罪となってしまうため、閻魔大王は苦しみに耐え抜いているのです。

閻魔大王は、自身の苦しみと、罪人を地獄へと裁く悲しみが現れていますだって? 嘘でしょ? 私なら堪えられない……もう読むのも辛いよ……この辺で止めよっと……」

本を元の位置に戻す。


「あっそうだ。魂ってどうやって出来るのかな? この本は?」


【魂の期限】


というタイトルの本を取る


「えっと? 魂は生前に行った行為の善悪の多い方により、天国か地獄に分類される?。へえ。じゃあいい事9万1回、悪い事9万回でも天国って事? 天国に行った魂は人間に生まれ変わることが確定していて、地獄に落ちた魂は人間、そしてそれ以外の動物のどれかに生まれ変わる事が出来る。成程……え? 地獄に落ちた魂が1年間戦力を上げる行動を一切取らなかった場合、その魂は地獄に落ちてちょうど一年後の朝5時に


【消滅】


する? ええええ? 天国とえらい違いね……そして? これは地獄に落ちた魂のみに適応される。天国に昇った魂は、いくら時間が掛かろうとも消滅はなく、肉体が生まれ次第新しい体に移動する……か酷い話ねえ。まあ悪い事をして落ちたのに戦力上昇もせず怠けてりゃ消されても仕方ないか……転生を達成し再び天国か地獄に訪れた魂は


【周回ボーナス】


が追加される。

そして、地獄から人間に戻り、再び地獄に落ちた魂は周回報酬を獲得した状態で再開できる。あ、これって私のデータにあった周回報酬じゃない? 7回で500万ヘルかその先はなんだっけ? で? 天国の場合はその周回数が多ければ多い程良い環境の家庭に生まれる確率が上がり、蘇るまでの時間も短縮される。そして地獄では、初めて魂として落ちてきても、過去の戦力を引き継いだり、装備をいきなり出来たりと特権が追加されていく。

初めて死んだ時に行った先が天国で、次の転生で地獄に落ちてたとしても、地獄から卒業した時、カウントは2になり、次の転生で天国に行ったら周回ボーナスは3になる。ね、成程。その魂毎に周回数をカウントしてくれるのか。私の前の人は6回までは天国で私が初めて地獄に落ちちゃったって事よね? でも死の呪文で飛ばされたんだからしょうがないよね。でも、魂ってさぼったら消えちゃうんだね……なんか怖いね……でも、消し方はあるんだけど作り方って書いていないのかしら? うーん……無いわ。別の本かしら」


「他に何かあるかしら? 食べ合わせのレシピ? ああそういえば料理で戦力が上がるけどその食べ合わせが良ければ更に上昇するんだっけ? 今は読まないから置いておこう」 

パサ

キョロキョロ


「ああ目移りしちゃうわねえ……なんか疲れた……寝たばっかりなのに……え? なんか疲れた? ま、まさか……ミッションも作ってない……あの時の声、あの表情。そして、この仕事の量……そしてこの世界のシステム……ふう、まんまと騙されていたわ……虎ちゃんごめん。今は君の事は後回しよ……謎は……アレ以外……解けたあああ」

ほう、ようやくそこに辿り着いたか……


「じゃあ少し強くならなきゃいけないかもね……一時的でもいい。その場合食事がいいのよね? じゃあ……この本を借りていくわ。よし、閻魔の屋敷に戻ろう!」

ダダダダダ


「ねえ受付さん」


「はい?」 


「寝泊まり出来る所はある?」


「さっき寝たばかりでは?」


「少しだけね。出来ればガッツリ休みたいわ」


「分かりました」


ーーーーーーーーー閻魔の城 客室ーーーーーーーーーー


「はあ、よく寝た。これから沢山の亡者と魂やオニを閻魔の屋敷の前に集めて! 可能な限り!」


「何ででしょうか? まだ虎の注意喚起の情報すら放送していないんですよ?」


「大丈夫。それも解決出来る筈だから!」


「本当ですか? じゃあ信じますよ」

そう言いつつ放送室に走る


【えー、鬼さんに亡者さん、魂さん。至急閻魔様の屋敷前までお越し下さい。繰り返します……】


「お? すぐに集まって来たわねw じゃあ行くわよ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ここまでが問題編です。犯人は分かったでしょうか? 手掛かりは全て出ています。分らなければ読み返して下さい。どことは敢えて言いません。

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