新人冒険者と錬金術師。その三
「そろそろ、彼を呼んできた方がいいだろうね。ここは不死の樹海に最も近い場所だろうし、もうすぐしたら日も暮れる」
ケルトはそういうと黒色の液体を取り出し、液体は一瞬地面を濡らしたかに見えたが、地面は乾いたままだった。
「今のは・・・・・・?」
メルは怪訝そうな表情を浮かべながら、ケルトの回答を待つ。
「あれは影。シャドーウルフっていう魔物だよ・・・・・・影の中に住むものさ。視界を広げるには便利なものさ」
ケルトは懐に手を伸ばすとそこに入ったチョークを取り出し、地面に魔方陣を描く。慣れた手つきで迷いなく描くそれはメルの詠唱よりも明らかに速い。
完成したそれは、家を覆うように光り始めた。光が収まるとそこには木製の弓がありケルトはそれを握った。
「視界が広げるって言うのは、ただ見える範囲を増やすだけじゃなく、リンクした使い魔の能力を一部・・・・・・まあ、目に関する能力が使えるようになる程度なんだけど」
そう言って、遥か上空を飛んでいる鳥に向けて弓を射る。落雷にも似た轟音とケルトを中心に突風が吹き荒れる。
メルは目に関する能力よりも目の前で起きた現象だけで、寒気を感じた。魔獣ですらない鳥を相手にこの技は明らかにオーバーキルだ。ケルトも自覚しているのか苦笑している。
メルは依頼なんかよりもすぐに弟子入りしてみたいと思った。なぜなら、メルが使う得物が弓というのが一番大きい。それ以外、親がダメだと言ったからだ。冒険者になる条件として弓を使うこと。
自分の娘に魔獣相手に一撃をもらうと下手したら即死かもしれないことを考えてそうしたのだろう。誰だって大切な人が傷ついたり、死んでしまうと考えると怖いものだ。
「弟子にしてください」
もちろん即答だ。こんな弓使いはめったいにいるもんじゃない。
「錬金術は教えられないよ」
「それはどうでもいいです!!だから弟子にしてください。お願いします」
自分は錬金術師なのだと思うのだが、と苦笑するケルト。
「それならシンリーさんに弟子入りするといいですよ。彼女は生粋の射手ですから俺なんかよりも」
後日、彼女はシンリーに弟子入りすることになるのだが、それは、また別の話。
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