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67.隣国出張のおじ様ズ

◆カサンドーラ国内にて


 クーデターが起こったカサンドーラ国内に、ヴァリオス王国のステファン陛下と宰相ヨハン・ペリステラ伯爵、そしてリカルド・パルセノス侯爵と魔犬カゲローが入国した。


「ステファン陛下!皆さま!お越し頂きありがとうございます!」


 反乱軍のリーダーは実直そうな男だった。三国会議以降、ステファンが目をつけていた男だ。

 必ずクーデターが起きると確信していたステファンは、傍観するふりをして水面下でこの男が動くよう工作していたのだった。


「いやいや…ヴァリオスとカサンドーラは隣人だ。困った時はお互い様だからね。助力は惜しまないよ」


 笑顔が噓くさい…と、リカルド侯爵が苦笑いしている。

「早速ですが、事の経緯と皇族の逃亡の件についてお聞かせ願えますか?同時に、国の今後についてのご相談も受け付けますよ」

 ヨハン宰相はすでに仕事モードでノートを開いている。皇族以外の甘い汁を吸ってきた重鎮たちは捕縛済みで牢屋に入っている。反乱軍にも貴族はいるが、国の運営に迄は携わっていない。圧倒的に知識が無いのだ。故に、ヨハン宰相の来訪は何よりの助けとなるのであった。


 クーデターが行われた日…警備兵や騎士の大部分がすでに皇族や大臣達を見限っていたので、城への突入は容易く行われたという。しかし、統率の取れていない反乱軍をあざ笑うかのように、皇帝達3人はこつ然と姿を消していた。


 必ずと言っていいほど、城には隠し通路というモノが存在する。有事の際に皇族や要人が脱出する為のものだ。

 クーデターを起こす前にチェックしたほうがいいと助言したにも関わらず、それを怠ったがゆえに3人を逃がしてしまったので、ステファンは内心怒り狂っている・・・表には出さないが・・・。



 カサンドーラ帝国の城に執務室を構え、ステファンが陣頭指揮を執っていると、

「バウバウ!」

 カゲローが外を気にして吠えている。

「何かいるのか?」

 リカルドが窓をあけると、黒いケサランパサランがフワフワと部屋に入ってきた。


『あんさんおおきに。すんませんなぁ。えっと・・・ああ!そちらの黒うて偉そうなお方!話がありますねん!聞いてくれまっか?』


 黒うて偉そうなお方=ステファン・・・である。


「・・・聞かせてもらおうか」(コメカミがピクピクしている)


 黒いケサランパサランは【闇の精霊】だった。

 精霊はカサンドーラ帝国内にある闇の精霊が多く住まう洞窟から来たといい、何か怪しい動きをする人間達がいたので、一応知らせに来たというのである。


「その人間は3人で男ふたりに女がひとり・・・だったのだな?」

『せや!女がギャーギャーやかましかったわ~』

 十中八九、あの皇族3人である。間違いない・・・。 

 

「洞窟に何をしに・・・いや、兎に角追うぞ!リカルド、カゲローと行って来てくれ!」


「りょ~かい。カゲロー【闇の洞窟】だってさ。行けるか?」

 カゲローはケサランパサランをクンクンと嗅いで・・・

「バウッ(OK)」と頷いた。




◆闇の洞窟


「ここが【闇の洞窟】か・・・ジメジメしてるな」


『闇の精霊は暗くてジメジメしたトコが好きやさかいな~・・・しかし、犬のあんさん!やりまんなぁ~あの距離が一瞬やで~ビックリしたわ!』


 カゲローは闇の精霊の匂いを嗅ぎ取って、闇精霊が一番多くたむろしている場所に影移動したのだ。

 

『おかえり~えらい早かったなぁ』

『無事で何よりや』


 あちこちからケサランパサランが大量に現れた。光の精霊と同じく見た目に個性は無いが、お喋りな性質らしくリカルド達を囲んでなかなかに賑やかである。


『にぃさん、にぃさん!せっかく来てもろうたのに、あいつらもうおらへんねん。二日前に出て行ってしもうたんよ』

 どうやら間に合わなかったようだ。

 

「そうか・・・でも、何か痕跡があるかも知れないし調べて帰ろう」

 リカルドは、洞窟の奥を目指した。

 途中、小さな魔獣と出くわしたりしたが、カゲローを見ると皆一様に『回れ右』で去って行く。


「ワウ・・・(食べたりしないのに・・・)」

 ちょっぴり寂しい【魔王補佐】であった。


 洞窟の深部まで来たが、これと言った痕跡は無く。無駄足だったか・・・とリカルドが引き返そうと後ろを振り向くと、カゲローが ”ボフンッ!”と人化して・・・

「なっ⁉」


『リカさん…ここ魔素が薄すぎる。あれだけ大量の闇の精霊の住処なのに…変だ』

 と言った。


「カゲロー・・・お前、人化出来るなら前もって教えておいてくれ!…ハッ‼もしやまた俺だけ知らされて無いヤツかっ⁉」

 リカルドは若かりし頃、カゲローの存在自体を自(・)分(・)だ(・)け(・)が知らされていなかったという過去があったりする。


『アハハ…リカさんてば~・・・話がしたくて人化したんだから、聞いてよ~』


「あ!悪い・・・魔素が・・・確かに薄いか??」

 リカルドの属性は【水・氷・風】である。そもそもこの洞窟には闇の精霊しか居なかった。他属性には闇精霊の魔素は感じ辛いのだ。


『なんか魔道具で悪さしとったで』

『せやし、知らせな~ゆうて行ったんや』


 魔道具・・・と、リカルドは考え込む。

「カゲロー!急いで帰ろう!嫌な予感がする」





[おまけ]~観光気分でした~


闇精霊α『お城見たんやろ?どうやった?』


闇精霊β『いや~立派やったけど、中におった黒うて偉そうなお人が怖かったわ~』


闇精霊γ『ほなお城でゆっくりはでけへんかってんなぁ』


闇精霊β『せやけど、道中は色々と楽しかったで!たまには洞窟出るのもアリやなぁ』


 3人を取り逃がした原因は・・・お察し・・・なのだ。





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