少女と錬金術師。その二
のんびり……だめだ。
眠い。
本日二話目です。
魔力制御の練習を終えた二人はアリアの執事が用意した夕食を食べながら世間話をしていた。
「相変わらずセバスさんの作る料理はおいしいですね。俺ではこんなにうまく作れませんし、久々の手料理ありがとうございます」
「そう言って頂けると、わたくしども感激でございます」
「あたしはケルトの作るデザートがとても好きよ。今日は作ってくれないの?」
ケルトは少し考えるような仕草をしたのちこう言った。
「そうですね、ボルドさんにも何かお土産として残していきましょうか」
ギルドの仕事が忙しかったのか夕食にはいないボルドにも何か残そうとケルトはそう提案した。
「以前、作られたゼリーなどはどうでしょうか?」
「材料もちょうど持ってますし、そうしましょうか」
ケルトは腰に巻いている小瓶用のポーチから透き通る蒼い液体の入った小瓶を取り出すと、それの中身を空中に放出した。
すると液体は個体へと代わりぷるんとした丸い物体がそこに出現した。
「ちょっと手伝ってくれるかい?」
ケルトはそのぷるんとした物体に話しかけるとその物体は器用に跳ねると、ケルトの頭の上に乗った。
「いつみても不思議な光景でございます」
「人畜無害とはいえ魔獣の一種ですから」
頭の上でぷるんぷるんとした物体・スライムはケルトの頭の上で跳ねていた。ケルトはスライムを抱き抱えると、それを撫でることにした。
「撫でても?」
アリアはそわそわしながらケルトに尋ねる。
「いいですよ。ちょっと冷たいの驚くかもしれませんが」
アリアはケルトからスライムを受け取るとひんやりとしたその身体を撫でる。
「気持ちいいわ。ケルト、これ枕にしてもいいかしら?」
「どうでしょう……俺は枕にしたことがないんで何とも言えませんが」
「あなたもいいわね?」
抱き抱えるスライムに尋ねるとぷるんと揺れた。たぶん肯定の意味なのだろう。
「ね、いいって」
「ケルト様、少しお借りしてもよろしいでしょうか」
「アリア嬢も気に入っているようですから、構いませんよ」
アリアにスライム扱いの注意事項を話して、そのまま厨房へと向かった。
「アリア嬢の容態はどうですか?」
「良くなっております。これも貴方様の御蔭でございます」
「魔導加熱症候群……アリア嬢もずいぶん珍しい病を持っていて当時は驚きました」
「王女殿下も同様の病だったと伺っております」
「そうです。幼年期に発症しやすい病です。生まれながら高い魔力を持っていると稀に起きるらしいんです」
ケルトがかつて治療したシェルベア王国第二王女殿下は既にこの病が発病している状態でかなり危ない状態だった。それに比べてアリアはまだ発病する前に分かったためそれほど深刻な状態にはならなかった。
魔導加熱症候群とは、生まれながら高い素養を持っている人間に発症しやすい病で、病状としては高熱、所々に魔力回路が紅く発光するような現象が起こる。魔力回路は一般的には眼で見ることが出来ず、普通の医師には治療が困難。
「それにしてもケルト様は一体どこでそのような知識を?」
「ここの皆さんが知っている通り、俺には記憶がなく、少し前に自分の記憶の断片でもと思っていろいろ歴史やいろんな書物を読んでいたことがありまして。その中の一つに古代の流行り病を記した書物があったもので」
「そういうことでございましたか」
セバスは上品な笑いまま厨房へと案内した。
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