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魔界動物園の仲間たち 第2の魔界動物 IMURA そして大サービス、1つの話に二匹の魔界生物! そう! 第3の魔界動物 NAGIまでもが同時襲来……!

「分かったぜ……井村は川谷と真逆で受動的な奴だ。そして色白の男だ」


「ゴミにも色々いるのね」


「聞く前からゴミ認定するの結構面白いんだがw」


「どんなゴミ?」


「www」


「聞く前から分かるよ。川谷の話聞いた後なんだもん」


「まあそうだなあ。ええと外見はなあ……ハソターハソターのハソター試験の予選で長距離走で脱落したパソコンを持っていたデブと、キノレアの兄のイノレミ、ドラゴンキューブの腎臓人間19号を足して3で割った生物にそっくりな奴だ」


「ああ、何となく分かったかも。はああ」(そういえばボケ人間コンテストでこんな問題があった記憶があるわ)


「おお?」


「こんな奴でしょ?」

ごとっ

挿絵(By みてみん)


「おお、やっぱりアリサちゃんも出来るじゃないか記憶具現! そんな感じだ。まあ実物は眼鏡を掛けていて、もう少し横に太い男だが。だが、特徴を良く捉えているよ。俺は井村大福んって呼んでたw外見は白い肌で腹の中真っ黒だからなww」 


「www」


「しかし見事だなあ。アリサちゃんも記憶具現極めたんだな」


「鈴木さんのを何回か見ている内に出来るかなあって思ってw」


「まあ考えて見れば神裔様が出来ない訳ないよな。だが気を付けてくれ」


「え?」


「それが出来るのは一度きりって事」

ほう?


「どういう事?」


「厳密にはこれをやると自分の記憶の中の物を取り出してしまう事から、頭の中からは無くなってしまうと言う事。それを大勢に見せる事は出来るが、時限で勝手に消える。で、出した本人はそれが消失すると同時に忘れちまうって事。出ている間は記憶として残っているがな。故に同じ場面は一度っきりしか具現出来ねえ」


「そうなんだ……まあ今の男は別に忘れてもいいけど……なんで?」


「知らねえ。閻魔様の決めた事だしな。まあもし生まれ変わった時、前の記憶が残っていたら面倒な事になるだろ? 亡者は暇だ。責め苦が終わったらボーっとしてるか戦力上昇する特定の行動をこなすかだ。その間に自分の記憶を具現化してはどんどん忘れてくれって腹じゃねえか? 魂はリサイクルされまた別の人間に移動する訳だが、その際に一々一人一人の記憶を消す作業が面倒だから卒業するまでに暇つぶしに具現化させて、いずれは何もかも忘れちまってもらえればって事なのかもな」


「へえ、となると魂は記憶を消してからリサイクルするんだね。新しい魂をポンポン作るのは難しい感じ?」


「そういう事になるよな。じゃあどうやって魂は作られるのか? 分かるかい?」 


「うーん、分からないわねえ」


「アリサちゃんもか……それじゃ俺がいくら考えても結論が出ねえ訳だよ。でもよ? 一度も具現化をしなければ全ての記憶を持ったまま生まれ変わる事も出来るんじゃねえか?」


「そんなひねくれ者いるかしらねえ?」


「その辺は予想だからな。でも具現化出来るとなるとついやっちまう。亡者の唯一出来る特殊な技だからなあ。みんなあちこちにブロックを出している光景を見た事ないか?」


「ああ、そういえば閻魔の町でそういうの見たかも」


「みんなそれをやっているから真似してどんどんブロックが増える」


「でも邪魔よねえ。あたり一面ブロックまみれになるよね」


「ああ、その辺は大丈夫」


「へえ?」


「ま、いずれ分かるさ。で、具現した分、閻魔様の手間も減るという事だな。だが俺は好きだったあの子は具現化したくねえ。最後の最後まで残しておきてえ。悪いけど見せられないよ。その代わり嫌いな奴の事はどんどん具現してやるからな」


「分かったよ。じゃあ試しに……ええい」

ごとっ


「ん?」


「私の名字を具現化してみたわ」


「いいのか?」


「まあ試しに本当に忘れるか実験よ。苗字なら忘れても戻った時思い出せそうだし、忘れるっていう感覚を最近知らないから思い出せない感覚を味わいたくって。私が忘れたのを確認したら、私に名字を尋ねてみてね?」(でもどうやって忘れるんだろう見当も付かないよ。鏑木って結構忘れにくい単語だと思うのよね。それを本当に忘れられるのかしら?)


「そうか。ま、覚えていたらな。で、井村の話に戻すけど、こいつは自分から攻撃はしてこないけど、人から悪口を聞くと一緒になって本当に幸せそうに笑う奴なんだ。川谷が俺がオソローイをやった事を井村に言って笑い者にしていたし、〇〇ちゃんぬぃ会いたいゆぉおって、俺のモノマネを井村に見せて一緒に笑い合っていた。この辺からもやはり内面はいい男ではないと思う」


「川谷も相変わらずクズね」


「仕方ねえよ。それしか出来ねえんだから。川谷が逆に陰で悪口ならぬ良い口を言い出したらどうなる?」


「え? 何?」


「鈴木はバイトなのにしっかり仕事してくれて助かるねえウフフ……鈴木は自分の好きな人にちゃんと気持ちを伝えられる勇気があるよねえアハハとか」


「キモイ……あり得ないわね……絶対に出来ないし、やらないでほしい」


「人には得手不得手がある。そして奴は悪口が得手であり、それを言わなければ死んでしまう男だ。そんな物は放っておく。で、井村は俺から少し話しかけたら簡単に本性を現した。ただ注意して聞いてほしいのは、俺は一切間違った事を言っていないって事だ。それをしっかりと聞いてくれ」


「分かったわ」


「俺がいつも使っている机の上に切りくずが乗っていたんだ。それに気付かずに手を机の上についた瞬間、その切りくずを深々と刺してしまった。こんな机な。うおおおおお」

ごとっ

挿絵(By みてみん)

「親指の腹にぐっさり刺さってよ。水仕事してて手がふやけている時に刺さったからなw」


「うわあ痛そう……」


「原因は俺の机に、井村が切りくずが碌に払われていない状態の品物を乗せていて、その品物から転がって、運悪く手に刺さったって事だ」


「確かなの?」


「そりゃそうさ。普通、机の上は切りくずなんて乗らない。休み時間にその机で勉強してるんだからな。切りくずがあれば一発で気付く。そいつがこれから加工する時に、俺の机の上が自分の使っている機械と距離的にも丁度良かったのか、加工前の品物を並べて置いたんだ。そこから切りくずが転がったのは明白。だから親指を怪我してしまって、また気付かず怪我してしまうのは嫌だからそいつに、机の上には乗せないで井村の使っている機械の傍にベニヤを引いたからその上に並べてくれないか? と、低姿勢で頼んだ。一応社員だからな。こんな感じだうおお」

具現を行う。

挿絵(By みてみん)


「これ、技術泥棒の時に出て来た品物だよね?」


「そうだぜ! 気付いちまうかやっぱり」


「ええ、縦になってるけど。すぐに分かった。で?」


『机が散らかっているから刺さったんだろ? ちゃんと掃除したの?』


と聞いてきた。なので、


『いや、しっかり掃除してるよ。その品物から落ちた切りくずで刺さったんだよ。ほら、結構深い傷だろ?』


って言いながら親指を見せた。そしたら


『怪我をした話はどうでもいい。しっかり掃除すればいいだろ?』


と言って来た」


「なんか冷たい感じ……」


「ああ、ベースが


【僕は神に選ばれし高貴な存在】


と勘違いしている男なので、バイトの俺の言う事なんかこれっぽっちも聞いてくれねえ。

で、切りくずを碌に払わず机の上に置いたと言う事実を謝るのは嫌だから掃除していないのがいけないという事にした。仮に俺が机の上を余り丁寧に片付けていないとしても、鉄の切り屑が出てくる訳ねえのにな。どこからともなく湧いて出て来る物なのか?」


「そんな事ないよね」


「で、何を考えたか奴は机の上にあった俺の筆記用具とか色々な物を俺の用意したベニヤの上に置き、更に沢山品物を置ける様に机の上を片付けスペースを広げてから品物を並べたんだ。何せ50台もあったからな。こんな感じだ」

挿絵(By みてみん)


「頑固ね。思想もキモイ」


「で、奴の機械の傍には謎のベニヤが引いてあり、何故か俺の筆記用具やらが意味不明に置いてある状況で淡々と仕事を始めたんだ。こんな風に……おりゃあ」

挿絵(By みてみん)


「不自然ね。机の上に乗せるだけでいいのに」


「だよな? おかしいよな?」 


「うん、まるで鈴木さんに反発の意思を見せている感じ……まさか?」


「ん?」


「さっきバイト以外が集まる催しをカスが開催するって言ってたよね? それを鈴木さんは参加していないからいつしか見下す様になったって事なのかもしれないわ。そんな下賤な男が意見するなって事よ! 横柄ねえ……」


「そういう事か……確かにそれだな。で、俺もその光景に違和感を覚え、


『井村君? そんな所にゴミが置いてあるのを社長に見られたら怒られるんじゃないか?』


って、言ってみた。それに対しては無視。で、


『おい、井村君? そのごみは何だい? 必要なのかい?』


と4~5回オーバーアクションでベニヤに向かって指をさし、社長の物マネをしたんだ。そしたら」


『頭おかしいの?』 


と聞いてきたこんな感じだうおおおおおお」

ごとっ

挿絵(By みてみん)

「これが井村か……おかしいのはこいつじゃん。って事は頭がおかしい奴に頭おかしいって言われた事になるけど、その認識で合ってるよね?」


「そうだよ? ゴミ (筆記用具や手袋)を無造作に機械の傍に引かれたベニヤの上に置いてある不自然な状況。これをISOを取得している企業の従業員がそのままにして置くなんて絶対にやってはいけない事。5Sって言うのがあってな。それを常に守らにゃならんのよ。当然井村も知っている話だ。なのにすっかり抜け落ちちまってたんだろうなあ。突然俺が突っかかって来たからかどうかは分からんが」


「5S? どんなの?」


「確か……整理、整頓、清掃、清潔、躾。そうSEIRI SEITON SEISOU SEIKETU SITUKEのSで始まる五つの単語だ。

これを守らなきゃいけない」


「整頓と整理の違いは? 私は同じ意味にしか思えないよ」


「ああ、これはな、違いがあるんだよ。整頓は要る物と要らない物の分別だ。長い事使ってないのにずっと引き出しの中に入って居る様な工具を取捨選択する事。

で、整理は整頓で生き残った使える工具等を綺麗に並べ、分かりやすい所に、誰が見ても分かる所に置いておくという考えだ」


「成程……でもこの会社は15Sじゃない?」

ぬ?


「え?」


「さっきの5個と、搾取。SAKUSYU 差別。SABETU 殺人。SATUJIN 証拠隠滅。SYOUKOINNMETU 騒音。SOUON 最低。SAITEI 錯乱。SAKURANN 殺伐。SATUBATU 三流。SANNRYU 寒い。SAMUI」


「な、なんて子だ……その15個を常に意識して行っている会社? 確かに搾取はしっかり従業員の給料減らして自分の手元に。差別は嫌いな奴は隠れて差別しましょう。殺人、人を殺してもバレなければいいんだよ。ってか? 全部考えただけで寒気がするぜ……まあ実際は5個だけど、それに背き、周りが汚い状況で仕事を平然と行った訳だ」


「確かに機械の上にこんなゴミを置いたらいざ使おうとした時邪魔よね?」


「そうだ。だからこのままじゃ社長が見たら確実に怒ってくると思ったから人生の先輩として優しく助言してやっただけなのにな……ただいつも大人しい俺がそんなオーバーアクションをしたもんだから内心動揺して、そう言うしかなかったんだと思う」


「で、結局どうなったの?」


「頭おかしいの? の質問に大きく笑顔で頷いたら、暫く考えた後、


『お前やっとけ』


と美しい声で言って去っていったうおおおおお!」 

挿絵(By みてみん)

「無責任なゴミね……って……美しい声ってww」


「ああ、男とは思えない美しさだ。始め聞いた瞬間はその声に聞き惚れてしまう程に美しかった。本来、


『おい、そんな言い方ダメだろう』


って説教する場面だったのに、笑ってしまって出来なかった……これは俺のミスだわ……まさかあんな美しい声で酷い事を言うなんて夢にも思わなかったからなあ……結局機械の傍のベニヤに乗った筆記用具等は俺が片付け、奴の受け持っていた仕事を引き継ぐ羽目になった。面倒臭かったぜ。俺の方が一応年上でアルバイトでも社員のあいつは俺を呼ぶ時鈴木さんと言ってくれていたんだがなあ。突然のお前呼ばわりはびっくりしたぜ。そんな事程度でこんなに過剰反応する方がおかしいんだよ。これも内心バイトの癖にと見くびっているという事が良く分かる出来事だ。川谷もそうだがちょっとした意見を言うだけで過剰反応し過ぎなんだよ。奴らは……」


「鈴木さんの突然の変化に対応出来ず、頭に血が上って結果的に笑い話になっちゃったんだね」


「確かにな。頭おかしいの? も、お前やっとけ。も、冷静な時では言える筈ない言葉だからな。なあ」


「え?」


「普通さ、自分がやっている仕事を人に任せようと思った時、どうお願いする?」


「そ、それは、今忙しくなっちゃって、ちょっとこの仕事お願いできる? かしら?」


「そうだよな。それが普通だ」


「そうよ……お前やっとけは無いわ……」


「バイトだからって見下し過ぎだわ」


「辛いよね」


「で、50台口の品物で9台だけやって、残り41台を俺に押し付けたんだ。仕方ねえからサクッと終わらせた。因みに奴は9台終わらせるのに3時間半。で、残りの41台を俺は9時間ジャストで終わらせたぜ?」


「早!! 社員より優秀じゃん」


「当たり前だろ? 力は結構自信あるからね。あの仕事は力が強ければ早く終わらせる事が出来る仕事だ。結局井村は、他人が怪我をしてもそんな事なんかどうでも良いと言う心が汚い人間という事を自ら告白し、仕事場を汚くし、更には自分に任された仕事を途中で放り出すクズとなった訳だな。そして、頭がおかしい奴と認識している人間に自分の大事な仕事を押し付け、その頭のおかしい奴の方が遥かに仕事が早かったと言う事実を見せつけられたという事になった」


「悔しかっただろうね」


「ああ。その41台の品物を入れていた網パレットの中に、図面を敢えて時間を書いた部分を上にして置いてたんだが、いつの間にかその面を下にしてあったw」


「そうか……自分と鈴木さんの力量をまざまざと見せつけられたその時間部分を表にしておけば、誰かに見られた時に笑われちゃうもんねw社員の癖に情けない……。力仕事得意なんだ。どれだけ強かったの?」


「ああ40キロまでなら片手で持って移動出来たな」


「私の二倍の重さを片手で?」


「そうだ、奴らは社員だから一応技術力はある。だが、遠くからバイトだという事でこそこそ悪口を言う様な卑怯な生物って事には変わりない。力は無いからな。奴らが見ている時に敢えて普段両手で持っている物も片手で持って移動して、こいつには力では勝てないと言うのを言葉無しで教えていたぜwバイトの癖に生意気だという感情から、あいつだけは絶対に怒らせてはいけない。と、言う気持ちを引き出していたぜ。で、井村が俺が片手で持てる30キロ位の物を両手で持とうとしていた時に、聞こえるか聞こえないか位の声で


『それー重くないし、普通片手で持つ物だよw』


って意地悪なアドバイスしたら、聞こえていたらしく、片手で持とうと挑戦したが、一瞬で無理と判断し、両手に変更してたわw」


「すごい」


「これは正に後日談なんだが、翌日にはもう呼び方が鈴木さんに戻っていた。一度お前と言ってしまった手前、どうするのかなって思っていたんだが、意外とあっさりと呼び方を戻していたな」


「分かるよ。ずっと第二形態でいると疲れちゃう」


「え? 第二形態?」


「あの


『お前やっとけ』


って言っていた瞬間の井村は、鈴木さんに茶化されて怒りに打ち震え出てきた怒りの井村。言わば一時的井村って事ね」


「一時的井村w」


「その状態は大魔王が第二形態で戦う様な物。普段とは違う莫大なエネルギーを消耗するのよ! それをキープするのは体力的にも精神的にも辛いと思うのよ」


「成程なあ。一晩寝て起きても、まだその事を引きずって、怒り狂うなんて方が無理だからなあwずっと維持は出来ねえなw会社内では大人しい青年で通っていたからなあ。なのに皆がいる時に俺にお前呼ばわりしてしまったら、あれ? この人二面性あるんじゃない? ってなる訳か」

人は第二形態に変わる事は出来るが、それを維持するのは難しいという事なのかもしれないな。


「そうそう」


「実験しとくんだったなあ……後悔だわ」


「え? どんな実験?」


「木林製作所はトイレ掃除を従業員で順番にやっているんだ。偶然奴は俺の一つ前なので、終わったら


『お願いします』


って次の俺に当番のカードを渡してくるんだ」


「うん」


「そのタイミングで、例えば大勢いる所で待っていてカードを渡す時に、


『鈴木さんお願いします』


って渡してくるだろ? そこで


『あれ? 【今日】はお前やっとけじゃないの?』


ってみんなに聞こえる様に言って、動揺する様を楽しめたかなって思ってな。生前に思いつけなかったぜ。悔しいなあ」


「確かにw大人しいで通っている奴が皆の前でそれは言えないわw」


「そう、先を見据えりゃ絶対に言うべきない内容を。一時の感情の乱れで引き起こし、大後悔していたって事だろうな。

後これはジャブ程度だが、奴が残業していて帰る俺と目が合ったら


『ねえ? もう帰るの?ww』


と言う様な顔でずっと帰る俺を見ていた事か。一応目を逸らすかどうかガン見していたけど、一切逸らさなかった。ここから推察するに残業する事が偉いと勘違いしているアホという事だな。俺は残業はあまりしなかった。家で色々考える時間が欲しかったからな」


「大人しい男を演じている割には、すぐ本性現すゴミなのね。ねえ」


「ん?」


「当番表の名木って奴、こっちは見切れてるけど、こっちにははっきり見えるね」

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

ブロックを見比べて名木と言う部分を指し鈴木に見せる。


「げえええ!」


「え?」


「目を付けちまったか……」


「どんな奴なの?」


「一言で言うなら〇モだ」


「へえ?」


「こいつは社長の思惑と別ベクトルで攻撃してくる単独犯だ。思い出したくもねえレベルのな」


「良く分からないけど聞きたい!」


「嫌だなあ……」


「辛いだろけど吐き出した方が楽になる事もあるから」


「何も分からねえで言っているだろうが、聞いた後後悔するからな、絶対に」


「しないよ」


「分かったよ。話してやるよ。で、世の中には知らないでいい話もある。それを今分からせて見せるぜ」


「わくわくw」


「こいつはな、通り掛かる度に進行方向を無視し、顔を向けてくる」


「うん」


「どんなに遮蔽物で遮られていたとしても、俺にターゲッティングしつつ移動する。その精度は米国の自動追尾機能の付いた最新兵器のミサイルよりも正確だ」


「それが何か?」


「で、よそ見しすぎてカーブでいつも機械に体をぶつけるレベル。そこまでして俺を優先して見てくる」


「何か嫌がらせをする訳ではないんだ」


「存在自体が嫌がらせだ」


「ええ?」


「遮蔽物の無い所で意図的に遮蔽物を作成すると、何にも用がないのに俺の顔を見る為


【だけ】


に無駄な移動までして遮蔽物の無い所に移動してチラッと見てくる」


「で?」


「何も言わない」


「へえ?」


「で、俺が何か用なのか? と目を合わせると、まるで恋する乙女の様な顔で目を逸らし逃げていく。50歳の男がだ」


「50か、結構きついね……因みに鈴木さんは当時いくつだったの?」


「35だ」


「そんな若さで死んじゃったんだ」


「まあな。で、それが千回続いた」


「えええ?」


「そこまで魅力的な顔でもないのにな。ずっと見れば仲良くなれると思っている。まあ内藤程ではないけどよ。でも名木のは顔とかじゃない。雰囲気が気持ち悪いんだ。言葉では上手く説明出来んが……そんな異形の者がずっと見てくる。奴は社員、で俺はバイト。で、バイトという差別をせず、只管見てくる。相手が社員だから、それに内藤みたいにそれ以外は素行に落ち度がないし別部署の人間だから、こっちもそこまで強く出られない」


「あれ? 何か寒気が……」


「それが普通の反応だ」


「内藤みたいに見るのを止めて欲しくて睨む事も出来ない。見られ放題だ」


「うう」


「そして、トイレに入っていたのを見ていて、俺が出た直後に出待ちしていてすぐに入っていった。普通前の人が入ったのを見たら、臭いが残っているのが嫌だから少し間を置かないか?」


「確かに、まさか……」


「即だ……寒気がした」


「げええええ」


「後、あり得ない速さで俺の自転車の前で待ち伏せし、帰りの挨拶をしてきた」


「え?」


「いつもは居ないんだ。でも、奴の働いている場所から20m離れた会社の入り口の脇に設置されている自販機の前に、俺がタイムカードを押してその自販機の傍の自転車置き場に行くまでに、奴が待ち構えていたんだ。その時間が大体1分で終わる行動だが、名木が居る新しい工場から自販機までだと相当離れていて猛ダッシュしないと間に合わない。俺も早く帰るからな。だがそれよりも早く移動して待ち伏せしてまで俺と挨拶しようとしたんだ」


「ぐ、偶然だよ」


「そうあってくれればどれ程良かった事か……で、その時奴は携帯を見ながらそのついでで何気なく挨拶しているんだぞと言う空気を出していたが、肩で息をしながらの操作だった。50の男が猛ダッシュしたからな。普段使わない筋肉を酷使してフラフラだったしな。そう、歩いていては間に合わない距離を老体に鞭打ってまで走り、早く帰る俺よりも早く自販機に辿り着き、ジュースを買った後、俺の来るタイミングに合わせて出て来たんだ。普段いないあいつが自販機の陰から出てきた時、背筋が凍り付いたわ。絶対にそんな早く奴がいる訳ないと分かっていた。だから奴は本気を出せばこんな事も出来るんだぞ! 毎日帰りは俺と会えるんだよ? と脅された気がした」


「怖え……」


「まるでオカルト番組で見る恐怖体験を実際にした感じだった」


「ストーカーじゃん」


「その翌日から3連休だったんだが、奴の気持ち悪さが脳裏に浮かび休めなかった」


「男にはモテちゃうのね……因みにどんな顔?」


「ああ……具現だけは勘弁してくれ。思い出したくもない」


「ご、ごめん」


「で、その挨拶は一回きりだったが、恐ろしくてその挨拶には返す事が出来なかった。その後、足を引きずって歩いていたが、筋肉痛が苦しすぎて何度も出来ないと悟り終わりにしたのかも? そこまでは分からん。だが、一週間で治っていた……ずっと壊れてくれれば嬉しかったが……で、それが終わると結局見てくるんだよ」


「もう気が無いと分かっても、見る事までは諦められないんだね」


「どんなに拒否しても奴の中では最低が


【見る】


なんだ。俺がクビになるまでずっと続いたからな」


「どういう脳みそしてんのよ……」


「戦ってんのかもな」


「自分と?」


「恐らくな。何度見ても無視される。悔しい次こそは! ってか? 不毛すぎる……」


「50の人間のする事じゃないね。何の為に生きてんだよ」


「普段は普通に真面目に仕事してんだぜ? なのに、俺の近く通り掛かる度、あり得ない角度でこっちに向いてくるんだよ。と言う事は? 普段仕事しているのはプログラム通りだ。機械をしっかり見ている。仕事だしな。

起動終了でランプが付くと、完成品を取り出し、未加工の材料をを入れて起動を押す。それで回っている間に別の機械に移動する。その最中、移動モードになると、勝手によそ見をしていいモードに切り替わり、その際、俺の傍を通る事になる訳だが、その時に限りこっちを見てもいいと判断してくれる。必ず。こんなの挟む必要性は無い。これはどう考えてもプログラム以外の挙動。所謂バグだ。本気で仕事してる途中で突然だ。突然バグるんだぜ? 本気で吐き気がする。そんな奴クビにしてくれと思ったわ」


「うえー寒気が……これ鈴木さんの手紙にあった老年性若見症かも?」 


「本能的に見てしまうって事か。って事は50からもう発症するのかその病気……おぞましい……で、奴には手を出せないから、せめてと思いニックネームを付ける事にした」


「どんな? ジロジロ君とか?」


「年老いたゴキブリゾンビのゲロ。略して


【年ゴゾゲ】


だ」

ぬ!?


「え?」


「この言葉に奴の全てが詰まっている。考えてくれ。どういう経緯でこういう名前で落ち着いたかを」


「ニックネームってその人の事をよく表す物でしょ? 人でも生物でもないよ?」


「そう、それでも、こう、なった。まあ始めに付けたニックネームは


【綺羅輪檸檬君】


だった」


「きらわ、れもん?……あ、嫌われ者って事か」


「それが100回くらい見られてから


【万物に拒絶されし者】


に変更した」


「レベルアップしたって事か」


「そして万物に拒絶される者って具体的には何かな? って考えて見た。ゴキブリってのはパッと浮かんだが、それ食べる爬虫類とか虫もいる。だから万物には嫌われていないな? だがそのフンだったら? と調べてみたら、ゴキブリは仲間のフンも食べちまうらしいんだ」


「オエー」


「ご、ごめん。で、じゃあそのゲロだったら? と考えた。あいつらが食って消化出来ずに戻した物って言ったら絶対に万物に嫌われる者なんじゃないかと考えた」


「もう、女の子になんて話してんのよ……オエー」


「だよな……こんなの心の中で留めて置くべき内容だよ……俺も気持ち悪くなってき……オエー」


「www」


「そして見られた回数が500を超えてから更に追加で年老いたを追加した。そう、年老いたゴキブリのゲロにまでそのニックネームは進化を果たした」


「果たさないでwってさっきゴキブリのゲロも空耳じゃなかったじゃん!」


「うっかり出ちまったがそこを掘り下げて欲しくは無くてなあ。俺はそれを思う事で奴らを殺さないで済んでいたんだからよ」


「え?」


「そんな低俗な存在だからゲロと心で思う事で怒りを抑えていた。もしそれを思い付けなければ怒りに任せて殺していた。力は奴らより遥か上だしな。ゲロで奴らを助けていたんだ」


「ゲロって偉大なのね」

それは違うよ!


「それにまだ幼い女の子だしさそんなの聞きたくないだろ?」


「その点は大丈夫。慣れてるから」


「初見でアリサちゃんがゲロに慣れているなんて誰も思わねえだろ? それに敢えて聞く内容でもねえ」


「でも肛門とか言ってたよ? 女の子の私に」


「ああ、内藤をそういう例えしか出来なかったからなあ。すまん」


「下ネタ好きよね。う〇こと肛門とか、それにゲロとかも」


「でもよ、内藤や名木の話をしなければされてない話だし……神裔Ⅳの階級を指しながら教えてくれって言ったからな。脅迫だよあれは……まあ俺の語彙力が無いお陰でそう例えるしかなかったんだよ」


「語彙力が無い? 謙遜し過ぎ。沢山学びがあったわ。そういえば左利きの先輩で師匠だし、発想力が尋常じゃなかったよ?」


「そうか、で、流石にこれは絶対に誰も好きになれんと言う自信があった。で、更に思い出した」


「え?」


「奴は一度癌で半年入院し、戻ってきたんだが、元気になって、真冬でも半袖になるまで回復した。すげえ生命力だよ。で、何故かそれから俺を執拗に見る様になってきたんだ。で、癌から復帰したという事実から最後のワード、


【ゾンビ】


が追加され、年老いたゴキブリゾンビのゲロと言うニックネームで落ち着いたんだ」


「そんな名で落ち着くなwでも癌から戻ってきた人が3人もいるの?」


「そうなんだ。カムバッ君、ガンゴルフおじさん。年ゴゾゲの3人だ」


「奇跡じゃん」


「前の二人はもう辞めている。だが、名木だけは残った」


「ああ……」


「その残り物はどんなに嫌そうな顔をしても冷徹に見続ける。人の心が無い。故にゲロだ」

鈴木よ、もう止めてくれ……もう読者の腹の中は吐きすぎで空っぽであるぞ……


「何でw他にも色々あるよw」


「そうかい? それとな、俺が小学生の頃、馬渕くんってのが居てな? そいつ、学校に黙って漫画を持ってきて友達には見せるが、俺にだけは見せてくれない嫌な奴なんだが、ある日、給食で焼きそばをお代わりしまくっていたんだ」


「うん」


「そしたらその焼きそばを食べてる途中で吐き出した」


「げえ」


「小太りで、いかにも食べる事が得意な男の子が、箸で勢いよく焼きそばをかきこんで口に入れている最中に、最愛の焼きそばを吐き出したんだ、俺の目の前で。地獄だった……そして嫌な奴が吐き出した思いから、それが深く印象に残っていてゲロと言う言葉を潜在意識まで刷り込まれた。せやから嫌な奴=ゲロが定着したのかもしれんでえ」


「せやな、分かるでえ……」

なんで関西弁やねん。


「ああこれから話す石井を思い出してしもたんや」

そうなんか……っておい! わての問いにだけは反応してはあかんで!


「どしたん? 石井がなんやて?」


「ああ、こっちの話や」


「そうなん? うちもゴキブリが右ポケットに入ってから更に嫌いになったやでえ」


「だよな? そして奴が来たら


『逃げろ』


と、自分に言い聞かせる意味でもゲロと言うワードは絶対に外せない」


「ああーそうかあ……って、それでも何か違う気がするよ!」


「そんな奴に千回も見られた末にこう結論が出た。アリサちゃんは分からないかもしれないが、人は嫌いな奴に千回見られると、人間にすらこういうあだ名にしても問題ないと本心から思えてしまうんだ。だから、それに、従った。それだけ。だから


【名木=年老いたゴキブリゾンビのゲロ】


なんだ。これは、俺の中では、絶対。だ」


「うんわかった」

分かっちゃダメだよー


「因みに使用例は、


『あーあ、また年ゴゾゲが見てるよ……死んでくれねえかなあ、たった一回でいいからさあ』


と言った感じで使って下さい」


「使わないよwwでも私ね? 悪口に関してはそれの一つの学問として猛勉強したんだよ? でも、年老いたゴキブリゾンビのゲロだけは思い付けなかったわ。すごいセンスよ。私もまだまだだなって思ったわ」

何の話をしているのだ……


「そうか? でも4つとも存在する言葉だぜ? それを組み合わせただけだ」


「それでもその組み合わせは無理だったwどれも深く考えたくない言葉だしw」


「そうか? じゃあ使ってくれてもいいんだぜ? アリサちゃんにここまで褒められた大切な言葉だ。ここで消滅するには惜しい」


「言い方ww」


「是非、冥土の土産として受け取ってくれ。そして、全世界に広めてくれ」


「逆だし広めたくないよww」


「ああ、そうか。じゃあこれから上界に行く魂に送る場合は、何の土産なんだろうなあ」


「上界の土産でいいよ」


「そうだな。でもな? 俺は地獄ではこの言葉を使う事は無いと思う。確かに鬼も嫌な奴は多いけど、名木程じゃねえ」 


「ありがとう。最低の人間に使ってみるわ」

そんな事を平気で言ったら小説の評価がガタ落ちだよ? やめよ? ね?


「おう!」 


「そうか、50の名木に見られまくった事から内藤の手紙に老人は若者を見るって……老年性若見症だっけ?」


「そうだな」


「それを名木から感じ取ったって事なのね?」


「そうなるな。でも知らなくてもいい事象だったな。全く無駄な知識だ。でも、人生ってのは上手くいかねえもんよ。好きな子には拒絶され、嫌いな老人には好かれてよ……どんなに見るなって願っても駄目だし、どんなに呼吸止めてくれないかなってお願いしても止めてくれないし、どんなに地面の中で生き埋めされないかなってお願いしてもなってくれないし、どんなに死んでくれないかなってお願いしても死んでくれねえ。たった一回でもいいのによ」


「お願いの75%が名木君死んで! だよww」


「それでいいんだ」


「wwでも……誰かに相談はしたの?」


「していない」


「どうして?」


「どうして? 本当にどうしてと思うのか? よく考えて見てくれ。アリサちゃんなら分かる筈だぜ?」


「……相談したら……あの社長の事だ。鈴木さんが嫌がる事を勧めて来る筈……という事は……」


「奴が俺に好意がある事は公にはならなかったけど、もし悩みに書いて社長に気付かれたら二人をくっつけようと努力しただろうな。そう、奴らの無償の努力の結果、名木と俺は晴れて恋人関係になるだろう。皆に祝福されな」


「げえええ」


「みんなこう言うぜ……


『よっ、お二人さんお似合いだぜw』


『幸せになれよーw』


『年の差夫婦だけど大丈夫だってww』


ってな。そんな事ないかもって否定出来るか?」


「そうなる未来しか見えないよ……今までの点と点を結べば誰でも分かる……相談なんて絶対に出来ないよね……寄って集っていじめて来た奴しかいないんだし……」


「ああ、周りは敵しかいない。もし弱みを見せたら最後だ。これから話す奴らは特に。誰かに相談なんかしたらそこから世界中に広がる。あの子と付き合おうとした事に対しては全力で妨害してきてくれたのによ。だからくっつきたくない奴は積極的にくっつけようとするだろうな。勿論


『饅頭怖い』


は、通用しない」


「え?」


「好きな女の子に付きまとわれて困っているという嘘の相談をしても、勿論その子とくっつけようとはしないだろう」


「そういう事か一応知能はあるんだね」


「残念な事に本当に馬鹿なのにそういう事を考える事はとっても得意だ。本当に嫌いな奴と分かっているからくっつけようとする。で、社長と組んだら間違いなく最悪のコンビになっただろう」


「そうだった。誰も助けてくれないんだもんね。もどかしいよね……」


「奴らに気付かれなかったのが唯一の救い……ってよ……何が救いだ……これでも普通に仕事する事すらも出来ねえんだ。いつあいつが見て来るか分からん恐怖が付きまとっている事には変わらねえんだからよ……マジで癌でそのまま逝ってくれれば良かったのにって、名木を治した医者を本気で恨んだぜ。で、俺は何て酷い事を考えちまったんだって自己嫌悪だ。でも、それくらい良くねえか? 延々と嫌がらせをして来た奴の死を望む事って本当に悪い事なのか? 自分の精神がおかしくなる前に何とかしなきゃって思うのは正当防衛じゃないのか?」 


「私も嫌いな奴にはそう思っちゃう。もちろん罪悪感も感じないよ?」


「そうだよな。それでいいよな? だから年ゴゾゲもいいんだよな?」 


「そうだね。仕方ないと思う」


「だがそれも気休め。奴が社員と言う下らない理由で文句も言えず耐える他なかった。本当に辛かった。徐々に精神がすり減っている実感があったぜ……内藤のう〇こアタックで肉体的にも弱っていたが、精神的には名木が一躍買っていたのは間違いない。内藤と名木のダブルアタックで俺はクビになったんだ」


「最低」


「もし限界で本当に困っているんです。と、涙ながらに社長に相談する。すると検討しますと言った後、一瞬で名木と同じ部署に飛ばされるだろう。確実に。

そして川谷に相談したら満面の笑みで会社中に言いふらすだろう、他のどいつに相談しても助かる未来は無い」


「恐ろしすぎる……一度でも怪我をしたらもう止血方法がない状況と同じじゃない……じゃあ奴と直接話して止めてとは言わなかったの?」


「冷静に考えてそれをやったら更に強く見てくると感じたので耐える選択をした。そして絶対に誰にもバレないよう努めた。他人を変える事は出来ないから見られない様に努める事に専念した。別に奴から会話してくる事は無かったからな。でも仕事中に精神を削ってくる最悪の男だったな」


「名木の存在を完全に隠して具現するべきだったね。ちょっと見えちゃったせいで食い付いちゃった」


「どうだ? 聞いた後の感想は。良かったか? 後悔したか?」


「後悔した。聞く内容じゃなかった。気持ち悪すぎる」


「よっしゃ! 勝ったぜ!!」


「そ、そういうゲームじゃないから!」


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アリサも記憶具現をしてしまいました。

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