勇者VS錬金術師。その二
「我、戦場を得たり」
ケルトの知っている魔法とは違う何かが、現象として顕現する。
「勇者の世界の力……」
肌をちりちりと焼くような、目の前の現象を危険だと身体は判断している。勇者が元いた世界には魔法とは違う何かがあることは事前に知っていたとはいえ、これはあまりにも異質。
「彼の剣は最強にして無敗なり」
勇者が選定の儀で抜いた剣とは異なる黄金の剣がその手に握られており、その剣からは嫌な気配が満ち溢れている。
「シッ!!」
風切りに近い音がケルトのそばから聞こえ、自身の肉体に展開してある魔力防壁のみで防ぐしかなく、何かの衝撃がケルトを十数メートル吹き飛ばした。
「……降霊術に近い何か、それにしても随分好戦的な勇者ですね」
「大方、理解しているつもりですよ。僕の力を見るつもりでここにいるのでしょ」
間違いではないためケルトは何も言わず、吹き飛ばれてされた時に多少崩れた訓練所の壁からボウガンを錬金術で生成する。
☆
「……ルルリア、お疲れです」
「ミヤっち。随分調子が良さそうっすね」
「まあね。で、あれが」
ルルリアとティアが少し離れたところで勇者と錬金術師の試合を見ていると異国の神官服を纏った少女がやってきた。
「そっちは?」
「ティアっていいます、巫女様」
「ミヤビでいいよ。巫女ってちょっとバイトみたいなもんだし」
巫女ミヤビが言ったバイトという言葉の意味は分からなかったが、ミヤビが気さくな人間なのだということはティアに伝わった。
「ミヤビ、勇者様のあれって?」
王族にも近い畏敬の対象である勇者を許可をもらったからとはいえすぐにそう言えるあたりティアがそれだけ素直なのだということが分かる。
「ボクのいた世界って能力者っていう人が影にいたって話だよ。ボクも京ちゃんも違ったんだけど、竜胆っていう無精髭で強面の人が京ちゃんに適性があるって言って能力を使えるようにしたみたいだよ、ボクも適性あればよかったんだけど、こればかりは運が必要みたいだからね」
ミヤビの饒舌に驚きつつも、要するに魔法とは異なる力だということは理解した。
「ありゃ、やばいっすね。身体強化であそこまでの上昇率みたことないっす」
訓練所ではちょうどケルトが吹き飛ばされたあたりだった。
心配そうに様子を見ているティアを背後から抱き着くようにミヤビが抱き着き、耳元で大丈夫とつぶやく。ちょっとだけくすぐったかったが、巫女がそういうのであれば大丈夫なのだろうと、戦いに目を向ける。
「京ちゃんの異能【永劫図書館】っていうかつてはいたであろう人や伝承にのとった力を少しの間行使できるっていうチートだね」
「チート?」
「チートだと分からないか~。うーん、反則みたいな力のことだよ。まったく主人公乙ってね」
「よくわからないけど強いってこと?だったらお兄ちゃんも大丈夫、とっても強いよ」
満面の笑みでミヤビを見るティアを目撃してしまったミヤビはお持ち帰りしたいーと叫ぶのだった。
「ところでケルトって人ダークエルフなんでしょ」
「そうっすね、ダークエルフっすよ」
「確か、ダークエルフって人間に相いれない種族って聞いてたんだけど?なんで、王都に?」
「なんでって言われると困るっすけど、簡単に言うといいダークエルフっすから」
「ふーん」
それにしても美形だな、なんてことを呟きながら目下戦闘中の二人を見た。
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