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これまでのあらまし

 起きたらキーやんが帰ってなかった。

 ので、ベッドの上に寝転がって、目を開けたそのままの姿勢で、ちょっとこれまでの経緯とやらなければならないことをまとめようと思う。

 あと、キーやんと要相談の事由な。

 けして、先延ばしとかじゃない。要相談だから相談が必要なんだ。いいな?


 六回目の異世界転生でバフ増し増しな俺が召喚されたのは、ボルデ王国の事情がどうやら絡んでいるらしい。

 らしいっていうのは、王様直々に俺に話すことはできない事情があるらしく、直接的な話を一切聞けてないからだ。

 「危機はない」という王様の言葉を間に受けた俺は、スローライフを送るべく、近隣情勢や観光地の情報収集に勤しんだ。

 だから、ボルデ王国の国内騒動っぽいこの事案の情報はゼロに近い。


 唯一の情報は、王城土産にくれた頭に巻くターバンみたいなのの内側に書かれた文章。

「艦隊は湖の底

 彼らは死なぬ

 魔物に操られ

 我ら王を狙う」

 という、簡潔な文章だ。

 これ、あれだよな。「あれ? なんの情報も渡せてなくね?」って慌てた上層軍人が慌てて用意した感じの。

 しかも、俺、服とか一切断ったから、そこに手紙形式のヒントが忍ばせてあった可能性もあり、早速ハードモード。

 王国を救わなきゃならないなしいぜ、ってのが、まず予定その1。


 秒で一人にめげた俺は、早速同伴者を呼び出した。

 かつて、アクションバトル系の世界で敵同士として戦い、俺がチートスキル「ふくろ」に封印したスライムだ。

 このスライム、内政にバトルに魔法にとなんでもできる存在チートで、相談役としても頼りになるし、戦闘にしても頼りになるし、性格に難はあるものの頼れる存在だ。

 キーやんことキングと名乗ることになったスライムだが、早速「どっちがテイムされてるんだっけ?」と言われるくらい頼りきりだ。


 異世界で生計を立てるために、俺が選んだのは冒険者と行商人の掛け持ち。

 冒険者として生活費と元手を稼いで、行商人として安定して資金を増やす目論見だ。

 戦いのブランクがある俺は、支援の手厚そうな冒険者ギルドを求めて、王都からブルエモンという田舎町へ移動した。

 まー、個性的な面々に戸惑いつつも、なんとかうまく溶け込みたいところ。

 俺よりも、キーやんの方が早く馴染むかもしれねー不思議。


 さて、バトルアクション系世界の名残で、俺とキーやんはお互いのユニークスキルをざっくり共有している。

 とはいえ、スライムと人間の感覚ってだいぶん違うんだよな。魔法を足がかりに人間ともある程度、感覚を共有できるキーやんと違って、俺は「元から魔力がない人間」である日本人。

 現状はキーやんが一方的に俺が使える諸々を享受している状態だ。

 だって、俺はスキルと魔法がどう違うのかもわからねーもんなー。


 さて、そんなスキルの中で使えそうなのが、やはり魔法で作った空間になんでもためれて時間が止まるという便利かつ王道の「ふくろ」だろう。

 早速、ブルエモンの冒険者ギルドから、大量発生した魔物の遺体回収をしてほしいとお願いされた。

 空エビと言って、空を飛ぶエビらしい。そこそこ高級食材として流通もしているようで、棚ぼたになりそう。

 討伐にも参加することになっていて、これが予定その2。


 そして、キーやんの瞬間移動がもちろん注目を浴びてしまった。

 瞬間移動というよりも空間転移っていう方が、相応しいらしい。俺らも意識して修正しないといけないよな。

 言葉って通じないと意味ないし。

 そこで、ブルエモンの有力冒険者の送迎をお願いされてしまった。なし崩しに。

 「え? ちょっと毎日?」っていうのが俺らの感想で、「王国の件どうするよ?」っていうのが現状。


 さて、「ふくろ」と空間転移があれば何ができるか。

 時と場所を超えた行商人だ。

 とりあえずの拠点であるブルエモン。ここの物資需要を満たすことを目的に、俺は行商人としての活動も始めることにした。

 注文票を作って、早速、冒険者ギルド職員のソレナさんからコーヒーを買ってきてほしいという注文を承った。

 まず身内から商売を始める。妥当なところだろう。


 さらに、「特別なサービス」を提供するために、「特殊商人」としての認可を受けるよう、ブルエモン冒険者ギルドから勧められた。

 魔物の遺体回収など「ふくろ」と使ったサービス、冒険者の送迎など「空間転移」を使ったサービス。ちゃんと特殊商人として認可を得て、書面上の契約を結びたいというのだ。

 おいー、じゃぁ今、完全に俺の善意で行ってんのかよこれー。

 と、思わなくもないが、まぁそういうことだ。

 ブルエモンに商人ギルドはないから詳細もわからず、「王都の商人ギルドに行ってともかく話を聞いてきてくれ」ということになった。これが、予定その3。


 ところで、キーやんは空間転移の使い方にこだわりがある。

 一度行ったところにしか、行き先にしない。

 王都を出た後にキーやんを「ふくろ」から引っ張り出したので、王都には空間転移できないというバグが生じてしまった。

 それをなんとかするべく、睡眠を要しないキーやんには、夜間に王都への一人旅を試みてもらっている。

 キーやんの見える最長距離に出現する、という短い瞬間移動を重ねて重ねて、移動するという方法だ。これ、キーやんにひっついて短い瞬間移動を重ねられるとグロッキーになるので注意。


 予定その1とその3に大きな支障がある。

 王都に、空間転移できない。

 ブルエモンの冒険者ギルドにはそれらしいことを言って、異世界転移で生じた過去の空白を誤魔化したから、この矛盾はバレないようにしなければならない。

 しかし、予定その1こと王国の危機は早々に解決したい。

 うーん、キーやんと要相談だな。


 優先順位としてはこんな感じだ。

 予定その1「王国の危機解決」。まずは王都に行って情報収集から。ついでに予定その3「特殊商人について商人ギルドに話を聞く」を、ブルエモン冒険者ギルドへのアリバイ作りのためにもやろう。そして、ソレナさんにコーヒーを買ってくる。

 予定その2「空エビ討伐関連の冒険者の移動」。日課としてかかってきそうなので、まぁ、仕方ないが、まぁ、仕方ないか。俺も冒険者として多少依頼をこなして、冒険者ランクをあげれたらベストかな。


 王都へ行った後の情報収集は全く、なんの、アテもない。

 いっそ、艦隊が沈んでいる湖を突いてみて、とかになるかなぁ。

 なるのかなぁ。

 うーん。

 キーやんと要相談だ。

 で、あいつ、また帰ってこないんだけど、何してんの?

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